肥満や2型糖尿病を含めた生活習慣病を改善するために、BMIや体脂肪率を適正にコントロールすると、寿命も延ばせることは科学的に分かっています。
ですが世の中忙しいのか、早く結果を求めようとする人が多く、短期間のダイエットを望みます。
そのような人々のニーズに応えようと、短期間で痩せられるダイエットが宣伝されて注目を集めます。
例えばライザップのように、糖質制限と運動を組み合わせた方法は短期的には効果があります。
ですがCMに起用された有名人は、その後かなりの割合でリバウンドをしています。中には、過度な食事制限に我慢できず、結局CMに起用すらされなかった有名人もいます。
また以前は、一般の高齢者もCMに出ていましたが、最近は全く出てきません。何があったんでしょうね・・・。
個人的な感想として、あのCMは画像編集しているのでは?と思う事があります。
明らかな肥満体から、たった2ヶ月で細マッチョの身体になったとしたら、伸びていた皮膚はすぐに縮まらないので、「妊娠線」のようなものができるのでは?と思います。
上に<健康寿命を縮める5大悪習慣>を提示しました。「運動不足」も肥満に含まれますし、細かく分けると、アルコールとか喫煙など、もっと増やすことはできますが。
この中で、「②ダイエット」「⑤肥満」という正反対のワードが出てきます。これはどういう事か?
体重が短期間で大きく変動するダイエットは「ヨーヨーダイエット」と呼ばれています。
体重が急激な増加であっても減少であっても、身体に悪い影響を与えるということが分かっています。
「ヨーヨーダイエット」が起こるのには、「ホメオスタシス」という身体の機能も関係してきます。
これは、身体に少量のエネルギーしか入ってこない場合、エネルギー消費を減少させて身体を維持する機能の事です。
食事によるダイエットを行なうと、最初の頃は順調に体重が減ります。
ですが、もっと痩せたいのにある時期になると体重がなかなか減らなくなる事があるのは、多くの方々が経験済みのはずです。
減量中に「ホメオスタシス」の機能が働くと、食事の量にともなってエネルギー消費量も減少するので、それ以上体重が減らなくなります。
その場合、ダイエットをあきらめて食事の量を元に戻しても、エネルギー消費が以前より減少しているので、体脂肪が付きやすくなります。
また脳に作用して食欲に影響する「レプチン」の働きも原因です。
レプチンは脂肪細胞で作られ、太って脂肪細胞が大きくなると分泌量が多くなります。反対に、痩せている場合は分泌量が少なくなり、脳は「栄養が不足している」と判断して食欲が増進するのです。
体重を急激に減らした場合、レプチンの分泌量も急速に減り、脳がそれを感知して食欲を増進させるのでリバウンドを起こしやすくなります。
ここの枠は、少々内容が難しかったかもしれません。
さて、「ヨーヨーダイエット」は、具体的に、身体にどのような影響を及ぼすのでしょうか?。
それを次から示していきます。
4つ論文を提示しますが、軽く流し読みされてください。
2016年11月15日:ASA(American Heart Assosiation)より
『Yo-Yo dieting dangerous even if you’re not overweight』
米国のブラウン大学附属病院の研究チームによる調査。
体重データをもとに「安定」「増加」「減少」「増減を繰り返す」の4つに分類しました。
#結論
中年期に肥満や過体重になると、心臓病で死亡する危険性が上昇しますが、その原因には2つのタイプがあります。
(1)冠状動脈性心疾患(いわゆる心筋梗塞や狭心症)
心臓へ血液を送っている血管が脂肪などによってブロックされ血流が減少する。
(2)不整脈(心室細動、心室粗動)
心臓の電気システムが突然動作を停止し心臓死を迎えるタイプ。
2017年4月16日:NEJM(New England Journal of Medicine)より
『Body-Weight Fluctuations and Outcomes in Coronary Disease』
ニューヨーク大学医療センターの研究チームによる調査。
コレステロール降下薬のスタチンの効果を検討した臨床試験に参加した患者9509人を対象に健康状態と体重の変化を4年間以上にわたって追跡し、「ヨーヨーダイエット」の影響を調べました。
#結果
・極端な体重変動がみられる人は、心血管疾患や心筋梗塞、狭心症、心不全・心停止、血行再建術の必要性や、閉塞性動脈硬化症、脳卒中を起こしやすい事が分かりました。
・体重変動幅が最も大きい人では、変動幅が最も小さい人に比べて、死亡リスクは24%、心筋梗塞リスクは17%、脳卒中リスクは36%それぞれ上昇しました。
2015年10月21日:OSU(Oregon State Univercity)
『Gene therapy could aid weight loss without affecting bone loss, new research finds』
米国オレゴン州立大学の研究。
迅速で顕著な減量は、骨量や筋肉の減少の引き金にもなります。
骨量の低下は、特に高齢者で骨折リスクを高め、生活の質に重大な影響を及ぼす可能性があります。
「ヨーヨーダイエット」で問題になりやすい事は、一度骨量を減らすとその後体重が増えても減った骨量は戻らない場合が多い事です。
また、ダイエット目的で食事制限だけを行ない運動をしないと、脂肪だけでなく筋肉も減ってしまいます。
摂取カロリーは減らしても、身体を構成するタンパク質や、カルシウムを含めた栄養素はしっかりとる必要があります。
2016年11月24日:Weizmann Institute日
『Gut Microbes Contribute to Recurrent “Yo-Yo” Obesity』
イスラエルのワイツマン科学研究所の研究。
「ヨーヨーダイエット」が起こる背景には、腸内フローラの乱れもある事が、明らかになりました。
研究チームは、肥満のマウスに減量をさせると、腸内細菌叢が変化することを突き止めました。
具体的にはフラボノイド(野菜や果物などの植物に含まれている色素、苦味成分)とうポリフェノールですが、これは腸内細菌叢によって分解され、身体に吸収されます。
減量をするとこの腸内細菌叢が減り、フラボノイドを吸収しにくくなります。
「ヨーヨーダイエット」のためにフラボノイドが低濃度になると、脂肪由来のエネルギー消費が妨げられ、高カロリー食によって余分な脂肪が蓄積するのです。
以上、4つの論文で長々と説明してきましたが、「ヨーヨーダイエット」は心臓病、脳血管疾患に影響を及ぼすだけでなく、腸内環境の乱れや、骨・筋肉へも影響するという結果が報告されました
日本肥満学会は、肥満やメタボリックシンドロームの対策として、食生活の改善と運動の増加をはかり、まずは3kgの減量、3cmのへそ周りの短縮を実現することを提案しています。
また、米国心臓病学会(AHA)によると、「ヨーヨーダイエット」を防ぐためには、体重をゆっくり減らしていく事を勧めております。
目安として1か月に0.5~1kgずつ減らしていくと、リバウンドが起こりにくくなります。3ヶ月で1.5~3kg、1年では5kg程度のペースです。
AHAは無理なく減量を成功させるために、次の7つを提唱しています。
短期間のダイエット、すなわち「ヨーヨーダイエット」は、どうしても無理をするため、結果リバウンドする人も多く、今回様々な研究結果で示したように、基本的な栄養を摂りながらゆっくりと(最低でも1年かけて)ダイエットする必要があります。
そして、減量した体重を長期間にわたって維持することが重要です。生涯にわたって適切な体重を保つために必要なのは、健康的な生活習慣を続ける事です。
(画像の一部はネットより拝借)