松阪市消防本部は、市内の3病院に救急搬送される傷病者に、「軽症」すなわち入院の必要がなかった者に、「選定療養費」として7700円を徴取する事となった。
背景には救急車の出動件数が年々増えており、救急医療体制が限界に近い事がある。これに対し、一般人・県内外の行政や消防・マスコミ関係者などからの問い合わせが160件以上あった。「救急車有料」に関して、全国で関心が高いようだ。
約30年、救急医療の現場にいた私の個人的な考えを述べたい。
結論として、私は「軽症者」に対する救急車有料化に賛成である。そもそも、有料化に関しては、各自治体に任せるのではなく、政府が率先して決めて欲しかったと思ってきた。
まず、「軽症」というものは、入院が必要なく帰宅となった患者さんの事を意味し、「中等症」以上の場合は、入院となった患者さんを意味する。
コロナ禍以前から全国的に問題になっていたのだが、日本の救急車は無料で搬送する事になっているので、明らかにタクシー代わりに利用する者が増えており、「軽症者」は搬送全体の約半数を占めている。
救急車1回の搬送で、約45000円もの国民の税金を使っている。税金を納めているから自由に救急車を使っていいというものではない。救急車とは無縁の者の税金も使われているのである。
ちなみに国外に目を向けると、多くの先進国では有料となっており、無料の国ではやはり日本と同様の安易な利用が問題となっている。
日本も有料化を勧めないと、救急医療の現場は既に疲弊しているし、いわゆる「たらい回し」も発生してしまう。
また、時間外受診の診察料を増やして、救急外来のコンビニ化を防ぐことも同様である。
ここで問題が発生する。
それは、「救急車が必要な軽症者」からも徴取すべきなのか?という事である。
事例を挙げると、尿管結石による側腹部~腰痛症状。人によっては気絶するほど強い痛みを発症する者もいる。だが、救急搬送後、痛みのコントロールがつけば、必ずしも入院は必要ない。
また、真夏の熱中症症状も、病院で点滴をすれば大抵入院は必要ない。
交通事故の場合、搬送後X線やCT検査をしなければ入院が必要なのかわからない場合もある。
・・・と、このように事例を挙げると、いくらでも「救急車が必要な軽症者」は出てきてしまう。これを細かく分類するのは、かなり至難の業と言っていいだろう。
個人的な考えとしては、「軽症」は全て徴取する、そのように線引きをしないと救急医療の現場は間違いなく混乱する。
ずっと以前から思っていたのだが、どのような症状があった場合に救急車を要請すべきなのかを、国民に周知させるべきであった。下に救急車が必要な症状の画像を添付したので、じっくりと見て欲しい。
では、これ以外にも救急車を要請すべきか迷った場合、どうすればいいのか?
これは「救急安心センター #7119」に電話してほしい。医療従事者が相談にのってくれる。翌日受診でも可能かどうかも判断してくれる。
ちなみに相談の結果、救急車が必要と判断された事例は、約1割程度との事だった。
ただし、「救急安心センター」が設置されている地域は、全国の24地域に過ぎない。一刻も早く全国に設置して、一般人からの相談に応じて欲しいものである。
また、電話による訴えだけでは、応対してくれた者へ重症感が伝わらず、結果的に救急搬送されば良かったという事例は必ず発生する。そういう事例が発生しても、応対してくれた者を法律で守って欲しい。
皆さまには、救急車の適正使用と時間外受診の適正使用ご協力をいただきたいと思う。