【レポート】姫乃、消滅@渋谷・Star lounge | ヒトデ大石のなんとなくレポート置場

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2011年8月「ヒトデ大石のどんなブログにしようか検討中。」からタイトル変更。
ライブイベント、舞台観劇のレポートを中心に書いていこうというブログ。
以前はmixiが主戦場だったけど、今はこっちが主戦場(笑)

久々にAnB以外のライブレポートでも執筆しようと思います。
(もっともここ最近、殆どAnB以外のライブも参加していない自分ですが)

今回、レポートするのぱ*☆姫乃☆*゚のワンマンライブ。
タイトルはズバリ「姫乃、消滅」

まぁサブタイトル……というか、枕詞もとても気になるものであり「地下アイドル姫乃生誕祭!!一夜限りの生と死のONE-MAN SHOW!!」とある……。
ライブが行われた翌2月12日に19歳を迎える彼女のバースデーライブでもあるのですが、「生と死」という表現を使うところに彼女なりのセンスというか、独特の表現、世界観が垣間見える。

19歳を目前に控えた彼女が一体、どのようなライブを見せてくれるのか……期待と一抹の不安にも似た心境のまま、会場に到着する……。

●開演前

自分が到着したのは開場直後の時間。
今回のライブでは開演前にも物販があるという事で早速、この日発売のアルバムを手にするのだが、そのタイトルが「姫乃、崩壊」
最近の彼女らしい、いかにも前衛的というか、破壊的衝動に駆られるようなタイトルが印象に残ったというか……。

会場に目を移すと、知っている顔、現場で見た事のある顔が半数。
残り半数は普段我々とは縁が無い方。つまり知らない方が占めていた。
恐らく゚*☆姫乃☆*゚ちゃんの私生活なり、我々とは縁の無いところで関わりがある方だったのでしょうが、今回のワンマンのためにいかに多くの方が、足を運んだかという事を感じた瞬間でした。

そんな会場ですが、自分自身初めての会場でしたが、まぁなんというか結構広いといいますか……。
入口付近にはロッカーも設置されており、普通にバンドがライブするような会場でした。
ステージが真正面にあるんですけど、上手側にはでかい壁画があって、それが妙に印象的でした。
その上手後方にはドリンクカウンター。
そして後方の一部が物販スペースとして利用されていましたが、その後にPAのブースという作り。

結構キャパはあるように感じましたが、そんな会場でも開演直前になるにつれて満員になりつつありました。
そして開演まであと15分……会場はいきなり暗くなり、誰かが登場しました……。

もしや……゚*☆姫乃☆*゚の登場!?
……そんなどよめきの中、登場したのは……。

●前説

前説として出演したFICEの登場。
炎&氷のお二方はもちろん、バックにはマット氏、コーラス・ひびぃも引き連れての万全の状態。
全員が法被(マットのみ陣羽織)姿で登場。

諸注意を読み上げて、さぁいよいよ……という訳でそんな訳で終わる訳ないFICE(笑)
なんとこの日のためだけに新曲を作ったとの事!
゚*☆姫乃☆*゚ちゃん愛されすぎ!(笑)

楽曲のタイトルは「愛鯛~メデタイ☆姫乃ver.~」(笑)
まさに楽曲全体が、この日の゚*☆姫乃☆*゚ちゃんのワンマンをお祝いする内容となっていました。
しかしこれをたった数日で作るFICEの職人っぷりには脱帽ものなのです。
前説とは思えない見事な仕事っぷりでした。

こうして前説、FICEの出番は終了。

そして間もなくして、本編開始となります。

●本編

……暗くなった会場に突然流れたVTR。

その日付は2011年10月10日に遡る。
この日、゚*☆姫乃☆*゚は翌2012年の誕生日を前にワンマンライブをする決意を語っています。

流れる数々の映像……。
その中には祖母がガンで入院する事になった事を告白するシーンなど、重い内容のものも含まれています。

そして錠剤の映像と共に映し出された……「鬱病発覚」の四文字……。

衝撃の告白とも言える内容に、静まり返る会場……。

最後に映し出されるライブのタイトル。

「姫乃、消滅」

……このライブで彼女はどうなってしまうのだろう……。
そう思いました。

しかし今思うと、この彼女の衝撃的な告白の時点で、我々は彼女が作り出した世界に既に引きこまれていたのかもしれません……。

映像が終わり次々と出てくる男たち。
それぞれの楽器を手にして、演奏の準備を進める。

一人の男性が明るい声で言った。

「こんばんわ!」
「いきなり鬱病発覚とか発表されちゃって、重苦しい雰囲気になっちゃったけど、明るくいきましょう!」

そのような趣旨の事を……バンドメンバーのギタリスト・ジョン氏は客席に呼びかけました。

○゚*☆姫乃☆*゚+バンドメンバー

バンドメンバーの演奏と共に、和服姿の゚*☆姫乃☆*゚が登場。
まるで鬱病の告白が嘘みたいな晴れやかな笑顔だ。
いや、むしろ鬱病を告白したからこその笑顔なのか?
一曲目「未だ」からスタートしたバンドメンバーとのパート。
普段はカラオケ音源でしか聴けない彼女の歌声と、生演奏の音の調和が心地よかった。
二曲目「Waterfall」(heavenstamp)→三曲目「Trickstar」(水樹奈々)と来て、バンドメンバーのソロパート。

ここが終わって続いて披露されたのは、゚*☆姫乃☆*゚随一の名曲「少女の脚を汗が伝う、夏の涼風に制服は翻る。」
いつもタイトルが長いので「少女の脚(以下略)」で紹介されているこの曲(笑)
でも間違いなく、゚*☆姫乃☆*゚を代表する名曲であり、この楽曲こそが彼女そのものの代名詞だと私は思っている。
この代表曲をいきなり持ち出してきて最後に「Happy ever after」(中川翔子)で締めて終了となりました。

あぁこの間、例のジョン氏はピンクのふんどし一丁になったなぁ(笑)
途中、ポロリもあったけど(笑)
ちなみにこのジョン氏、来月から岐阜に転居だそうです。
消滅するのは、゚*☆姫乃☆*゚……ぢゃなくて、ジョン氏だったというオチがつけられました(笑)

○゚*☆姫乃☆*゚ソロパート(前半戦)

バンドメンバーが退場してからぱ*☆姫乃☆*゚のソロパート。
実はステージの最前に高台みたいなのが作られており、そこに上るとかなり高い位置から客を見渡せるという作りに彼女も大満足(笑)
ちなみに衣裳の和服は、彼女が高校の卒業式で着たというもの。
これに大きなリボンと、洋風の黒い手袋をしている姿はまるで明治か大正時代の女学生のようでかわいらしかった。

まずソロパート最初に歌ったのは「シ・タ・ゴ・ゴ・ロ」
アルバム「姫乃、崩壊」の一曲目のナンバーでもあります。
続いては彼女がよく歌うカバーソングから「Sympathizer」(栗林みな実)→「君の知らない物語」(supercell)と連発。
ここで更にオリジナルの「時代」と来る。
この流れはヤバかったねぇ。
「Sympathizer」で盛り上がったと思って、「君の知らない物語」更に「時代」と徐々に聴かせる方面へのシフトチェンジ。
魅せてくれます。゚*☆姫乃☆*゚。
ソロパート前半のラストは「浮舟」(GO!GO!7188)で締めて終了。



ここで゚*☆姫乃☆*゚は一旦、退場。
小休憩みたいな感じと相成ります。

しばらくの休止の後、映し出されたのは……。
なんと゚*☆姫乃☆*゚ちゃんのご両親の若き日の映像。
バンドマンだけど人見知りの父親。
何かと目立ちたがりの母親。

その間に生まれた長女、゚*☆姫乃☆*゚。
そしてもう一人……彼女が愛して止まない弟……。

そんな弟・有賀麻生が高校の軽音部で結成しているバンド……「マヨナカ日記」

゚*☆姫乃☆*゚ちゃん、マヨナカ日記との共演です。

○゚*☆姫乃☆*゚×マヨナカ日記

ここでの楽曲は全て「マヨナカ日記」のオリジナルで構成。

まず最初の楽曲「State」では、゚*☆姫乃☆*゚の弟・有賀麻生のヴォーカルで幕を開ける。
すると途中から、黒い衣裳に身を包んだ、゚*☆姫乃☆*゚が登場し、弟との姉弟共演を果たす。

MCの際、実弟・麻生氏からは鬱病について突っ込まれる。
実ぱ*☆姫乃☆*゚、鬱病の事はこの日まで母親以外誰にも話していなかったとの事。
そりゃ弟も驚くわ……こんなに元気そうな姉が鬱病だと知らされた日には……。

しかし当の本人はお構いなしという感じでライブを続ける。
その後も゚*☆姫乃☆*゚とマヨナカ日記のコラボは続く。
「Wape」→「知らない街」→「Pluto」と全四曲歌いきる。

実の弟(とそのバンド)とコラボレーション出来た゚*☆姫乃☆*゚ちゃんの表情には一種の安堵感にも似た、楽しそうな表情が印象的だった。
マヨナカ日記のメンバーたちも、゚*☆姫乃☆*゚ちゃんのファンの前という普段では接する機会の無い方たちの前での演奏で緊張しつつも活き活きしているように見えた。

゚*☆姫乃☆*゚にとっては念願叶っての、姉弟揃い踏みという感じがして、見ているこちらも楽しい気分になりました。

○゚*☆姫乃☆*゚ソロパート(後半)

黒い衣裳からまたまた衣裳チェンジ。
先ほどの黒いドレス風の衣裳から、今度は白い衣裳で登場。
この衣裳はBrokenDollというところに製作していただいたものとの事。
かなーり素敵でした。

さて後半はアルバムの楽曲を中心に披露。
まずは「三両列車でにゃんだりあ(Gestalt Mix)」からスタート。
確かに以前の音源とはアレンジが違う。
続いてアルバム初収録の「ハロー!まっこふーみん」
彼女らしい、結構かわいらしい楽曲でした。

でも個人的にかなりきたのは次の「ねえ、王子」
この楽曲、かなりいい。
歌詞もどこか胸に響くような、でもささやきかけるような甘い歌声がかなり秀逸でした。

次に2ndのC/Wだったのにライブ初披露の「東京少女」
更に「アイドルらしくない歌詞」という「サカナ」と披露。
特に「サカナ」は彼女はアイドルらしくないと言っているけど、彼女なりの世界観が反映されていていい曲だと思うんですけどね。

こうしてアルバムの楽曲中心に進んだソロパートの後半戦もこれで最後。
楽曲のパートは実はこれでラスト……。
という事でラストに持ってきた楽曲はカバーで「fancy baby doll」(田村ゆかり)
個人的にはオリジナルの方が良かったけど、まぁ彼女が決めた事なので……。
でもこの楽曲を歌うという前に、前述のバンドメンバー・ジョン氏が「世界一かわいいよ!」と叫んでしまいネタバレ(笑)
そんな訳でラストはこれで締めて終了……となるのですが、これで終わらないのが「姫乃、消滅」

……そう彼女の消滅はまだ終わっていない……。

この後、登場するシークレットゲスト。
そして迎える衝撃の結末は……。

最終章の幕が開く!

○終幕……

シークレットゲストは魔ゼルな規犬氏。

゚*☆姫乃☆*゚曰く「私のアイドル人生を大きく変えた人」
そんな彼の激しいドラムソロから、会場の客をも巻き込む数々の卑猥で危険なパフォーマンスな数々(笑)

再びステージの上に戻り、激しくドラムを叩く中、白いビンテージのドレスに身を包んだ゚*☆姫乃☆*゚……。
右手にもっているのはハサミ……。

ドラムの激しい音の中、マイクを使わず肉声で叫ぶ゚*☆姫乃☆*゚。
その声はドラムの音の中、我々の耳に届く前にかき消されるが、どこか苦しく、切なく叫んでいた。
そしてかすかに聞こえた「ここに姫乃は消滅します」という趣旨の言葉……。

次の瞬間、彼女が取った行動は……自らの長い髪をバッサリを切り落とす事……。

会場にいる誰もが、彼女の行動にどこか納得しながらも、唖然とした表情のまま、身動きもせず見つめていた……。

そして゚*☆姫乃☆*゚はステージの上から立ち去った。

……だがこれで終わらない。
本当に゚*☆姫乃☆*゚はこのまま消滅してしまうのか……。

ドラムソロを終えた魔ゼルな規犬氏がマイクを片手に、言葉にならない言葉で叫ぶ。

そして再び姿を現した゚*☆姫乃☆*゚は……そっと後から魔ゼルな規犬氏を抱きついて、再び姿を消す……。

……まるでこの瞬間だけ、何か別の次元の何かを見せられていたような感覚に陥る。



物書きとして失格かもしれないけど、この不思議な感覚は言葉にするのが難しい。
活字にして現すのが難しい。ただ目の前のありのままの事実を書くに徹するしかない。
むしろこのようにして、文字に起こして伝える事すら無粋な気がしてならない。

とにかく一つ言える事……゚*☆姫乃☆*゚は髪を切った。
そしてこのまま消えてしまうのではないか……そんな気分になった。

しかし……会場内に響く「アンコール」の声。

まだ消滅しないで欲しい。

そんな会場にいる皆の願いにも似たような声が「アンコール」という声になって響いた……。

そして……その声は彼女に届いた。

○アンコール

しかしステージの上、゚*☆姫乃☆*゚は現れていなかった。
歌声は確かに聴こえるのに……。
ステージの上には、魔ゼルな規犬氏がいる。
そして彼はある方向を指さした……。

そこには……゚*☆姫乃☆*゚がいた。

この日発売された新作Tシャツに身を包み、先ほどまでVJ(映像を仕切る人)がいた高い位置にいて歌を歌っていた。

まだ姫乃は消滅していない。

アンコールでまず歌ったのは「ぼくの味方」(柴田淳)
彼女の会場にいる皆様に対する感謝の気持ちが伝わってくる素敵な歌声でした。

そして涙する゚*☆姫乃☆*゚……。

その涙の真意は分からない。
感謝の涙だったかもしれない。
逆に今までの辛さからくるものだったかもしれない。

だけど゚*☆姫乃☆*゚は確かにそこにいて、涙を流してそこに立って居た。

もうそれだけで十分だった。

最後の一曲はステージに戻って「GOLD」(bonobos)

その歌詞の中にこういう部分があった。

「ありがとう、さようなら、さらにいうと愛してる」

でも ゚*☆姫乃☆*゚は最後にこう言った。

「さようならは言わないよ」……と。



会場にいた全ての人の大きな大きな愛に包まれて、゚*☆姫乃☆*゚のワンマンはこうして幕を閉じました。



●総括

こうして振り返ってみると……やられたねぇ(笑)

゚*☆姫乃☆*゚の世界観にどっぷり浸かった約二時間半のステージでした。

彼女自身も言ってましたが、鬱病の告白ですら自分の表現の一部として利用した、プロ根性に脱帽ものでした。

とにかく今回の「姫乃、消滅」で彼女は今までの自分……特に「地下アイドル」としての゚*☆姫乃☆*゚を「消滅」したかったんだと思います。
しかし実際、彼女という存在自体が「消滅」するはずもなく、むしろ「再出発」的な意味合いが強いように思えたライブにも見えました。

あくまで私の見解ですが、彼女は非常に真面目な娘です。
真面目だからこそ、自分の思い描く「地下アイドル」の像に近づけなかったり、思い通りにならなかったりして、思い悩んでしまった節もあるのかもしれません。
そんな中、出会ったのが前説のFICEであったり、今回のゲストの魔ゼルな規犬氏であったり……色々、そこで考える節があったのかもしれません。

一見すると鬱病の告白はネガティブなイメージが付き纏いますが、今回の場合、彼女は自らを解き放つために告白に踏み切ったようにも思えます。
そう……「地下アイドル」としての自分から、解放するための告白……にも見えなくないんですよね。

……と、好き勝手に推論を並べていますが、自分の主観ほど頼りにならないものは無いので、゚*☆姫乃☆*゚本人にこのレポートを読まれた時点で「そんな事ないのになぁ」なんて言われてしまう可能性もあったりしますが(笑)

ただ゚*☆姫乃☆*゚ぱ*☆姫乃☆*゚なりに、今の自分の表現したい世界をこのワンマンで表現しきったのは紛れも無い事実だと思います。
そういう意味で自分たちは、゚*☆姫乃☆*゚の世界へ誘われただけの傍観者だったのかもしれません。

゚*☆姫乃☆*゚本人のブログから拝借すると……19歳について彼女はこう述べています。



「ちくしょう。酒も飲めないし、煙草もすえないし、ドラッグもやれないのに
ブランドもないってなんのこっちゃ!セックスしか残らない!」

(以上、原文ママ)



非常に悲観しておりますが……ただそれが言える彼女が羨ましいと思う人は世の中多いはず。
そんな……あと一年、酒も煙草も制限される彼女がですよ……これだけの世界観を作り出して、こんだけ多くの人を引き寄せる事が出来る事が凄いと思うんですけどね。

自分が19歳の頃、何が出来た?
来月で33歳になる自分は考えてしまうんですよ。

酒は飲めた(笑)煙草は吸えなかった。セックスは……初めてを済ませた(笑)
それ以外だと……大学は一浪の末受かって、椎名へきるの私設会は3年目を迎えた。コスプレを始めたのもこの頃だった。
……と、まぁこんなところですよ。

……自分が19の頃と比べても、゚*☆姫乃☆*゚がやっている事は凄いと思います。

別にいいじゃん。
酒が飲めなくても、煙草もすえなくても、ドラッグは……しちゃいけないけど(笑)ブランドなくたって、セックスだけじゃない゚*☆姫乃☆*゚がそこにいるんだから。

……という事に彼女には気付いて欲しいかな。
いや、もしかしたらもう気付いているのかもしれないけどね。

とにかく長々と語りましたが、゚*☆姫乃☆*゚にはこれからも活動を続けて欲しいと願うわけです。
もちろん彼女が言うように「地下アイドル」としての゚*☆姫乃☆*゚が死ぬのであれば、それはそれで構わないと思います。
ただ表現者としての゚*☆姫乃☆*゚はむしろこれからが脂が乗って、勢いが出てくると思ったりします。

また彼女が自分の世界観を引っ提げて、自分たちの前に現れるその日を今から楽しみにしています。

以上。