R4予備論文再現 刑法 | 趣味で受験する司法試験予備試験からの司法試験受験、中小企業診断士試験その他各種資格検定試験

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第1 設問1について

1 本件の甲は、①娘のY(6歳)にブドウを万引きさせようとし、②息子のX(13歳)にステーキ用牛肉を万引きさせているところ、甲にこれらの行為について窃盗罪(刑法235条、以下「刑法」法名省略)は成立するか。Y,Xは14歳未満であり、刑事責任年齢(41条)未満の者を利用して窃盗罪(235条)を実現しようとする行為である。そこで、刑事責任能力を欠く者を利用して犯罪を実現した利用者の擬律が問題となる。

2 この点については、共犯が成立するためには正犯者に構成要件、違法性、責任が備わっている必要があると解した上で、正犯者が責任能力を欠く場合には共犯は成立しない。そこで、責任能力を欠く者を利用して犯罪を実現する利用者は全て間接正犯とする考え方もある。

 しかし、責任は行為者の主観の問題であり、各行為者ごとに判断すべきであり、共犯が成立するためには、正犯者が構成要件、違法性を備えていれば良いと解する。そこで、間接正犯が成立するかどうかは、利用者の正犯意思や、一方的支配利用関係が存在し、構成要件的結果発生の具体的危険を生じさせたかという観点から、正犯性や実行行為性を実質的に判断するべきである。 そして、間接正犯が成立しない場合であっても、利用者は当然に教唆犯(61条1項)とするのではなく、利用者の正犯意思や被利用者の意思の連絡、利益の帰属の態様によっては、(共謀)共同正犯(60条)が成立すると考えるべきである。

以下、①②それぞれについてみる。

3 ①について

 甲は、6歳の長女に母親としての立場から、ブドウを持ってくるように言っている。そして、Yは甲から強い口調で言われたため怖くなり、甲の指示に従うことに決めているので、甲の正犯意思も、一方的支配利用関係も認められる。よって、甲に窃盗罪の間接正犯の実行行為性は認められる。

 では、実行の着手(43条)はあるか。間接正犯の実行の着手時期が問題となる。

 間接正犯が正犯とされるのは、構成要件的結果発生の具体的危険を生じさせたことにあるから、具体的事情において、法益侵害の現実的危険性が高まった時点に、実行の着手を認められると考える。

 本問では、甲はわざわざYの目の前でブドウを取って見せたり、Yの面前でそのまま陳列棚に戻していることから、通常6歳であればブドウの場所は認識可能であったと考えられ。窃盗の法益侵害の現実的危険性は高まっていたと言える。

 よって、甲には窃盗の実行の着手(43条)があり、Yはブドウを取ることができずに終わってしることから、窃盗は未遂に終わっている。

 以上から、甲の①の行為については窃盗未遂罪の間接正犯(235条、43条)が成立する。

4 ②について

 まず、甲がXにC店でステーキ用牛肉を取ってくるように言ったのに対して、Xが断っており、さらに甲がXを説得して、Xが渋々これに応じることにしているので、一方的支配利用関係があるとはいえず、甲に間接正犯は成立しない。

 そして、甲は主導的な立場でXに言っているので、正犯意思はある。また、「あのスーパーは監視が甘いから見付からないよ。

見付かっても、あんたは足が速いから大丈夫」などと説得の態様や、その後の具体的な指示の態様から、共謀があるといえる。さらに、後で甲とXYでステーキ肉を分け合っていることから甲Xの両者へ利益が帰属している。

 よって、ステーキ用牛肉については、甲には窃盗罪の共同正犯(235条、60条)が成立する。

 次に、Xが窃取したアイドルの写真集については、甲の認識外であるが、規範は構成要件の形で与えられているので、故意の内容としては構成要件該当性の認識があれば足りると考える。したがって、故意も認められ、アイドルの写真集についても、窃盗罪共同正犯が成立する。

第2 設問2

1 事後強盗既遂罪(238条)の成立を否定するために考えられる主張は、①反抗を抑圧する程度の「暴行」といえない、②窃盗の機会にあたらない、③窃盗は未遂であるから、事後強盗既遂は成立しない、という3つである。

2 ①の論拠は、年齢と性別が甲とFが35歳、女性と同じであり、暴行の態様も両手でFの胸部を1回押しただけど弱く、犯行を抑圧する程度の暴行とは言えない。

3 ②の論拠は、甲はE店から400メートル離れた公園にまで来ていて、誰も追ってこなかったこと、その約5分後の暴行であることから、窃盗の機会の暴行とは言えない。

4 ③は、窃盗の未遂既遂は支配下に移転させたといえるかで判断すべきところ、液晶テレビは10センチほどトートバッグからはみ出していて丸見えであり、移転させたといえず、窃盗は未遂である。そして、事後強盗罪は財産犯が本質であり、窃盗の未遂既遂でその未遂既遂を判断すべきであるから、事後強盗の既遂罪は成立しない。

以上

 

追記

設問1で2ページ半、設問2は時間の関係で走り書きで1ページほど書きました。

罪数を書くのを忘れましたし、

もし最初の共犯の従属性の部分に評価が入らなければ、

C~D評価ぐらいですかね。

 

再現しての追記

設問1は、

 まず、Yの実行の着手について、C店が大型スーパーマーケットであることに今更気づきました。そうであれば、6歳の女の子が特定の売り場を探すのは容易ではないとも思えますね。ブドウを取ってくると甲が思っているので未遂の教唆ではないのは確かですが、正犯にあたるYの行為が窃盗未遂でないとすることも可能だったのかなという気もします。間接正犯の実行の着手時期の利用者基準説からは、比較的スムーズに窃盗未遂にできますかね。(ここは、利用者基準説か個別化説のどちらで書こうか迷ったところでもあります。)

 また、(実行正犯と言うべき)Xの窃盗の中身の検討をまるでしていなかったことに気付きました。

それに、この事例(Xの方)では、共謀共同正犯より、甲は教唆犯にする方が自然な気もします。

ただ、実務的には共謀共同正犯になるのかなという気もしますし、

そこはもう少し悩みを出すべきだったようにも思います。

 ちなみに、ですが、「所感」でも書いたように、

Yの利用を当然に間接正犯、Xの利用を当然に教唆犯とするのは、

何らおかしいことではなく、少なくとも、例の判例が出るまではそれが通説でした。

ですので、共謀共同正犯にはあえて触れずに、間接正犯か教唆犯かだけのことを書いても良かったようにも思えますね。

(少し欲張りすぎた気もします)

設問2は、

反抗抑圧程度のところで、理由を書くのを忘れてましたね。

「強盗として扱う以上」のワンフレーズを入れれば良いだけなのに、勿体ないなと思います。

しかし、約10分で設問2を書く状況下では、これでも書けたほうですかね。

今思うと、この刑法は結構難しい問題だったのではないかと思います。

刑法はR1がB、R2がB、R3が書かなくて良いという指示がある住居侵入をしっかりかいてしまってAで比較的得意なつもりでしたが、

過去3年より出来なかったように感じますしね。

書きやすそうで意外と書きにくい。そんな問題のように感じます。