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名言セラピー

「この星にSpark JOY その19


~名言タクシードライバー~


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さて

昨日に引き続き、ひすい最初で最後の師範代

まことさんが

今、タクシードライバーの体験をまとめて

書籍化に挑戦しています。



まことさんは、

ただのタクシードライバーではないんです。


お客さんを背中で感じて、

そのお客さんに感じたことを言葉にして

赤信号の時に書いて、プレゼントするという

伝説の名言タクシードライバーになったんです。


その名言カードに

感動して

泣き崩れるお客さんも現れ始め、

いろんな物語が生まれて

それをまとめた書籍です。




まことさんが今、執筆中の中から一話ご紹介しますね。



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曇り空の早朝、

まだ静かな街で女性が手を挙げ、

タクシーを拾おうとしていた。


髪の短い女性が細い腕を伸ばし、

横には大きなキャリーケースとバッグが。


その女性の雰囲気からは、

どうもただの旅行などではなく、

何かを断ち切り、故郷に帰ることにした、

そんな強い決断をしたあとのような印象を受けた。



微かに風で揺れている街路樹の前で立っているその女性の前に減速してタクシーを停めてゆっくりとドアを開けると、そんな印象とは裏腹に、うつ向いて弱々しく掠れた声で、





「新大阪へ……





その女性はそう行き先を告げると、

もう力が抜け落ちたかのようにゆっくりと深くシートにもたれかかった。

かなり涙を流したのか、頬のあたりもはれていた。


もしかしたら、彼女にとってはこれが最後の大阪なのかな。

もしそうなら、新大阪駅へ向かう僅かな間、このタクシーの中だけでも楽しんでもらえたらと、

そんな思いを巡らせながらクルマを走らせていた。



暫くすると桜橋の交差点で赤信号になった。

信号待ちをしている間に、僕はペンと名刺サイズの「名言カード」なるものを

胸ポケットから取り出して、彼女の何かを感じて、

浮かんできた言葉を、一筆、カードに綴った。


そして、その「名言カード」を「どうぞ」と彼女に手渡した。






「雲の向こうはいつも青空」







その女性はずっとうつ向いていたので、

一瞬でもいいから上を向いてほしい。

そんな思いが浮かんできて、

曇り空、雲、雲の向こうには青空があるはず、

そんな気持ちを込めて書いた。

それに上を向くと自然に明るいことを考える、

と聞いたことがあったから。



その女性は、うつ向いていた顔を少しだけ上げると、不思議そうに、けど両手で、僕の差し出した名言カードを受け取ってくれた。

その後も、車内は沈黙のままだった。

やがて、新淀川大橋が見えてきた。

この橋を渡ると、まもなく新大阪駅だ。



スロープを降り、降車レーンに入り、やはりまだ静かな駅にタクシーを停めて、

再びゆっくりとドアを開けるとそのお客さんは初めて口を開いてくれた。



「大阪へ来て、いい思い出は何もなかったけど、

 最後にひとつ、いい思い出ができました」



そして乗車した時の、か細い声とは違ってしっかりとした口調で、

「ありがとうございます」

と言って降りて行かれた。



タクシーの仕事は、もちろん乗客さんを目的地へお送りするのが仕事だ。


安全と経路を気をつければ、それだけでいいのかもしれない。

もちろん名言カードなんて、必要のないことだ。


でも、こんな「サプライズ」でもあったら喜んでもらえるかな、

暗い顔の乗客さんには、少しでも笑顔になってもらえたらと

名言カードをプレゼントさせてもらっている。



彼女の後ろ姿を見送りながら僕はこう思った。

大丈夫、あなたは運がいい。


これだけタクシーがあふれている中で僕のタクシーに乗ったのだから……


その時、曇り空の隙間から、ほんの少し光が差してきた。


やっぱり、雲の向こうはいつも青空だ。

ありがとう。


まこと




---------------------「名言タクシードライバー」より。




いいでしょ?まことさん、

今日はこの余韻のままに

また明日ね。




ひすいこたろうでした。

UniverseThankyou

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