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出水市に着くと会場は駅から20分ほどのシティホテルだった。
「人生相談会」と銘打たれた開催を翌日に控えて、前夜は市内の銭湯でゆっくりくつろいだ。
銭湯といっても東京の銭湯のイメージとまるで違い、だだっ広い浴場に温泉の湯質で、すっかり飛行機での疲れも取れ、いよいよ明日から地獄の8日間が始まるのかと、気を引き締めて宿に戻った。
翌朝会場に行くと、前回同様ここでも異様な光景が待っていた。
受付開始30分前だというのに、恐らく親子なのであろう50年輩の気品を感じさせる女性と、20歳を越えたばかりかと思われるこれもまた器量の良い女性が2人連れ添って立っていた。
受付開始と共に受付係の女性に伴われその二人が入室して来た。
「今日はどんな御相談でしょう」と私。
聞けば麓千代子というその娘が鬱病に悩んでいるという。
高校時代に発病し、次第に病状が悪化し、この数年すっかり引きこもりになってしまい、半年前には風呂場でカミソリでの自傷行為に及んだという。
医者にもかかっているが、本人が折込チラシを見てどうしても相談に来たいというので来たという。
「お医者さんに長年かかっていても自分では良くなる気配が感じられないんです。そんな私のこれからの人生を占って貰いたくて」と千代子。
ひと通り生活の様子など聞いたところで、「分かりました、それでは卦をたててみましょう。」
と言って筮竹を振い卦をたてて説明を施す。
研修で教えられた人生論など交え30分ほど説明した上で、「どうです、今の悪い状態から抜け出すために一つ御祈願を受けてみては。
2年間に渡り私と本部と千代子さん並びにお母さんと、3者が力を合わせ悪い因縁を断ち切って新しい人生に向かうんです。」
「その御祈願ていうの、 どの位費用かかるんです?」と奥さん。
「2年祈願ということだと72万円ですね。」
「是非お願いします、それで良くなりそうなので」と娘の千代子。
「今回はもう少し様子見させて下さい」と奥さん。
「いやだ、いやだ、どうしても受けたい。さっきから話聞いていて、ほんとにこの先生の言うとおりなんだから、目から鱗の様な気持ちなんだから」
「でもね、せっかくお医者さんの薬の方も最近効き出したようなんだから、もう少し様子見ましょう。」と母親。
結局親子で言い争いのようになり、埒も開かないので「今回は家へ帰られてゆっくり考えてみたらよろしいでしょう。これから8日間ほどここにいますから、いつでも相談に来てください。」と言って引き取ってもらった。(続)
