【強豪校特集13】矢板中央(栃木県) | 高校サッカーをもっと!

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矢板中央(栃木県)

 

【チームデータ】 

(2020年データ)

 

場所   : 栃木県矢板市

創部   : 1971

員数  : 175人

OB    : 星キョーワァン(松本)、湯澤洋介(鳥栖)、富山貴光(北九州)、山越康平(大宮)、川上優樹(群馬)、人見拓哉(琉球)

監督   : 髙橋健二

実績   : 選手権全国大会11回出場 

        (最高成績 2009・2017・2019・2020年 ベスト4)

        インターハイ全国9回出場

        (最高成績 2010・2014年 ベスト16)


【近3年成績】

2018年 新人戦優勝、ンターハイ県予選優勝、選手権県大会優勝、プリンスリーグ関東1位

2019年 新人戦優勝、ンターハイ県予選優勝、選手権県大会優勝、プリンスリーグ関東10位

2020年 選手権県大会優勝、プリンスリーグ関東5位

 

 

 

【歴史】

近10年で全国的に見ても、最も実績と知名度を上昇させたチームの一つ。

創部は1971年と比較的古い。

創部当時は、栃木県には全国区の強豪校は存在しておらず、宇都宮学園や宇都宮工業、今市ら有力校がしのぎをけずる状態だった。

 

1994年には現監督の高橋健二氏が監督就任。

当時の部員は13名。

素行もよいとは言えず、真面目に活動もしていない状態で、どうにか県大会の1回戦を勝てるかどいうかという弱小校だった。

 

しかしそこから、高橋監督の熱量を持った指導が矢板中央を変えていく。

 

2004年にはインターハイ全国大会、選手権全国大会へ初出場

当時は栃木県のライパイルは、1950年代から強豪とした君臨し続ける伝統校・真岡と、1990年代半ばから台頭した佐野日大

これら県内ライバルと切磋琢磨しながら、矢板中央も成長していった。

 

2009年には選手権全国ベスト4

栃木県勢として、24年ぶりの快挙を達成した。

ここにきて、栃木県は矢板中央と佐野日大の2強による一騎打ちの様相を呈してくる。

 

2015年に高校サッカー界において、エポックメイキング的な出来事が起こる。

当時、全国での活躍により、県外からの越境入学希望者が急増。

しかし、学校の寮の問題で、受け入れ数に限度があったため、高橋監督は学校にサッカー部専用寮の新設を要望するも、実現しなかった。

そこで、高橋監督はあきらめず、外部の人間にも相談し、その結果、サッカー部を運営するための会社を立ち上げた。

その会社が土地の確保や寮の建設と運営を行うという、前代未聞のプロジェクトが立ち上がり、2015年1に一般社団法人矢板セントラルスポーツクラブが誕生。

銀行からの融資を受け、16年にはサッカー部専用の新しい寮が完成。

以後、積極的に県外からの優秀な選手を受け入れ、よりチーム力はアップしていった。

 

この法人化のもう一つのメリットは、スタッフの充実

学校職員としてスタッフを雇うことは、学校の経営的に難しいが、この新たに立ち上げた法人がコーチングスタッフを雇うという方法で、解決した。

2016年は中学生世代の下部組織・矢板SCを創設。

スタッフは、高校や矢板SCで指導をしながら、寮監を務める形で雇用を生み出す体制ができ上がった。

このスタッフの多くは矢板中央のOB

一般的に、指導者を志す若手スタッフの中には、経済的な理由で断念せざるを得ないということも多いが、矢板中央は若手スタッフを福利厚生が整った雇用形態に組み入れることで、未来を担う若手コーチの育成とモチベーションアップ、そしてスタッフ体制の充実化を図った。

 

2017年には再び選手権全国ベスト4へ進出。

この頃から栃木県では矢板中央の1強化がはっきりしてきている。

 

サッカーの特徴は「赤い壁」と称される堅守とキックアンドラッシュ

 

 

【2021年展望】

栃木県内での存在感はやはり圧倒的だ。

2018~2019年は県内3冠

選手権県予選では4連覇中

近3年で取りこぼしたのは、20年の新人戦だけ。

 

全国的にみても全国屈指の強豪校だ。

2017年 選手権全国ベスト4

2018年 選手権全国ベスト8

2019年 選手権全国ベスト4

2020年 選手権全国ベスト4

毎年、選手が入れ替わる高校サッカーで、このハイレベルの安定した成績は見事!

下部組織からの一貫育成と選手層の循環がうまく機能している証拠だろう。

 

残る課題は準決勝の壁を超えることだけだ。

選手権決勝に進めば栃木県勢としては、57年ぶり、

優勝すれば72年ぶりの快挙となる。

 

去年からの選手が数人残った今年はまさに快挙の年となる可能性は十分だ。

 

また、GK藤井やDF島崎らを中心に、矢板中央の代名詞ともいえる「堅守」は健在。

 

の徹底して守備を固め、PK戦もいとわない矢板中央のサッカーは、つまらないと評されることも少なくない。ロングボールの多用するキックアンドラッシュの攻撃も、その理由のひとつだろう。

ポゼッションサッカーが主流となりつつある現代の高校サッカー界にあっては、ある意味、前時代的で、異端ともいえる。

 

だが、これほどまでにチームのストロングポイントを徹底的に磨き上げ、お家芸と呼ばれるまでに昇華させた、スタッフや選手たちの努力は、賞賛に値する。

現役の部員はもちろん、そのスタイルに共感して入学してくる選手も多いだろう。

少年たちが自らのサッカーの理想を携えて、矢板中央のサッカーに共感して、その門をたたき、3年間をかけて、そのストロングポイントを磨き上げるという、一途さと純粋さは素晴らしいと個人的には思う。

 

何より、守備に徹しさえすれば結果が残せるほど、サッカーは簡単なものではない。矢板中央の最大の武器が堅守であることは確かだが、勝負どころを見逃さず、確実にロースコアゲームを勝利につなげる勝負強さや執念も特筆すべきことだ。

 

また、今、高橋監督が力を入れていることが地域貢献だそうだ。

高橋監督は他の競技も巻き込み、バスケットボール教室や幼児向けの体操教室を運営するなど、サッカー部の枠を超えた総合型スポーツクラブを目指している。

また、サッカー日本代表の長友佑都が代表を務める「YUTO NAGATOMO Football Academy」の矢板校スタッフとして、矢板中央のコーチ陣が働くことで、さらなる雇用を生み出すだけではなく、地元の子どもたちの成長につながっていく。

 

矢板セントラルスポーツクラブは多くのスタッフの雇用を生み出し、スポーツで地域貢献を行う環境を整えつつある。

矢板市の人口は3万5千人。

プロスポーツクラブが存在しない地方の小都市において、高校主導の総合型スポーツクラブが地域スポーツを支えるというこの取り組みは、新たなモデルケースとして、全国でも注目されている

 

2020年高校サッカー選手権全国大会の準決勝の直前。

矢板中央のチームに、地元・矢板市の人々からの動画メッセージが届いた。

そこには、地元の商店や市役所、住民など老若男さまざまな人々からの応援メッセージが詰まっていた。

それを見た高橋監督は感激し、声を震わせながら、「嬉しいね。力が出るね。これで絶対負けられないね」と選手たちに語ったという。

 

高橋監督が着任し、情熱をかけて「サッカーのまち矢板」「スポーツのまち矢板」の夢を追い続けて20数年、地元・矢板市民の歓喜に包まれながら、その夢が大輪の花を咲かす瞬間は、もう間もなくかもしれない。

 

 

【注目選手】

 

・藤井 陽登(GK・3年)

 1年生時から選手権全国で正GKとして出場した守護神

 20年は2年生ながら高校選抜にも選出。

 バネとスピードが特徴の高い身体能力を生かしたシュートストップは全国ナンバーワンの呼び声も。

 大舞台でも物おじしないメンタリティと、強力なロングキックも魅力的。、

 

・島崎 勝也(DF・3年)

 20年選手権全国で2年生ながらCBとして出場したディフェンスリーダー

 長身を生かした空中戦の攻守には絶対的な強さを誇る

 飛距離のあるロングスローで攻撃面でも重要な役割を持つ

 

・大畑 凛生(MF・3年)

 20年選手権全国で2年生ながら出場したボランチ

 20年は2年生ながら高校選抜候補にも選出。

 豊富な運動量と球際の強さで中盤を支配する要

 ハードワークと献身性も光る

 

・星 景虎(MF・3年)

 1年生時から全国を経験しているエースストライカー

 鋭い得点感覚と強烈なシュートが持ち味。

 スピード感のあるサイド攻撃も注目だ。

 

 

 

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