〈大豆100粒運動の意志〉
(大豆100粒運動を支える会会長 辰巳芳子)
生命は、もろいものです。
とりわけ、幼い生命は
大変傷つきやすいものです。
それは、
どれ程見守っても十分とは言えぬほどのものです。
この命を大切に致したく、
手はじめに、
この国の大豆を再興することから
手をつけました。
方法の第一は、
学童が
掌一杯、約100粒の大豆を播き、
その生育を観察・記録し、
収穫を学校で揃って食べることを
奨励・拡大することです。
第二は、
各風土特質ある大豆、
即ち、
在来品種とその食方法を調査・発見し、
復活・振興をうながし、援助することです。
これは誰にとっても、
興味つきぬ命題で、
生き甲斐にさえつながりましょう。
第三は、
大豆再興が、
地域の着実な「底力」となるよう、
情報交換し、「合力」することです。”
(季刊『道』2007年夏号/№153、63頁)
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映画『天のしずく 辰巳芳子"いのちのスープ"』
予告編
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「辰巳芳子 生き抜くための稽古〈第3回〉
――自分だけ安全に食べていくのでは、
次の世代の子供たちに、申し訳が立たない――」
(季刊『道』〈2007年夏号/№153〉より)
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「子供たちが学校で食べる豆だけでも
汚れていない豆にしてあげたい」
料理家・辰巳芳子先生の思いは、
「大豆100粒運動」となり、日本各地でその根を広げています。
(引用者中略)
大豆がどれほど大事であるかということを
ご存知ない方はないと思います。
食べ物として人に与える力のこともご存知だし、
日本の国でできる大豆がどれほど少ないかということも
自給率をあげなければならないということもご存知です。
ただその理由については、
少し弱いところはあるかもしれません。
でも、「つくらなければならない」ということは、
皆さんよくわかっていらっしゃる。
ただ「やるか、やらないか」だけが、
私たちの課題だと思います。
「よい食材を伝える会」では、
皆さんの食に対する意識改革を起こそうという、
そういう仕事をしてくださっています。
わたしは本当にそのお仕事を尊敬しておりますし、
感謝いたしております。
しかし、この「意識改革」というものをじっと見ておりますと、
なかなか実態が変わらないのです。
つまり、本当に実態を愛している人から、
ものづくりの魂を受け継がないと、
知っているだけでは何も実態を変えることはできないのです。
それで、私は
誰でもできると考えた「大豆をつくる」ということに、
まず手をつけました。
しかし、大人社会でやりますと、
いろいろなわずらわしいことが起こるのではないか、
これは
外国が足をひっぱるかも知れないと考えました。
そこで私は
学童に播いてもらうことにしたのです。
これが、
子供たちに100粒の豆を播いてもらおうと考えた第一でございました。
そして行き着くところは学校給食で食べるお味噌、
それが必ず国産の豆でつくったお味噌でありますように
という願いなのです。
この大豆の運動には
欲がからんでは駄目なのです。
無私な気持ちでしてくださらないと。
無私になってやっていただきたい勘所は、
やはり命の問題です。
国産の豆でないと、「命が守りきれない」という、
そこでございます。
なぜかと申しますと、
なぜを命を守るべきものを食べなければならないか
ということから始まるのです。
それは、なぜ人は食べるのかと言いますと、
呼吸と等しく、
「食べる」ということは
命の仕組みに組み込まれているからです。
そしてその仕組みに組み込まれているからです。
そしてその仕組みは、
拒絶するものを食べますと、命は損なわれるのです。
これは食物だけではございません。
放射能、それから遺伝子組み換え、BSE、みんな、
この仕組みを受け入れきれないものなのです。
特に放射能にいたっては、許容量はございません。
今日はそのことも皆さんの頭の頭に入れて帰っていただきたい。
大豆のことだけでなく、そういう問題は、
すべて食の窓から――非常に小さな日常的な窓に見えても――
全部見えるのです。
その窓から眺めた風景は、
放射能、BSEの問題も決して片付いていない。
それから遺伝子組み換えも本当の方向性ではない。
ポストハーベストは
BSEの陰に隠れて影を潜めて、今誰も言わない。
どの薬をどれだけ使ったか問題にしてくださる方がない。
それから食品添加物のこともあるでしょう。
命の仕組みが拒絶するものは、
やはりなんとしてでも避けて、
食べても良いもの、必ず命を養うはずのもので生きていこう、
生かしてあげようとしなければなりません。
これは大人の、最小で、最大の義務です。
大人が、
あなたの命を守るために、
これだけ骨を折っているのよ、一生懸命やっているのよ
というところを証明するのに
いちばん簡単なのは、
正しい食べ物を子供に与えることです。
チェルノブイリの事故のあとで、
あの地域のお母さんが、
その放射能でよごれたお乳をのむわが子の姿を見て、
悲痛な顔をしていたのです。
あの悲しい顔は、
私どもも胸のなかに宿さなければならないと思います。
経済優先で、
その顔が汚れてしまってはなりません。
私は
あの顔は
忘れません。
〈自主性というものは、
手足を使わない限り生まれません〉
学校の豆撒きは
増産よりも学童の内発力の養成ですね。
この100粒運動は、
ただ大豆を播いて大豆を増産するだけに留まりません。
子供がそれ播いた場合は、育成記録をつくってください
と言っております。
それは単なる記録でなく、
そこには子供の気持ちもこもっている。
詩もつくりましたし、
その死から音楽のつくりました。
音楽ができてからオペレッタもやったんですね。
観察というものは、動くものは楽です。
動物も昆虫も動くし、いろいろ声を出しますし、楽です。
ところが
植物の観察は、
自分自身にエンジンをかけないとできない。
それを小学校2年生くらいから、
自分にエンジンをかけるコツを覚える。
そのことで、
その子の一生は幸せよ。
今そういう自主性を育てる機会が少ない。
自主性というものは、
手足を使わないかぎり、生まれません。
小学校2年くらいのカリキュラムに
大豆を育てようとのがあるんです。
ところが3年になると
他の観察などにカリキュラムが変わってしまいます。
それは非常に惜しいことなんです。
継続観察せねばなりません。
そういたしますと、自分の見る眼が、
1年1年成長していったことを
子供は把握します。
卒業する時に、
2年生から6年生までの自分の観察記録をもらって卒業する。
大きくなってから繰り返し見て、
自分は何歳の時は、こういう見方ができて、こういう記録ができ、
こういう感想をもつことができた
と考える。
ここに幸せな人間が育つと思う。
いろいろな苦難を乗り越えていく人が育つ。
自分が信じられなければ人は信じられません。
信じるところに希望が育つんですね。
信じることのない、希望のないところに、愛は育たないんです。
今、日本の愛の治力は失われていると思う。
頭から上に生き方が偏り、頭で生きようとし過ぎていると思う。
見聞きしたこと、そのままでは駄目なんですよ。
手足を使い、体を使い、汗水流し、
そこから感じ、考え見たり聞いたりしたことを記録する、
いわゆる概括化していく言葉にしていく。
それで力がつきます。
〈経済力とは、
命を守ったための付録です〉
津久井在来の復興は
非常に意味があると思います。
今〔2007年〕7年目で、(生産高が)3トンになった。
3トンになるまでが大変だったと思います。
皆にわかってもらうまでが大変です。
この地域の小学校の学童に味噌汁を毎日食べさせるには、
大豆を何トンつくったらいいか、
この地域の農業指導をしている方、
具体的に調べてください。
ただ漠然とつくるのではなく、目標を持たなければ。
地域が豊かになるということは
お金じゃないのです。
経済性に寄り眼にならないで、
納豆をつくってください。
そこには必ず、
「これは命を守れるはずの納豆だ」
という、その意識がほしい。
経済力とは、命を守ったための付録だ
と思う観念がほしい。
無私な心で大豆をつくってほしい。
そしてお味噌をつくりましょう。
給食の場の方に、
「日本の大豆でつくったお味噌は高くて、
給食に組み込めません」
なんて、そういうことは
言わせないようにしていただきたい。
〈こういう技術の流失は愚かです〉
ここにお椀があるでしょ、
本当のけやきで、漆が塗ってある。
これは今100円ショップでも買えるのね。
私は250円で温泉場で買った。
あんまり不思議で
これを
漆職人の方に見せました。
「あなたたちがつくったものは何千円もするけど、
こちらが安いのはなぜでしょうか」
と。
「それは中国製だからです」
差はなんだと思います?
たったひとつだけありました。
――口当たりなんです。
お椀を口につけた時の感触だけが違いました。
日本の漆職人が
ろくろまで持って、作り方を中国に教えてしまった。
だから100円で買えるんです。
こういう技術の流出は愚かです。
日本人は
米の原種までアメリカに与えてしましました。
だから日本の米が弱った時に、
アメリカから日本の原種をもらってきて、
米に力をつけなきゃならない。
本当に愚かでしょう。
やっぱり教えすぎです。
この、私のセーターですが、
「中国製のイタリアもの」と、
不思議なことになっているんです(笑)。
だけど本物のイタリア製の着心地はないです。
全部まるうつしに、
決して教えていないですね。
完全に教えていたら
イタリア製の着心地があるはずです。
どこかちゃんと
イタリアはイタリアでなければならないことに
なっているのです。
そのすれすれのところをやらなければ、
皆、賢くならなければやっていかれないですよ。
〈よそから買って食べよう
という考えからは
抜け出さなければなりません。〉
つくった大豆で納豆をつくるでしょう、
それからあとは
おそらく競争になります。
ですから
きなこをつくってヨーロッパに出したら どうですか
と言ったんです。
ヨーロッパには
シリアル(雑穀類をまぜてオートミール風にする)を食べる習慣があるから、
きなこをシリアルなかに加えると
非常に(栄養の)リッチなものになることは、
むこうの人は瞬間的に理解します、
日本人よりも。
日本人は
そういうことを理解しにくいです。
それと、
それを食べこなしていく意志がない。
雑穀を食べていく意志力がなくなっています。
だから、
「遠いまなざし」として、
津久井の大豆は
いつか輸出はいつか輸出できるように、
そこまで育てようと思ってください。
いつか、
このような輸出ができることを願いましょう。
よそから買って食べようという考えからは
抜け出さなければなりません。
自分たちで自分たちのものをつくらなければ、
日本の食糧自給率は
世界で百十一位です。
今〔2007年当時〕
農家の平均年齢は
60歳を割っていて、
跡継ぎもいないでしょう。
早晩、百十一位にいられない
と思います。
これより下がったら、
独立国とは言えません。
いつまでも日本の国に
お金があるとは言えないと思う。
だから
皆でできることは
やらなきゃ駄目ですよ。
どこで引き締めていったらいいか、
それも考えましょう。
やっぱり
つくり出すことですね。
これは食べ物だけのことではありません。”
(「生き抜くための稽古
【第3回】料理家 辰巳芳子」
季刊『道』No.153/2007年夏号、60-63頁)
※太字・下線・色彩での強調は、高樹によるものです。
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菅原文太代表挨拶
@ネオニコチノイドなど
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「蘇る!アフガニスタン大地と暮らしの物語」全編
@明治学院大学(2016.06.21)
【100分辺りから~】
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日本の農業と食の危機
(鈴木宣弘東大教授)
2019.03.23「どうする豊洲、どうなる築地」
〈卸売市場法改定問題〉
三國英實さん
(広島大学名誉教授
/農業・農協問題研究所事務局長)【4/10】
2018.03.14 三國 英實先生
卸売市場法の改定について その2
2018.03.14 三國 英實先生
卸売市場法の改定について その3
公的役割放棄 卸売市場法“骨抜き”
日本海賊TV 2016.06.07 クミチャンネル
中澤誠氏、卸売市場経済文化解説
(5.21築地シンポジウムにて撮影)
築地シンポジウム 2018年6月2日
森山高至(建築エコノミスト)
自由なラジオ 第104回
思想に固執せず
変化に対応することで己を通す。
安全な農産物で
社会のしくみを変える男の哲学とは?
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「食料自給できない国を想像できるか?
それは国際的圧力と危険に晒される国だ」
2001年7月27日ジョージ・ブッシュJr.大統領(当時)
「将来の農家への大統領の意見」
20190423 UPLAN
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世界の貿易体制はどこへ向かうのか?
〜TPP11/日欧EPA/RCEPそしてWTOの課題〜
20190517 UPLAN G20サミットを持続させるな!
メディアが絶対に報じない!
トランプが転覆もくろむ
ベネズエラ危機の正体
by 勝俣 誠、桜井均、新藤通弘、
西谷修、清宮美稚子
2019 02 21
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‟ 新興諸国・地域の工業生産への組み入れと労働力の成長が
資本の国際化の特徴である。
この過程から、
新たな国際分業(NIDL)が台頭し、
(ラテンアメリカにとって)
新たな輸出志向と労働力への民衆の大量の組み入れが生ずる。
彼らの孤立と自立が掘り崩されるにつれて、
彼らは、
自給が呪詛のように見えるシステムにおける礎石になる。
低賃金労働者の単なる生存のための財の生産は、
豊かな市場向けの生産ほど収益のあがるものではない。
こうして、
人々が他人による生産に依存するようになるにつれて、
彼らは、
より脆弱になる。
労働者に販売することが儲かるのでない限り、
その財は生産されないだろう。
ここに1つの矛盾が生ずる。
なぜなら、
大抵の第三世界諸国で膨れあがる失業は、
雇用者に低賃金の支払いを可能とさせる一方で、
労働者が消費者となることを
困難にさせているからである。
こうして、
資本の国際化と新国際分業は、
失業者ち低賃金労働者が
利潤を極大に得る者と共存している世界で(Barkin and Rozo 1981)、
食糧自給を保証する政策と対立する(Barkin and Rozo 1981)。
(引用者中略)
メキシコでは、
資本の国際化・・・は、
資本蓄積過程を容易にするために、
生産・分配・消費のローカル・地域・全国・国際システムを
再組織しつつある。
グローバルな経済システムが
各国の最も辺鄙なところにまで浸透するにつれて、
小生産者は、
その生存維持経済から引き剥がされ、
異なる世界へ、賃金を稼ぎ、職を求める者の世界へと押しやられる。
しかし、
この新たな世界は、
その広範囲に及ぶ要求が当然に約束する希望と期待を
実現するための十分な機会を
提供することができないのである。
雇用機会は限られており、
福祉計画は 事実上存在してない。
豊かな国の市場構造が
貧しい地域で何がいかに生産されるべきかを
規定している限り、
貧しい国がその国民の大多数の必要に応じるように
その経済を方向づけ直すことは
事実上可能であろう。
新しい国際秩序を強く求めている改革者たちだけが、
世界を
このように見ている唯一の人たちではない。
さまざまな信条をもった人たちが、
従属のパターンを拡大し、深化する近代化諸力に破れて、
各国が
自給を喪失したことを嘆いている。
ミクロネシア(太平洋の植民地)における暴動を分析して、
一人のアメリカの外交官は、次のように書いている。
「島の文化に及ぼす我々の影響を検討してみると、
彼らが正しいことがわかる。
アメリカがやってくる前、
現地の人たちは自給自足で、
食糧を木から採ったり、魚を捕ったりしていた。
今や、我々が
彼らを消費財に縛りつけてしまったのだから、
彼らは、。
缶開け器がなければ、飢え死にするだろう。
一部の急進的な独立運動指導者は、
これを逆転し、かつての自給を回復したがっている。
我々〔アメリカ側〕は
彼ら〔ミクロネシアの独立運動指導者たち〕を非難することはできない。
しかしながら、
我々は立ち去ることはできない。
我々は
そこに我々の軍事基地を必要としている。
我々には選択の余地は無い。
ワシントンの私の友人が言うように、
急所を握りしめてしまえ、
そうすれば、感情と心は後からついてこよう」
(Maccoby 1976:18)
したがって、
食糧自給の終焉は
市場の拡張の正常な一部なのである。
資本の国際化の理論は
その理由を説明する。
基礎食糧の生産から より収益のあがる作物への移行は
利潤を引き出す基盤を拡張する唯一の方法なのである。
それは、
利潤を増やし、
社会・経済の安定のために必要な財のバランスのとれた生産を保証する より広範な過程の一部なのである。
しかし、
それはまた社会の解体をも促進するから、
政治不安の始まりの前兆でもある。
なぜなら、
多くの国が、
押し退けられた人々を
新しい活動に生産的に吸収するのに必要な経済的社会的機会を
作りだすことが
できないからである。
あらゆる段階での生産者
――今の場合では、
メキシコの小農民、大農民、食糧加工業者、多国籍企業――
が、
収益的商品を生み出すために、
最も近代的で生産的な耕作・経営・マーケティングの方法を
採用することが
自分たちの利益に最もかなう
と見出している。
世界市場価格についての情報の流布とともに、
効率的で収益的な生産ラインの探求が、
技術革新の加速的な普及と採用に導いた。
需要面では、
一部の社会階層の間での所得の上昇と
世界的規模での消費パターンの変化が
農民を新製品に押しやっている。
これらの過程が、
勃興しつつある世界システムに
個々の生産者を統合している資本の国際化である。”
(デイヴィッド・バーキン【著】/吾郷健二【訳】
『歪められた発展と累積債務 ~世界経済のなかのメキシコ~』
1992年、岩波書店、20-23頁)
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