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ナベツネの真骨頂

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旧い友人である渡邉恒雄氏が近く「反ポピュリズム論」(新潮新書)を上梓する。

「ナベツネまた吼える」などとスポーツ紙の見出しで、傲慢無礼がネクタイを締めて歩いているような人物像をつくられたナベさんだが、実は無類の勉強家であり、これまで数多くの好著を出版している。

 

 最近私に来た手紙にも「これまで約20冊の本を書いてきましたが、これが86歳、最後の書と思っております。ローマ末期の政治のポピュリズムの歴史をはじめ、小泉テレポリティックスを経て今日の橋下現象に至るポピュリズムを、歴史的理論的に分析したもので、小生の数十年にわたる持論の集大成であります」とある。

 

 文中、小泉首相による刺客選挙と第一次世界大戦の最中に英国首相を務めたロイド・ジョージによるクーポン選挙の類似性、関西で熱狂的支持を集める橋下徹大坂市長と台頭時のアドルフ・ヒットラーとの対比など、異論のある人もいようが、説得力がある。

 

 面白いのは07年、ナベさんが青写真を描いた福田自民と小沢民主の両党大連立工作の一部始終である。失敗に終わったのは、福田首相の「慎重さ」と小沢代表の「過信」と分析している。大連立の挫折で、ナベさんは「密室談合の仕掛人」「新聞記者の分を超えている」と散々悪口を書かれた。しかし彼は、政局混迷の打開は本来政治家がやるべきことだが、誰もやらないから構想を示してやっただけ。間違ったことはしていない、と言い切る。賛否の意見はいろいろあるだろうが、政治に関心のある人なら必読の書だと思う。