一人で弱くても、二人では強くなりましょう。
だいわ文庫 大島みち子・河野実『愛と死をみつめて』
164ページ


人は死の恐怖と向き合う人にどれだけ寄り添えるのだろう
か。どれだけ心の支えになれるだろうか。
人は愛する人とどこまで痛みや恐れや悲しみを共有できる
のだろうか。

私はあのとき、まこに手紙を出すことで自分の生命をつな
ごうとしていたのよ。わかりますか?(102ページ)


東京と大阪に別々に住んでいて、手紙だけが二人の心を
結ぶ唯一の方法かと思うと泣けてくる。TELもダメ、会い
に行ってもダメとなれば、まこはどうすればいいんだ。
(112ページ)


死をロマンチックに空想した時期はすぎました。この手紙
を最後に、悲しませるような「死」は使いますまい。また
使う必要もないと思います。(128ページ)


多くの人が言うように、生きることと死ぬことが同義ならば、
二人の心は共有されたのだろうか。私はわからない。

この本は読者に寄り添ってはくれない。完全に完結された愛
の世界だと思う。他者の進入を頑なに拒む何かがある。
でも、そのことで反対に読者は救われている。

「純愛」という言葉は、このノンフィクションの前では、
もはや言葉として意味がないように思える。この本は、のち
の不治の病による「純愛もの」を生んだ。しかしそんなこと
はどうでもよい。私はこの本を前にただ呆然とするのみである。

私は思う。死から逃れることできないのなら、せめて死から
逃げることは許されないのか。人は自分の死と「正しく」
向き合わなければいけないのだろうか。

私は二人のように強い人間になりたいと願う。

愛と死をみつめて ポケット版 (だいわ文庫)/大島みち子

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