■「天職」



コピーライターは一行にこだわる職業です。




だから、伝えたい一行を生かし切るために、


この話はこの順で進め、オープニングはここから入ってラストはこうしめるといった感じで

話に流れを作るのは得意分野です。




ただ、その流れを机の上でゆっくり時間をかけて書くことはできるのですが

それを瞬時に人前で話すとなるとまた別問題なのです。




講演では、頭で考えていているようではコンマ何秒遅れるわけで、

ノリ一発でのりきっていく力が問われるわけで

それはできる日もあればできない日もあり、

できないときは、すごく自分でももどかしいのです。




ときには話し終わったあとにしびれるほど後悔するときもあります。

穴があったら逃げ込みたいときもあります。


いたたまれなくなって、2次会から抜け出したこともあります。






でも、ふと思ったんです。




きっと、3年後、僕は話すのがすごくうまくなってるんじゃないかって。




だってこんだけ悔しいって思ってるってことは

話すことに本気なんだって証拠ですから。




死ぬほどくやしく感じる場所って、そこに天職があるように思ったんです。




僕はタップダンスを習ってましたが、タップダンスはヘタでも、


残念ながらここまで悔しく思えなかったのです。




英語を習っていたときも、できなくてもここまで悔しくなかった。


だからどちらも途中で挫折してしまった。






心の底からの悔しさを感じたとき、きっとそこに天職があるように思うのです。






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■24世紀の国語辞典

□「天職」=「うまくできないときに死ぬほど悔しく思えるもの」



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