★重要なのは、他人の痛みが分かること。音楽をやるということは、そういったことにも通じると思います。10年位前だったか、大阪に行った時に、司馬さんの主治医だったという先生にたまたまお会いしたことがあり、司馬さんや奥様のお話も伺ったことがありました。以下は、司馬遼太郎さんの言葉から。(10数年前の小学校6年生の国語の教科書より、一部抜粋。)

 

■■■ 「21世紀に生きる君たちへ」

------ 自然物としての人間は、決して孤立して生きられるようにはつくられていない。このため、助け合う、ということが、人間にとって、大きな道徳になっている。助け合うという気持ちや行動のもとのもとは、いたわりという感情である。 他人の痛みを感じることと言ってもいい。やさしさと、言いかえてもいい。「いたわり」「他人の痛みを感じること」「やさしさ」 みな似たような言葉である。この三つの言葉は、もともと一つの根から出ているものである。根といっても、本能ではない。だから、私たちは訓練をしてそれを身につけねばならないのである。この根っこの感情が、自己の中でしっかり根づいていけば、他民族へのいたわりという気持ちもわき出てくる。君たちさえ、そういう自己をつくっていけば、21世紀は人類が仲よしで暮らせる時代になるのにちがいない。