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                                2026年3月1日
                                               VOL.531

                          評 論 の 宝 箱
                     
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    第531号・目次
   【  書 評  】  西川紀彦 『世界秩序が変わるときー新自由主義からのゲームチェンジ』              
                                                    (斎藤ジン薯 文春新書 )
 【 私の一言 】幸前成隆  『物事の本質をつかむ』


  

【書 評  】

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           『世界秩序が変わるときー新自由主義からのゲームチェンジ』
                                             ( 斎藤ジン薯 文春新書)
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                                                                                                                     西川 紀彦

 
 著者は昨年NHKスペシャルで取り上げられて一躍世の注目を集めたコンサルタン
トで、アメリカ在住のヘッジファンド向けコンサルタントを職業としている。
ジョージソロス他著名なヘッジファンドマネジャーから絶大な信頼を得ており、
1992年の英ポンド先物下げを見事あてたことで名を挙げた。また昨年強硬なトラン
プの相互関税政策への対応では、赤沢大臣がトランプ政権と交渉するにあたり、斎
藤氏がベッセント財務長官と知己があったため、官僚筋からの依頼で大臣にアドバ
イスをしたとも報道されている。
著者の年齢は不明だがトランスジェンダーを自認し、1990年初頭に大手都市銀行に
見切りをつけ単身アメリカにわたり、知己を得てコンサル業に身を転じた(転職理
由は銀行のビジネスモデルの限界を感じたことと、性自認の人物評価にいやな思い
をしたのではないか思う?)。

 この本の内容は、アメリカで1980年代から顕著になった新自由主義の嵐の中で世
界の動きを見てきたので、しっかりした根拠をもって2020年までの30~40年間の経
済分析していると思う。よく見られる奇をてらったものとは違う内容になっている。
要点は新自由主義の終焉(信任の揺らぎ)と新しい世界権力構造の展望である。
その意味するところは
1)    G2(アメリカと中国)の世界と
2)    日本の有利なアドバンテェッジの到来である。

 今年(2026年)正月早々から明らかになったように、アメリカははっきりと競争
相手を中国に焦点を絞って、欧州、ロシアへの関心を後退させている。過去を振り
返れば2番手(ソ連,日本)を徹底的に打ちのめす作戦をとってきたことから明らか
な方針転換である。
日本のアドバンテェッジの到来とは、低迷時期を辛抱強く維持してきた結果、その
ことがこれから有利に作用すると主張する。
失われた30年不況のアドバンテェッジとは
1)    政財界の癒着(国家の裁量的介入)、
2)    サービス業の労働生産性の低さ、
3)    雇用を守り社会の分断化を免れた、
4)    人手不足と低生産性企業の退出で、労働市場の流動化が自然と進んだ、
などである。
資本主義が行きつくところまで進んだ結果、いわゆる”ルイスの転換点(工業化に
伴って農村地域から搬出される労働人口が限界に達して、人件費が上昇に転じる状
態)“を多くの国が超えたため、日本の労働コストが相対的に有利に働くようになり、
特にサービス産業において生産性の上昇余地が大きなメリットとなってきたことを
挙げている。つまり失われた30年と言われたマイナス面をプラス面に評価している
点が大変斬新に思えた。またこの間の為政者としてアメリカでは岸田総理大臣を高
く評価している点が意外であった。日本国内では必ずしもそれほどの見方・評価は
感じられないが、見方によってあるいは報道の仕方によってずいぶんと違いがある
ことを実感した次第である。

 この正月のごく直近の動きを見ると、G2の誇示を目指したトランプの強引な他
国への干渉は、中間選挙の勝利を目指すトランプ流のスタンドプレイで、いずれト
ランプが変われば違った展開になるのではないかという見方ができないのか、また
昨年春からの相互関税政策をはじめ強硬な諸政策は大統領権限を逸脱しているとし
て議会や司法で問題化されており、このまま軍事力に突起した品位のない暴力国家
になっていくとは信じられないように思える。

 著者が言うアドバンテェッジによって、高市政権が掲げる財政による積極投資政
策を呼び水にして日本の先行き明るい展望が見えるかどうか、本当にそうなる可能
性があるのか、昭和30年代の重化学工業の賑やかな発展の裏写しのような産業の活
発化を期待するような気持ちにさせるが、国内外市場はそれを許すような余地がま
だあるのか俄かには信じがたい。
           

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆【私の一言】☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

              『 物事の本質をつかむ 』
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                               幸前 成隆


「問題は、解決されるためにある(中山素平)」。
「困難な命題を解決してこそ、人間の値打ちがある(熊谷直彦)」。
「問題を正しく掴めば、半ば解決したも同然である(C・ケタリング)」。
 そのためには、「大局観と本質を掴む(三宅重光)」ことが、大事である。

 大局観を誤っては、いけない。
「すべては大局観。形勢がいい時に勝負手をやってもしようがないし、悪い時には
安全な手ばかりでは勝てない(中原誠)」。
「着眼高ければ、理を見て岐せず(言志録)」。

 物事の本質を掴むこと。枝葉末節にとらわれてはいけない。
「本を務む。本立ちて道生ず(論語)」。
「枝葉末節にこだわることなく、根本的に考察する(安岡正篤)」。

「いろいろな現象が起きても、惑わされず、ズバリ本質を見抜くことだ。たとえば、
トラブルが起きたとき、論議するが、そんな論議をしても駄目だ。根本的な問題を
見抜けば解決する(吉野照蔵)」。

 枝葉末節にとらわれると、本質が分からなくなる。多岐亡羊。
「大道は、多岐をもって羊を失う。学者は、多方をもって生を喪う(列子)」。
「利を見て、その真を忘る(荘子)」。
「金を取るの時、人を見ず(列子)」。

 判断を誤らないために、「大局観と本質を掴む」訓練をしなければならない。
そのためには、経験を積むこと。
「できるだけ多くの経験を積んで、視野を広くすること(三宅重光)」が大事である。


   編集後記
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     3月3日は、ひな祭りで桃の節句ともいわれ、五節句の一つです。節句というのは、
    医療が発達していなかった昔、心身ともに調子を崩しやすい季節の変わり目に悪いも
    のが取り付きやすくなると考え、1年の中で奇数が重なる日に邪気を祓い、ご馳走を
    食べ、健康長寿を願って行われた行事です。
    1月7日(人日)、3月3日(上巳)、5月5日(端午)、7月7日(七夕)、9月9日(重陽)

    の「五節句」があります。この「五節句」には、1月7日は春の七草、5月5日は葉菖、

    7月7日は竹(笹)、9月9日は菊を飾ったり食べたりしました。
    3月3日はもともと上巳(じょうし・じょうみ)の節句として春を寿ぎ、無病息災を願
    う厄祓い行事でしたが、平安貴族の子女の遊び「ひいな遊び」等と合流し、江戸時代
    以降、子どもの災厄避けとして飾る雛人形と一緒に魔除けの効果がある桃の花を飾る
    風習が広がり、“桃の節句”という名称も浸透したと考えられています。
 
    いずれにしろ、3月は季節の変わり目です。旬の食べ物を食するなどして、ご自愛の上
    ご活動ください。
    本号のご支援ご協力有難うございました。(HO)
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     第532号・予告
      【  書 評  】  岡本弘昭 『西洋の敗北と日本の選択』
               (エマニュエル・トッド 文春新書)
     【 私の一言 】 三谷徹  『四囲雑感』