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2019年4月15日
VOL.368
評 論 の 宝 箱
https://hisuisha.jimdo.com
http://blogs.yahoo.co.jp/hisuibook
見方が変われば生き方変わる。
読者の、筆者の活性化を目指す、
書評、映画・演芸評をお届けします。
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第368号
・ 書 評 佐藤広宣 『日本の同時代小説』
(斎藤美奈子著 岩波新書)
・【私の一言】 幸前成隆 『見てござる』
・書評
┌─────────────────────────────────┐
◇
『 日本の同時代小説 』
◇ (斎藤美奈子著 岩波新書)
└─────────────────────────────────┘
佐藤 広宣
立ち読みして面白そうだった岩波新書「日本の同時代小説」をすぐに買い、一
気に読み通しました。といっても、私は日本の同時代小説の熱心な読者ではあり
ません。三十代以降は気忙しく、読んだ小説は、せいぜい、司馬遼太郎、池波正
太郎、藤沢周平、城山三郎、山田風太郎あたりで、正直な話、芥川賞作品も縁遠
かった。
そんな私が「日本の同時代小説」を読んで面白かったのは、自分が生きてきた
半世紀あまりの時代の社会と文化を現代小説の紹介を通じて振り返ることができ
たからです。特に、八十年代のポストモダン時代以降については、ニューアカデ
ミズムとやらの影響か枝葉末節に凝った小難しい論説が多い文化状況で、頭の整
理ができないままです。
本書がカバーしているのは、一九六〇年代から二〇一〇年代までの約60年間の
小説。それも純文学のみならず、エンタメ小説もノンフィクションも含まれてい
ます。登場する作家の人数は300人以上。
斎藤美奈子は、こうした膨大な書物群をグルーピングし、意味付けるという途方
もない作業をやってくれています。
目次から、紹介すると、こんな具合です。
1 一九六〇年代 知識人の凋落
2 一九七〇年代 記録文学の時代
3 一九八〇年代 遊園地化する純文学
4 一九九〇年代 女性作家の台頭
5 二〇〇〇年代 戦争と格差社会
6 二〇一〇年代 ディストピアを超えて
自分が生きてきた時代の性格を知る一助になる本です。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆【私の一言】☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
『見てござる』
----------------------------------------------------------------------
幸前 成隆
「見てござる」。
やましいことは、してはならない。誰も知らないと思っても、お天道様は見て
ござる。
「天知る、神知る、我知る、子知る。何ぞ知ることなしというや(小学)」。
揚震の四知。壁に耳あり、障子に目あり。
「悪事千里を行く(伝灯録)」。
「天網恢恢として、疎にして失わず(老子)」。
身正しければ、危うからず。
「君子は必ずその独りを慎む(大学)」。
「闇室を欺くかず(宋名臣言行録)」。
「屋漏を愧じず(詩経)」。
「独り行きて影に愧じず、独り寝て衾に愧じず(劉子新論)」。
「その見ざる所に改慎し、その聞かざる所に驚懽す(中庸)」。
「青天白日の節義は、暗室屋漏の中より培い来る(菜根譚)」。
「自己を欺くことなかれ(宋史)」。
「見ら欺かず、これを天に事うという(言志?録)」。
悪事はしてはならない。
「諸悪莫作(鳥窩和尚)」。
「人の見ず、知らざればて悪事を行ずべからざるなり(正法眼蔵聴聞記)」。
小事であっても、してはならない。
「悪小なるをもって、これを為すことなかれ(小学)」。
疑いを受ける行為も、避ける方がよい。
「瓜田に履を納れず、李下に冠を正さず(古楽府)」。
「仰いで天に愧じず、俯して人に愧じず(孟子)」。
「我と我が心に恥ずるものならば、恥ずべきことのなき身とぞなる(中江藤樹)」。
良心に照して、恥じなき行動を常に心がけたい。
《編集後記》 ∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴
5月から元号は、平成から令和となります。
平成の意味は、「天地、内外ともに平和が達成される」です。この期間日本は
確かに平和な時代を築き上げてきました。
しかし一方では、『「ディプレッションという言葉がぴったり当てはまる気
がしますね。この単語は「不況」と「鬱」の2つの意味を持ちます。平成は経済
的な墜ち込みが長く続いただけでなく、人々の気分が沈下し、停滞しつづけた
「鬱の時代」でもあった。多くの日本人は、過去とも未来ともつながっていない
感覚を抱いて生きています。』という梯久美子さんの意見もありました。それな
りに色いろある時代でした。
ところで、令和ですが、「人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つ
という意味。」で「厳しい寒さの後に春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花の
ように、一人一人の日本人が明日への希望と共に、それぞれの花を大きく咲かせ
ることができる、を込めているそうです。(総理談話)
内外の問題が山積し、時代の転換期を思わせる昨今で、元号の意に沿った未来
に希望が持てる政策の展開が期待されますが。
今号も貴重なご寄稿有難うございました。(HO)
追伸
ひすい社ホームページが下記に変わりました。よろしくお取り計らい下さい。
https://hisuisha.jimdo.com
∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴
第369号予告
・ 書 評 矢野清一 『世界を変えた日本と台湾の絆』
(黄文雄著 徳間書店)
・【私の一言】 川井利久 『日本の教育』
2019年4月15日
VOL.368
評 論 の 宝 箱
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見方が変われば生き方変わる。
読者の、筆者の活性化を目指す、
書評、映画・演芸評をお届けします。
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第368号
・ 書 評 佐藤広宣 『日本の同時代小説』
(斎藤美奈子著 岩波新書)
・【私の一言】 幸前成隆 『見てござる』
・書評
┌─────────────────────────────────┐
◇
『 日本の同時代小説 』
◇ (斎藤美奈子著 岩波新書)
└─────────────────────────────────┘
佐藤 広宣
立ち読みして面白そうだった岩波新書「日本の同時代小説」をすぐに買い、一
気に読み通しました。といっても、私は日本の同時代小説の熱心な読者ではあり
ません。三十代以降は気忙しく、読んだ小説は、せいぜい、司馬遼太郎、池波正
太郎、藤沢周平、城山三郎、山田風太郎あたりで、正直な話、芥川賞作品も縁遠
かった。
そんな私が「日本の同時代小説」を読んで面白かったのは、自分が生きてきた
半世紀あまりの時代の社会と文化を現代小説の紹介を通じて振り返ることができ
たからです。特に、八十年代のポストモダン時代以降については、ニューアカデ
ミズムとやらの影響か枝葉末節に凝った小難しい論説が多い文化状況で、頭の整
理ができないままです。
本書がカバーしているのは、一九六〇年代から二〇一〇年代までの約60年間の
小説。それも純文学のみならず、エンタメ小説もノンフィクションも含まれてい
ます。登場する作家の人数は300人以上。
斎藤美奈子は、こうした膨大な書物群をグルーピングし、意味付けるという途方
もない作業をやってくれています。
目次から、紹介すると、こんな具合です。
1 一九六〇年代 知識人の凋落
2 一九七〇年代 記録文学の時代
3 一九八〇年代 遊園地化する純文学
4 一九九〇年代 女性作家の台頭
5 二〇〇〇年代 戦争と格差社会
6 二〇一〇年代 ディストピアを超えて
自分が生きてきた時代の性格を知る一助になる本です。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆【私の一言】☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
『見てござる』
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幸前 成隆
「見てござる」。
やましいことは、してはならない。誰も知らないと思っても、お天道様は見て
ござる。
「天知る、神知る、我知る、子知る。何ぞ知ることなしというや(小学)」。
揚震の四知。壁に耳あり、障子に目あり。
「悪事千里を行く(伝灯録)」。
「天網恢恢として、疎にして失わず(老子)」。
身正しければ、危うからず。
「君子は必ずその独りを慎む(大学)」。
「闇室を欺くかず(宋名臣言行録)」。
「屋漏を愧じず(詩経)」。
「独り行きて影に愧じず、独り寝て衾に愧じず(劉子新論)」。
「その見ざる所に改慎し、その聞かざる所に驚懽す(中庸)」。
「青天白日の節義は、暗室屋漏の中より培い来る(菜根譚)」。
「自己を欺くことなかれ(宋史)」。
「見ら欺かず、これを天に事うという(言志?録)」。
悪事はしてはならない。
「諸悪莫作(鳥窩和尚)」。
「人の見ず、知らざればて悪事を行ずべからざるなり(正法眼蔵聴聞記)」。
小事であっても、してはならない。
「悪小なるをもって、これを為すことなかれ(小学)」。
疑いを受ける行為も、避ける方がよい。
「瓜田に履を納れず、李下に冠を正さず(古楽府)」。
「仰いで天に愧じず、俯して人に愧じず(孟子)」。
「我と我が心に恥ずるものならば、恥ずべきことのなき身とぞなる(中江藤樹)」。
良心に照して、恥じなき行動を常に心がけたい。
《編集後記》 ∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴
5月から元号は、平成から令和となります。
平成の意味は、「天地、内外ともに平和が達成される」です。この期間日本は
確かに平和な時代を築き上げてきました。
しかし一方では、『「ディプレッションという言葉がぴったり当てはまる気
がしますね。この単語は「不況」と「鬱」の2つの意味を持ちます。平成は経済
的な墜ち込みが長く続いただけでなく、人々の気分が沈下し、停滞しつづけた
「鬱の時代」でもあった。多くの日本人は、過去とも未来ともつながっていない
感覚を抱いて生きています。』という梯久美子さんの意見もありました。それな
りに色いろある時代でした。
ところで、令和ですが、「人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つ
という意味。」で「厳しい寒さの後に春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花の
ように、一人一人の日本人が明日への希望と共に、それぞれの花を大きく咲かせ
ることができる、を込めているそうです。(総理談話)
内外の問題が山積し、時代の転換期を思わせる昨今で、元号の意に沿った未来
に希望が持てる政策の展開が期待されますが。
今号も貴重なご寄稿有難うございました。(HO)
追伸
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∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴
第369号予告
・ 書 評 矢野清一 『世界を変えた日本と台湾の絆』
(黄文雄著 徳間書店)
・【私の一言】 川井利久 『日本の教育』