【19-⑬】《石油依存文明アメリカ》と《資源の呪い》~【監視-AI-メガFTA-資本】~ |   「生きる権利、生きる自由、いのち」が危ない!

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〈【
前回記事(【《新》19-⑫】《ペトロダラー戦争》と《資源の呪い》)】からの続き〉

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トランプ米大統領
:OPECは価格をすぐに下げろ
-3年ぶり原油高で

2018.07.05(木) Bloomberg

米独立記念日の4日、
3年ぶりの高値付近を維持した原油先物相場に
トランプ米大統領がツイートで怒りを爆発させた


トランプ大統領は、
石油輸出国機構(OPEC)は
ガソリンコストの引き下げに「ほとんど役に立っておらず」、
「それどころか、価格を押し上げている
米国が多くの加盟国をほとんど無償で守っているのに
だ。
互恵的な関係にする必要がある。
価格をすぐに引き下げ!」と述べた。

このツイートはニューヨークでの4日の原油先物取引終了後に出された。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)8月限は
現地時間午後1時前後の取引終了時点で、
前日比19セント(0.3%)高の1バレル=74.33ドル。

原題:Trump Ups Pressure on OPEC
to Boost Supply as Oil Holds Gains(抜粋)

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第102回 西谷文和が見た、南スーダンの現状

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現代の先進国は
石油依存文明》である中で
その本国〈アメリカ〉は、
とくに《石油に依存した社会》であるが、
《米ドルは国際基軸通貨である》ことから、
アメリカは、
米ドルで石油を決済させること》で
――ペトロダラーの再循環を通じて――
米ドルを
世界準備通貨であり続けてさせてきた

という通貨戦略も関係してきた為もあり、
石油問題》は、様々な面で
アメリカにとっての死活問題」であることを
前回記事では見ました。

しかし、前回記事では、
――北沢洋子氏が
石油は日本経済の血液
と指摘したように――
石油》が
アメリカ経済〉どころか
世界中の経済〉にとっての
生命線」や「死活問題」であるだけでなく

――1949年の《トルーマン・ドクトリン》以降の
20世紀後半の世界的《開発》により、
世界中が《石油文明化》された――、
ウィリアム・イングダール
『戦争の世紀』で引用された
マイケル・クレアのスピーチに
出てきたように
石油の差配をアメリカが掌握すること〉と
地政学的要衝地域に
アメリカの軍事基地を駐留させること

(=周辺地域に
米国が介入できるようになること)〉とが、
少なくとも〈ブッシュJr.政権〉では、
アメリカ
21世紀に世界で優位に立てる/支配できる為
の、
(for American world dominance in the 21st Century)
1つの統合デザインの中で結節していた
という《21世紀のアメリカ戦略》についても見、
過去記事で

「監視社会化」について扱った際に、
米国の監視社会化》や
ブッシュの戦争》の背景には、
その〈ネオコン達=PNACメンバー〉が
すでに1990年代から用意してた
the Project for the New American Century
「新たなアメリカの世紀に向けたプロジェクト」

という
21世紀も
アメリカが覇権を確立するための国家戦略
》の
思想があった、とする
モーリン・ウェブ弁護士による指摘が、
上記の米国による《ペトロダラー戦争》と
繋がることを見ました。

しかし、
マイケル・クレアが指摘したように、
アメリカのパワーの将来性を高めること
〈ブッシュJr.政権〉は
最優先課題としたにもかかわらず
危機と紛争とが繰り返し巻き起こる地域の石油
《アメリカがますます依存することが
必然的に伴ってしまう
ようなエネルギー戦略をも、
ブッシュ政権は是認している》
――その一環としての
ブッシュ政権の《原子力ルネサンス》?――
という、ある種‟矛盾した”、
あるいは
自転車操業”のようなネックを抱えながら、
アメリカが
強引に戦争を仕掛けた理由は、
ひとえに、
「石油ピークの危機」の瀬戸際に
他国や世界が気づく前に
経済にとって最も不可欠な材料である
石油差配を握る
という
生殺与奪権力を持とうとした》から、
――だから「資源戦争」という声が出た――
という背景の考察を見ました。

前回記事が、
アメリカをはじめ
NATO諸国など先進国の都合
から見た
《資源戦争》だとすれば、
今回記事は
――コインの裏表関係のように――
石油資源を収奪される
“資源の呪い”の悪夢に襲われる
アフリカなど周辺地域の立場

から見た《現在/資源戦争》、と言えるでしょう。

以下は、
松井博『企業が「帝国化」する』からですが
《》、下線、色彩などでの強調は
引用者によるものです。


現代の生活は、
石油文明と言われるほど石油に依存しています。
世界中の人々が石油に依存して生活し、
先進国であればあるほど
その依存度は高いものとなっています


 この現代生活に欠かせない石油は、
オイルメジャー」などと呼ばれる、
エクソンモービル、シェブロン、BP、
ロイヤル・ダッチ・シェル、トタル、
コノコフィリップスなどの
ひと握りの会社によって採掘、販売されています

これらオイルメジャー各社もまた、
アップルやマクドナルドとよく似た構造を持つ
アップルと同等、
あるいはそれ以上の売り上げを誇る企業群なのです。

 現在世界でも最も高い利潤を上げている企業
石油最大手のエクソンモービルです。
エクソンモービルは
テキサス州アービングを本拠地とし、
従業員およそ8万3000人を擁します。
エクソンの2012年度の売上高は4329億ドルで、
これを仮に国家のGDPと見なすと
GDP世界ランキング21位のベルギー(4685.9億ドル)と
ほぼ同等の金額
です。
純益は4106億ドルで
アップルの純益2592.2億ドルのおよそ1.5倍以上にも当たります。


〈世界最大の石油消費国、アメリカ〉

アメリカ合衆国世界最大の石油消費国です。
世界の石油のおよそ24パーセント
アメリカで消費
されています。
そしてその中の75パーセントは
乗用車やトラックの燃料として消費
されています。
ではなぜアメリカの交通機関は
ここまで石油に依存している
のでしょうか?

 1936年から50年の間
ゼネラルモーターズ、ファーストストーン・タイヤ、
フィリップス石油、スタンダードオイルなどの
会社の出資を受けて設立された
ナショナルシティ・ラインズと
パシフィック・シティ・ラインズという
2つの鉄道会社は、
当時全米45都市に展開されていた
100路線以上の路面電車買収

すべてバス路線に切り替えてしまいました

採用されたバスは、
すべてゼネラルモーターズ製のものでした。
この買収劇によって
アメリカにおける
鉄道による公共交通
事実上死滅してしまった
のです。
この一連の鉄道買収に資金提供をした
スタンダードオイル
そのあと分割されたものの、
その後何度かの合併を経て、
現在世界で最も儲かっている会社
エクソンモービルとなっています
このバス路線への切り替えきっかけ
アメリカ国内の鉄道による人や貨物の移動

急速に衰えて代わって
自動車やトラックに依存するようになっていったのです。

このようにして人為的に作られれたガソリン依存体質
アメリカにとって極めて危うい状況を作り出しています
例えば前項で紹介した食料品価格低下
すべて石油があってこそ実現しています

食用牛の餌となる大豆、トウモロコシ、飼料、食用牛そのもの
そして生産された牛肉運搬など
すべて石油を必要とする段輸送手依存している
のです。
糞尿の片付けさえ
石油を燃料とする重機なければままなりません
。”
(『企業が「帝国化」する』 P.160-162)

上記のような内容を見ると、
経路依存性」という用語が
思い浮かんでしまうのですが
――それも怒られるでしょうが――、
移動手段の選択肢を奪う》という
“根源的独占”的な
上記の《買収劇策動
を見ると、
市場の自動調整メカニズムとは何
と思ってしまいます。


以下にも続けます。


〈原油価格の高騰は何を招くのか〉

 このような状況の中
もしも原油の価格が上昇すると
食糧の価格にはどのような影響がある
のでしょうか?
例えば世界で石油の需要が増えるなどすれば、
石油価格は上昇に転じます。
実はすでにこうした事態は起こりつつあります

中国、インドと言った新興国工業化により
生産水準が劇的に向上した結果

これらの国々石油輸入量が劇的に増えつつあるのです。
例えば中国石油消費量
2000年には1日476・6万バレルでしたが、
2010年には日本の倍近い905・7バレルにも達しています

 その結果原油の価格
2000年以降うなぎ上り
なのです。
2000年には1バレル15ドル前後だった原油価格は
2012年現在1バレルあたり100ドル前後で取引されています。
ではこの間の食糧価格はどうなっているでしょうか?
次のグラフは
食糧価格の変動と原油価格の変動をグラフ化したものです。

 見てのとおり、
何十年にもわたって下がり続けてきた食料価格
2000年以降、上昇に転じています
新興国石油需要が増え続ける以上
この原油高今後もずっと続く
でしょう。
日本の食糧自給率現在40パーセント前後と、
先進国の中で最も低いレベル
ですから、
このまま原油の価格が上がり続ける
日本国内での食品の価格急上昇する可能性
決して低くありません

原油と食糧価格の動向には
今後も注意を払っていく必要があります


 また発展途上国経済力が上昇するにつれ
これらの国々
穀物や大豆などより多く輸入するようになり

ますます食料品コストを押し上げるでしょう

また原油高騰することで
これまでは採算の合わなかった
トウモロコシや大豆、
あるいは さとうきびなどを原料にしたバイオ燃料が
採算の合う事業となり
従来は家畜や人間の食糧に回されていたこれらの穀物
燃料に使われるようになってしまいます

それがまた穀物需要を押し上げ
食糧の価格押し上げる働きします

 こうした原油価格穀物の価格上昇を受け
養鶏業者など大きな打撃を受けています

さらに2012年には
アメリカ、南アメリカ、ロシアでの
記録的な干ばつによるトウモロコシの不作も相まって
トウモロコシを原料にした飼料の価格上昇
体力のない養鶏業者倒産が相次ぎました

(引用者中略)

 こうした原油高が続き
リーマンショックとも相まって
世界中の人びとの家計圧迫される中
オイルメジャーたちは莫大な利益を計上しました

例えば、エクソンモービルは2005年~08年の間に、
年度当たり410億~460億ドルもの利益を計上し、
2014年度にもまた410億ドルもの利益を上げています。
しかし
われわれが
石油依存から脱出するための有効な手だては、
現在のところ存在しません

最近アメリカでは大量のシェールガスが発見され
エネルギーコストが下がっていますが、
これらのガスを採掘しているのも
やはりオイルメジャーたち
なのです。
こうした産業
参入

大きな資本、設備
そして高い技術を必要とする
ので

新規参入が容易ではありません》。
こうしてわれわれは
石油に《餌付けされたまま

明日を迎えねばなりません



〈石油はどこで誰が掘る?〉

 21世紀に入った現在
簡単に掘れる所にある石油は
もはや採掘され尽くされている
か、
OPECによって管理されており
オイルメジャーが採掘権を専有して掘れる石油は、
深い海の底
政情不安定なアフリカ国家などにしか
残っていません

メキシコ湾沖のBPの海底油田の原油流出事故なども
記憶に新しいのではないかと思いますが、
好き好んで海底から石油を掘り起こしているわけではなく、
掘る場所がそういうところにしか残っていないのです。

 エクソンモービルもまたほかのオイルメジャー同様、
大半の石油
政情不安定なアフリカの国々やその沿革部の海底などから
採掘しています

これらの会社が
こうした政情不安定な国採掘に行くのは、
そこに行かないと石油が掘れないということのほかに

もうひとつの理由があります。

 アフリカの石油産出量として知られるナイジェリア、
赤道ギニア、チャド、ナイジェリアといった
小さな国は、
まだあまりにも国が若く、
教育程度が極めて低いことなど
から
ナショナリズム育っていません

そのため、
組織化された外国企業への反対運動など
起きにくいのです

またこれらの国
自分たちで
石油を採掘する《テクノロジー有していない》ため

石油大手側にとって
極めて有利な条件で採掘の権利を保有することができる
のです。
サウジアラビアやイラクなどの発展した国では
ナショナリズムも強い上に
国営の石油会社を所有

外国の企業に安易に採掘権与えません


ところが前述のような小さな国では、
オイルメジャーが
事実上その国における石油の採掘権を専有できる
》のです。
例えばエクソンモービルが
チャド政府に支払うロイヤリティーや税金の総額は
年間5億ドルに達するため、
エクソンモービルは
チャド政府に対して世界中のどの国家よりも
強い影響力を持つに至っています。‟
(同 P.162-168)

前回記事で
D・ハーヴェイの叙述箇所を引用した
イラク戦争後の
アメリカ傀儡のイラク政府の
新自由主義化
》の動き

という上記の引用文と共に、
アフリカの小さな国では
(OPECの結成の対抗策もふくめて)
ナショナリズムも育っておらず
「外国企業への反対運動」が
起きにくく
石油掘削のテクノロジーも無いので、
オイルメジャーが
事実上その国における
石油の採掘権を専有できる

という上記引用とを並べて
考えてみると、
TPPなどメガFTAによる新自由主義化》も、
上記引用内容も
多国籍企業による専有特権化
という点で共通しているのを
確認することができます。

以下にも、引用を続けます。



  〈悪魔の排泄物〉

 1960年代に
ベネズエラのエネルギー工業大臣を務め、
石油輸出国機構(OPEC)の創設にも関わった
ファン・パブロ・ペレス・アルフォンソ氏は、
1970年代にベネズエラで石油が発見された際に
石油われわれに破滅をもたらすだろう」
と断言しました

石油は
「黒いダイヤ」
などとも呼ばれますが、
アルフォンソ氏は
石油を「悪魔の排泄物」と呼んでいたのです。
そしてベネズエラの現実は
彼の予言どおりとなってしました

 石油が発見された1970年当時
ベネズエラは民主主義が機能している、
南アメリカで一人当たりのGDPが
最も高い国だった
のです。
ところが2003年には
1人当たりのGDPが
1960年のレベルにまで落ち込んでしまったのです。

〈資源の呪い〉

 日本の資源に恵まれない国々なので、
もしも石油などの天然資源に恵まれたら
どんなに豊かになれるのかと思うかもしれません。
ところが実のところ、
日本人は資源に恵まれなかったからこそ
豊かに暮らしているかもしれない
のです。

 貧しい国で石油が発掘されると、
ちょうど貧しい人が
宝くじに当たるときのような現象が
起きてしまう
のです。
資源から入るお金を当てにして
既存の産業が衰退したり、
取り分を争って内輪もめを起こしてしまう国は
少なくありません
この現象は「資源の呪い」と呼ばれており、
原油が採掘された貧しい国で、
国民が豊かになった例は
あまりないのが実態なのです。
資源の呪い」が起きる原因としては
つぎのようなことが指摘されたいます。”
(松井 博『企業が「帝国化」する』 P.160-171)


〈文字数制限の都合上、
【次のページ(
【19-⑥f】《「悪魔の排泄物=資源の呪い」》)】につづく〉

※2008年夏に深刻な問題になった原油や穀物の異常な値上がりは、
中国やインドの輸入増加が主因ではなく、
大手金融機関と手を組んだ投機組織が、商品先物市場に参入して、
それを投機的な金融市場に変質させてしまったことが原因だった、
と、例えば、高田太久吉『金融恐慌を読み解く』と指摘されています。