地中の星:門井慶喜 | 図書館司書の読書日記

図書館司書の読書日記

こちらは主に備忘録的読書日記と映画の感想を記しています。
著作権法上、ネタばれしないように書いているので味気ないとは思いますが、こんな本があるのだと興味を持っていただけたら幸いです。


 日常で利用することはありませんが、都会に行くと乗る地下鉄。

 最初に地下鉄を東京につくろうとした人の物語です。

 すでに満州鉄道まであって地上を走る電車の経験があった主人公。

 ですが組織に属す感じが苦手だったようで、当時のエリート街道から外れていきます。

 それでもなお「この国の初めて」を生み出したいという気持ちから「地下鉄」をつくることを思い立ちます。

 そのためにまず行ったのは「交通量調査」。

 黒豆と白豆を使って今でいうカウンターのようにしてリサーチします。

 そしてその結果を持って大隈重信に会いに行く。

 東京の地盤は弱いとの思い込みから、地下鉄に現実味を感じない人を説得していく様は、まだまだ新しいことがやれるという熱意を感じさせます。

 資本金のために澁澤栄一に面談したり、とにかくあの時代の凄い人たちがボコボコ出てきます。

 一朝一夕に成る事業ではないので、関係者の死もあります。

 関東大震災を挟んで成された事業の凄さが伝わってきました。

 そして言い出しっぺの主人公だけでなく、工事に携わった人たちの思いの強さ、仕事にかける矜持など、熱い作品です。