このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、
社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で分かりやすくお伝えします。
<総務部長>
物価上昇等で当社も従業員の給与を見直しました。特に若手層を中心に引き上げたのですが、それに伴って社会保険料の負担が大きくなることを心配しています。
<社労士>
なるほど。確かに賃上げしたことで社会保険の標準報酬月額が高くなり、結果として社会保険料の負担も増えたという話はよく聞きますね。
<総務部長>
特に当社は春から夏にかけて繁忙期という従業員が多く、残業代等で、その時期は給与が高くなる傾向があります。従業員からは、10月から社会保険料がすごく高くなったと総務にクレームが来たりします。
<社労士>
それは大変ですね。今のお話は、算定基礎届で決定される標準報酬月額が高いということですよね。ところで、その繁忙期は例年あるものなのですか?
<総務部長>
はい。春から夏にかけては毎年忙しくしています。
<社労士>
その状況であれば、社会保険の算定基礎で「年間平均」を用いることができるかもしれません。4月から6月の給与の平均額で算出する標準報酬月額と、前年7月から当年6月までの1年間の給与の平均額で算出する標準報酬月額の間に2等級以上の差があるときに、後者の標準報酬月額を算定基礎に用いることができるというものです。
<総務部長>
以前、お聞きしたことがありますね。当時は繁閑の差がそこまで大きくなかったので、2 等級まで差が生じなかったのですが、再度、確認してみてもよいかもしれません。
<社労士>
そうですね。他にも2等級以上の差が「業務の性質上例年発生することが見込まれること」が必要ですが、ここは見込まれると言えそうですね。
<総務部長>
当てはまると思います。あとは、本人の同意が必要でしたよね?
<社労士>
はい、そうです。対象となる従業員から書面での同意を取ってもらう必要があります。
<総務部長>
従業員からは「社会保険料の負担について不公平感がある」という声も上がっていますので、おそらく同意は取れると思います。いずれにしても一度、説明してみますね。
<社労士>
よろしくお願いいたします。
<ONE POINT>
① 社会保険の算定基礎は4月から6月の給与の平均で算出するほか、前年7月から当年6月までの 1年間の給与の平均で算出する「年間平均」を用いることができる。
② 年間平均を用いるときには、従業員ごとに同意を取る必要がある。