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                             VOL.498
              
 評 論 の 宝 箱
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第498号・目次
【 書 評 】 吉田竜一
  『こうして人は老いていくー衰えていく体との上手な付き合い方』
   (上村理絵著(株)アステム)
【私の一言】 福山忠彦
  『ホーホケキョは訓練の賜物―ウグイスの鳴き声を楽しみませんか』



【書評】
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 ◇   

   『こうして人は老いていく

       ー衰えていく体との上手な付き合い方 』
 ◇     
(上村理絵著(株)アステム)
   ─────────────────────────── 

                     吉田 竜一 
 
 老化とは、遺伝子に組み込まれているプログラムであり、いろいろな原因による障害が細胞に蓄積された結果として起こる「機能低下」であるという。老化の速度は人により異なるが、終着駅の代表は、肉体的には「寝たきり」、精神的には「認知症」という。

 厚労省の2020年の介護保険事業状況報告によると、施設に入所している「寝たきり」老人だけで300万人以上であり、自宅等で「寝たきり」の人を含めればその数はさらに増えると指摘している。
また、2022年の我が国の認知症患者数は約443万人で有病率は12.3%である。これに、軽度認知障害も加えると患者数合計は1,000万人を超える。さらに、2040年には認知症患者数は約584万人と推計され、軽度認知障害も加えると患者数合
計は1,197万人となるという。これは、高齢者の3人に1人である。(2024年5月の認知症及び軽度認知障害(MCI)の有病率調査ならびに将来統計に関する研究)、
このような現状からすれば、高齢者は「健康のまま長生きする」努力は不可欠であり、それは社会保険費の動向からして高齢者の社会貢献の一端でもあるといえる。

 本書は、理学療法士である著者が自己の経験をもとに、上記のような日本の現状を踏まえ、老化を出来るだけ押さえ、残りの人生を楽しめる体の作り方を記したものである。     
 著者によると、「最近できないことが多くなって、歳を感じる」、「歩くのがしんどくなった」、「疲れやすくなってきて、体を動かすのがおっくう」、「出来れば介護で家族に迷惑をかけたくない」、「将来寝たきりにならないか不安」、というような考えを持つ人は老化が進んでいる人であり、該当する人は本書を読んでほしいという。

目次は次の通りである。
はじめに
第一章    こうして人は老いていく
第二章    肉体と精神の老化を防ぐためのリハビリとは
第三章    老化を防ぐためのセルフリハビリのやりかた
第四章    勝手に老化が予防できる環境作りとは
第五章    100年時代をどう幸せに生き抜くか

 内容としては、漫然と歳を重ねれば、寝たきりになるあるいは認知症になるリスクは回避できず、最期まで自分らしく生きるためには、それなりの対応策を知っておく必要がある。
 その第一歩は、まず今の自分の体がどのような状態にあるかを知る事であり、さらに自己肯定感を持ち意欲や気力という精神的若さを持ち続け、自信の枯渇を避け、肉体的老化、ライフスタイルの変化、あるいは環境の変化に対応する
ことである。
特に、寝たきりに対応するには、これは病気でないと認識し、機能向上訓練に取り組み、一方、社会とのつながりを保持する心がけを持つ必要がある。本書では、これらを円滑に継続して行うための運動がイラストで描かれている。
注目点は、家族の深すぎる愛情が体を老化させると言うこと、高齢者への見守りは手でなく目でする事の重要性の指摘である。

 つまり、最期まで自分らしく生きるためには、自分の体をきちんと使い続け衰えを防ぐことが肝要ということであり、高齢者本人も家族もそのような発想の転換により実践してもらいたいと言うことである。
         

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆【私の一言】☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

   『ホーホケキョは訓練の賜

      ーウグイスの鳴き声を楽しみませんか』
───────────────────────────

                     福山 忠彦

 川沿いの遊歩道が私の散歩道です。朝の冷気の中で何も考えずに無心に歩いています。なにかの思いが浮かんで来たら「今はそんな時ではありません」と自分に言い聞かせその思いに引っ込んで貰っています。川と周りの自然を体感しながらの至福の時間です。春先から7月まではウグイスの鳴き声を聞きながらの散歩です。ホーホケキョと上手な鳴き声を聞くと周りの景色がなごんできます。多くの場合それは6月末から7月に入ってからです。

練習を重ねて段々上手になりますがうまく鳴けないウグイスもいるようです
 生まれた時から上手に鳴けるわけではなく、練習を重ねることで美しい声になります。春になると日照時間が長くなり、オスの体にできる物質によって喉の筋肉が発達し美しい声が出やすくなります。また、ウグイスの特長的な鳴き声であるホーホケキョは縄張りを宣言する時や求愛の行動をする時です。日が短くなる秋はチャッチャという鳴き声に代わります。また、ホーホケキョとうまく鳴けずホーホケやホッケホケなど鳴き声が下手なウグイスがいます。オスにとって鳴き声は自分の子孫を残す手段になるため一生懸命練習して繁殖期に備えます。その時は一日に1,000回ほど鳴くそうです。

・万葉集にも多く詠まれ、春と梅とのセットで日本人に親しまれています
 東京の山手線の鶯谷の駅名はかってはウグイスの名所だったことに由来しています。江戸時代、将軍家の菩提寺である上野 寛永寺の住職は江戸のウグイスは鳴き始めが遅く声も美しくないことを悲しみ、「江戸のウグイスは訛っている」として当時の文化人 尾形乾山に京都から美声で早鳴きのウグイスを3,500羽も運ばせました。このため鶯谷のウグイスは美しい声で鳴くようになり、江戸で最初に鳴き出す初音の里として知られるようになりました。万葉集では霍公鳥(ほととぎす)に次いで多くの歌に春や梅と合わせて詠まれています。
松尾芭蕉もウグイスの句を数多く詠んでいます。

・スズメとほぼ同じ大きさで警戒心が強く見た目は地味です
 体調はオスが16センチ、メスが14センチでスズメとほぼ同じ大きさです。体色は雌雄同色で背中がオリーブ褐色、腹面は白色、全体的に灰褐色で地味です。
食性は雑食で夏場は主に小型の昆虫、幼虫、クモ類などを捕食し、冬場は植物の種子や木の実などを食べます。笹の多い林下や藪に横穴式のツボ型の巣を作りますが警戒心が強く声が聞こえても姿が見えないことがほとんどです。

・メジロと混同され「春告げ鳥」「梅にウグイス」と昔から高い評判を得ています
 梅にウグイスという「美しく調和する取り合わせのいいもの」という言葉があります。梅の開花の時期はウグイスの活動が始まる時期と重なることから、早春を代表する梅とウグイスという取り合わせが古来、詩歌や絵画によく使われてきました。梅の枝間を飛び回る小鳥はウグイスではなく多くはメジロですが、春の訪れの代名詞として梅にウグイスという表現で春の訪れを伝える風景として愛されています。

 メジロは黄みがかった明るい緑色の鮮やかな光沢をもつのに対し、ウグイスは灰色みのある淡い黄緑色で見た目には地味な色です。目元も大きく異なっていてメジロは黒目の周りを白目がくっきりと囲んでいます。また、これがメジロ(目白)の名前の由来です。メジロは大きさもウグイスに近くウグイスに間違われやすく、花の蜜を好み梅や椿の花が咲くころに人前に姿を現します。ウグイス餅などウグイスを冠する商品の多くはこのメジロの姿や色を真似たものが多いようです。鳴き声はウグイス、体色や姿はメジロを人々はこよなく愛しました。日本人は滅多に姿を現さないウグイスの鳴き声の方を馴染み深い鳥に選んだようです。

・ウグイスを大切にしてホーホケキョの鳴き声を広めて楽しみましょう
 ホーホケキョは「法・法華経」や「宝・法華経」という字を当てるくらい日本人は思い入れを持っています。馴染み深いありがたい存在です。ほぼ日本全国に分布し山梨県と福岡県では県鳥であり、日本の多数の市町村の指定鳥です。
都市化が進み自然が段々狭まっていますがウグイスの鳴き声はあまり減らずに、昔と変わらず季節になるとホーホケキョと上達するまで聞くことが出来ます。
花の蜜などの贅沢品を食するのではなく質素な食物、豪華な巣ではなく低地の素朴な住まい、何よりも用心深いため人前に姿を見せることなく生活しているからでしょう。そのためでしょうか。周りの人に聞くと「鳴き声を聞ける身近な鳥」という返事が返ってきます。都市化で思ったほど減らず、山里まで行かなくてもホーホケキョの鳴き声を楽しむことが出来ます。ホーホケキョの鳴き声に関心を持ってください。そして彼らの涙ぐましい努力をたたえ、鳴き声を心地よいありがたいものと感じてはいかがですか。
いい一日が過ごせること必定です。                


編集後記
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 世論調査は現代の特長ですが、現在の世論という字には「輿論」「よろん」と「世論」「せろん・せいろん」の2つの意味があります。
 国語辞典によると「『輿論』は人々の議論または議論に基づいた意見であり、『世論』は世間一般の感情または国民の感情から出た意見」という違いがある。」
戦後、当用漢字制度の制定以降「輿」が使えなくなり、世論のみが使用されるようになりました。従って現代の世論という字は2つの意味が混同されています。
ただ、最近の情報伝達の手段がインターネット中心になるにつれ、「せろん」 の意が強くなりつつあるように思われます。

 自民党の総裁選挙の動向を見る限り、政策よりも感情的な好き嫌いが優先されるように見受けられますが、これもインターネット時代の繁栄でしょうか。

 今号もご愛読・寄稿などご支援ご協力有難うございました。
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 第499号・予告
【 書 評 】   桜田 薫『ベーシックサービス

            ~「貯蓄ゼロでも不安ゼロ」の社会』
           (井手英策著 小学館新書)
【私の一言】 濱田克郎『アメリカ便り(49)

         2010年のTED で、ワクチン、生殖能力の操作等で

           世界人口が減らせる、と語っていたビルゲイツ』
 
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