新春譜 | 百夜百冊

百夜百冊

読んだ本についての。徒然。

夜は漆黒の静寂を内に湛え、ゆっくり世界を沈めてゆく。

静寂は、至高の音楽であり。
沈黙は、神がもたらす至上の啓示となる。

獣は狂気の荒野を駆け、屍衣に守られし乙女を切り裂き。
愛は泥濘の底にある密やかな密室で、紅蓮の焔を狂い咲かす。

夜の闇。
それは貪欲に光を食い尽くし、空を幾重にも覆っていくだろう。
幾千もの絶望が銀の刃となり、空の闇を切り裂き。
幾万もの希望が地上に灯りし、光を喰らい尽くす。

いまこそ。
幾億を数える世界の終焉がゆうるりと、狂気の王座を降りてゆき。
いまこそ。
幾千億をかぞえる世界の始まりが、痛みと苦悩からなる紅蓮の花で王座を飾る。

静寂は、至高の音楽であり。
沈黙は、神がもたらす至上の啓示となる。

いま、はじまりは沈黙という深い絶叫とともに、狂った花を開かせる。