大学生のころ、僕はひとみしりで、赤面症で、


そもそも誰かと目と目を合わせること、


視線を合わせて話すことすら難しかったんですね。




だから、社会人としてやっていく自信がなかった。




そんなときに、友達が教えてくれたんです。




「俺の紹介だと、面接なしで、入れてくれる会社があるけど行く?」






面接なしでも入れてくれる?


行くに決まってるじゃないか!






そして、社長に会うと、ほんとうに会うなり「うちに来るかね?」と言われた。


「はい」


こうして僕は何をしている会社か知らないままそこに入社したんです(笑)。




入社したあとにわかったことですが


僕の仕事は営業でした。




一番やりたくない仕事でした。




営業初日、上司の営業に同行しました。


僕は、スーツのポケットにそのまま名刺を放り込んであり、


名刺交換のとき、おもむろにポケットから名刺をとりだして


受け取った名刺はそのままポケットに入れました。




営業を終え、相手先の会社を出るなり


上司が僕を怒鳴りつけました。




「お前、名刺ケースないのか?」




「は、は、はい」




「ふざけんな!!! いまから10分以内でダッシュで名刺ケース買ってこい!」




どこの街だったか、もう覚えてないのですが


僕はその街を全力で走りまわり


名刺ケースを探しまわりました。


15分くらい走ったでしょうか。


1000円くらいの名刺ケースを見つけて


買ったことを覚えています。




当時は、会社に電話が鳴るたびにビクビクしてました。


誰か、電話に出てくれーーって思ってました。


敬語がうまく話せなかったからです。




そんな僕が営業していると、目の前で、寝てしまうお客さんもいました。


ショックでした。




寝てしまったお客さんを前に、


このまま説明した方がいいのか、


説明をやめていいのか悩みました。


そのときふと思いました。




俺は、いま、世界で一番小さなことで悩んでいる……




もう、営業ムリだ……




会わずに売る方法を見つけるしかない……




そんなある日


ある通販会社を営業していたときに、


「うちのカタログは1Pで最低500万円が売上目標だ」と教えてもらいました。


「1Pで500万円も売るんですか?」と僕が驚いていると、


それはあくまで最低目標で、2000万円、3000万円売るページもざらにあると言われました。






A4の片面スペースだけで


文字と写真で、2000万円、3000万円売るんです。




僕は、「ここにかけよう!」と思いました。


文字で伝える。


ならばひとみしりな僕でも会わずに売れる。




僕はその通販カタログをとりよせ、ひたすら書き写していったのです。


広告の写経ですね。


3ヶ月間、とにかく書いて書いて書きまくりました。








すると、伝えるってこういうことかと徐々に見えてきたのです。






そして今まで名刺交換した企業に


写経で学んだことをもとに商品広告を作りFAXしていったのです。


その際に、「ひすいコラム」というのをつくり


映画を見た感想や、本のなかで出会った名言などを書きくわえました。






すると、徐々に


先方さんから連絡がくるようになり、


そこから1年で、僕はNO1営業マンになることができたのです。






通販カタログを死ぬ気で書き写したことが


すべてのきっかっけになりました。






このことを、最近、講演会で話したら、


参加者の方に、


「よく写経しようなんて思いましね? 僕ならその前に会社を辞めてます」と言われました。






うん。当時、なんで僕は辞めなかったのだろうか?




そう思ったとき、


答えはすぐに出ました。






僕は社長が好きだったんです。






社長は、何もできない僕を「あんた、うちに来るかね?」とすぐに採用してくれた。


そのときの社長の笑顔を僕はいまだに覚えてます。






社長直属の部署だったこともあり、


入社後も、夜はしょっちゅう回転寿司に連れて行ってくれました。


そこのお寿司はすごくおいしくて、


特に、えんがわが僕の好みで、えんがわだけで8皿くらい食べてました。




そのお寿司屋で、社長はいろんな話をしてくれました。


ものの見方がユニークで、僕にはいちいち新鮮で


社長の話をメモしながら聞いていました。




僕も社長のような、ものの見方ができる人になりたい






いつかは、営業ができるようになって


社長を喜ばせたいって


思っていたんです。




僕は社長が好きだったからです。





きつかわゆきおさんがこんな言葉を残しています。


「良い会社か悪い会社の違いは売上高でも社員数でもない。


社員が社長をどれだけ好きなのか、だ」