最初の勤務先に、注文を取りに来たり、届けたり、給料日には集金に来てくれる本屋さんがあった。そこでの付合いは10年余りだったが、良くお世話になった。
そして、その店がくれるカバーも気に入っていた。
今や、その本屋は、地元では最大手の本屋である。郊外に大型店を出し、市街地では複合店に入ったり、空き店舗の核として出店している。
歩いて行ける程の近くに、その本屋が出した郊外型の大きな店があり、良く利用させて貰っている。
先日、その本屋のポイントカードが一杯になった。
深夜営業中に行って、雑誌と週刊誌の3冊を買ったところ、ポイントカードが60のマークで埋まり、1,000円分の買物券に変わった。
応対の店員は若いお兄さんで、閉店時間が迫っているせいか、愛想が良くない。尋ねたいこともあったのだが、仕方なく、急いでその場を離れた。
後日、今度は太陽が落ちない内に、その店に行った。
思惑通りに、カウンターの店員は女性だった。
書棚から本を取り出してカウンターに行き、その店員に、この1,000円の買物券を得るためには、どの位の本を購入する必要があるのか、尋ねてみた。
60,000円だとの答えだった。
文庫本1冊500円平均として、何と120冊分である。
尋ねなければ良かった。知らないでおれば良かった。
そもそも、ポイントカードなんか、どうでも良かったのだ。レジで、「ポイントカードをお持ちですか?」といつも聞かれるから、持っているだけなのだ。差し出すだけなのだ。
ポイントカードにマークを貰うために、その本屋に行くのではない。
昔からの馴染みの本屋だし、カバーが好きだから行くのだ。棚の60冊余りの本の9割以上に、その店のカバーが付けてある位なのだ。
1,000円券を使ったので、替わりに新しいポイントカードをくれた。
女店員の笑顔に報いるために、そのポイントカードを差し出すことにしよう。
「ポイントカードをお持ちですか?」と尋ねられる前に。