このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で分かりやすくお伝えします。
<総務部長>
子どもを扶養している従業員に、家族手当を支給していますが、従業員から、家族手当が支給されていないと思うという申出があり、調べたところ、確かに支給を漏らしていました。
<社労士>
そうでしたか。何ヶ月分、支給されていなかったのですか?
<総務部長>
3ヶ月分、忘れていました。1ヶ月当たり1万円ですので、今月まとめて4万円支給しました。家族手当は固定的賃金のため、月額変更(随時改定)に該当するかと思うのですが、今月支給したので、今月を変動があった月(変動月)とカウントするのでしょうか。
<社労士>
社会保険の標準報酬月額は、支給した給与をもとに決定・改定することが基本ですが、給与計算の誤りや本人からの手当の申請遅れにより、さかのぼって手当を支給したときには、支給した月ではなく本来支給すべき月の給与として算入することになっています。つまり、本来支給すべき月が変動月となります。
<総務部長>
なるほど。そうなると3ヶ月前からの給与に各月1万円を加算して、3ヶ月前を変動月と考えるのですね。
<社労士>
はい、その通りです。今月分については、実際支給した4万円ではなく、1万円の支給として扱うことになります。
<総務部長>
ありがとうございます。ふと気になったのですが、当社では10月を昇給月としているのですが、事務処理上の都合により、11月になってから昇給をし、10月の昇給額は11月にまとめて支給したのですが、これも10月昇給として月額変更を確認する必要があるのでしょうか。
<社労士>
いいえ。先ほどの手当の支給漏れとは異なり、さかのぼって昇給があり、昇給差額が支給された場合は、差額が支給された月を変動月として、月額変更を確認します。
<総務部長>
そのような違いがあるのですね。一番重要なのは、支給漏れが発生しないように対応することだと思うのですが、万が一発生した場合には、社会保険の取扱いを間違えないように注意します。
<ONE POINT>
① 給与計算の誤りや本人からの申請遅れにより手当をさかのぼって支給したときは、本来支給される月にさかのぼって月額変更を確認する。
② さかのぼって昇給が決定されたときは、実際に支給された月を起算に月額変更を確認する。