帝大出のエリートで、英国留学までしている漱石に不遇をかこっていた時代があるなんて目から鱗でした。
「坊ちゃん」などで周知のことですが、教師としての漱石の収入は、そんなに多いものではなく倹しい生活であったとか。
また、当時は漢文や候文が使われることも多く、言文一致とはいかず、美文調やデスマス調など、作家たちもその文体について試行錯誤していた時代。
漱石がとある少女との交流の中で、新しい文体を見つけ出し、作家へと変貌していく過程の中で起きた不幸。
少女の自殺が漱石の内面の問題とリンクしてこの「大いに悩む」に繋がっているようです。
印税についてのくだりなど、コラムのような挿話もあり読みやすい一冊です。