【6-②】《エアシー・バトル》と〈31MEUの沖縄外への移転〉との間で |   「生きる権利、生きる自由、いのち」が危ない!

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徳冨蘆花「謀叛論」を再発見してたら、
「ソクラテスの弁明」が、なぜ好きなのか、最近になって納得し始めた今日この頃です。


キャサリン・ラッツ
(人類学者・ブラウン大学)

軍産複合体を語るとき、
基地を抜きには出来ません。
このなかの
「任務の実行」と呼ばれるものに、
研究者たちは着目しています。
「任務の実行」は
組織的な推進力のことで
利益に基づいた力です。
基地や武器関連を支援する企業は
ビジネスとして仕事をしています。
多くの企業が
軍事基地の運営で儲けているのです。

毎日の軍事演習にかかる金額は驚異的です。
嘉手納基地だけに限ったとしても
1日に離陸する飛行機には
何千ガロンものジェット燃料
さらに整備、部品の代金なども必要となります。

これらの基地の存在理由は
軍が継続的に練習し、機材を使い、
兵士を働かせ、養うことです。
それには莫大な費用が掛かっているのです。
(映画『誰も知らない基地のこと』より)

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前回記事では、まだ知らなかったことを
今回記事の更新の間に、知ってしまいました。

沖縄についての記事を書こうと思った当初、
今回記事を書く予定は無かったのですが、
前回記事を書いた後の時点で
或るギモンに突き当たったので、
伊勢崎賢治/布施祐仁『主権なき平和国家』
などを買って読み、
今回記事を書くことになりました。

伊勢崎賢治/布施祐仁
『主権なき平和国家』を読んで
初めて知ったのですが、
前回記事で言及していた、
「辺野古基地建設費を
日本側が負担していること」について
前回記事では、
「普天間基地返還合意」の条件として
移設先基地の建設費を
日本側が負担することで
橋本龍太郎首相が呑んだ、と書いたのですが、
じつは、《1971年の密約》を結んだ事により、
以降においては、日本政府が、
基地の施設改修費を負担する事になる
《拡大解釈》
が行われるようになり、
今日に至っていることを、
『主権なき平和国家』の第3章を読んで
初めて知りましたので、訂正とお詫びを兼ねて
ここにお伝えいたします。

――・――・――・――・――・――

この一連記事での高樹の最終的な主張は
いまのところ変わっていないのですが、
前回記事のあと、
伊波洋一参議院議員が警鐘を鳴らしていて
そして実際に、構想が進められている
エアシー・バトル戦略》構想
アメリカ海兵隊の大部分の沖縄からの移動」とを
つき合わせてみると、
どういうことが起こっているのか

アタマが困惑するので、
困惑ぶりをブログに書いても
呆れられると思いますが、
いろいろ現状を並べてみて
考えられることを
今回記事では、書かせてもらいます。

以下に引用・貼り付けさせてもらった
参考資料の内容を見てもらうと
お分かりいただけると思うのですが、
以下に見ていただく
《エアシー・バトル戦略》構想を、
高樹は、
予想外に急激に中国が大国化したことで
‟時代遅れになった戦略”で、
《エアシー・バトル戦略》構想の進展は
《便益もなく、環境破壊でしかない公共事業》
のように捉えてきて
「惰性の構想事業」と思ってきました。
――しかし、「エアシーバトル戦略」構想の背景を知ると、
「中国ミサイルの射程能力の飛躍的拡大」から来るのを知り、
考え直すようになりましたが、困惑しています――

アメリカ海兵隊の大部分が
沖縄から移動していて、抑止力が無いこと

については、前回記事の
新外交イニシアティブさんのイベントの動画で、
ご確認できます。

高樹が“困惑してる”というのは、

「海兵隊の沖縄からの移動」と
〈南西諸島の自衛隊ミサイル基地構想〉と
《エアシー・バトル戦略構想》とが
セット
だったとしたら、恐ろしいことだ。
――〈沖縄本島&南西諸島〉をはじめ
〈日本列島全体〉が

アメリカの《オフショワ・バランシング》戦略上、
アメリカの対中戦争の《捨て石となる》。
アメリカの《エアシーバトル戦略》の背景は、
あくまでも、中国のミサイル射程が
飛躍的に伸びたことから来る

その対抗策である、という説明が
八木直人「エアシーバトルの背景」にあります。
いずれにしても、
米中両大国の間での戦略で、
日本は《蚊帳の外》で
しかも《アメリカの捨て石にされています》――

2014年2月
米タイ共同演習「コブラゴールド」に
アメリカ側からの招致で
中国軍
初参加」しており、
この動きを受けて、
中国人民解放軍(元)陸軍司令官の徐光裕氏が
中国軍参加は、が、
アジア太平洋地域の安全保障で
より緊密な力関係を構築しようとする表れ

とコメントしているように、
アメリカが、
中国を仮想敵国としているとは思えない動き
が、見られる
(新外交イニシアティブの動画【41分~】)

〇〈海兵隊MEU〉の「HA/DR(人道支援・災害救助)」で、
自衛隊〉と〈中国軍〉とが「活動を共にしている」。
(新外交イニシアティブの動画 【39分~42分】)

〇〈中国〉と〈日本〉は
アメリカ国債保有するトップ2〉なのに、
〈このトップ2〉が、
アメリカの対中国オフショワ・バランシング戦略の緩衝》として

――伊勢崎賢治氏は、
柳澤協二氏・加藤朗氏との共著『新・日米安保論』でも、
布施祐仁氏との共著『主権なき平和国家』でも、 日本の立場や位置を、
アメリカと中国との間に位置する《緩衝国家》と表現しています――
戦争にでもなれば
アメリカの財政支えるトップ2を《失うことになる》が、
この《アメリカ国債の2大保有国》という点から、
エアシーバトル戦略》や《緩衝国家》化状況は
正気とは思えず、不可思議でならない”ように
見えてくるのですが、どう捉えればいいのか

――・――・――・――・――・――・―――

アメリカの《捨て石国家》化されている〈日本〉が、
中国〉と戦争になったとき
アメリカは守ってくれる
という期待根拠は、
どこにあるのでしょうか?

〇よく指摘されることですが、
「日本が有事の際には、
米軍が来援する」《かもしれない
という仕組みに、
日米安保条約〈第5条〉はなっています。
というのも、その〈第5条〉には、
「《自国の憲法上の規定および手続きに従って
共通の危険に対処する」
という仕組みになっていて、
そして、アメリカ合州国憲法では、
戦争を宣言する権限」は《議会にある》からです。
すると、
仮に大統領が派兵を許可しても
議会が承認しなければ
来援はない」ことになります。

〇〈日本〉と並んで
アメリカ国債保有するトップ2の1つ
これからも経済大国化する中国〉を《敵に回して
アメリカ政府のメリット」は“何か残る”のでしょうか?

財政的にアメリカ〉も
日本〉と〈中国〉との《戦争で困る》のではないでしょうか?

〇1970年代~1980年代のときに
アメリカ政府〉は、
アメリカを追い出してしまったイラン〉の
イスラム革命の波及恐れて
ホメイニのイラン〉のチカラを削ぐために
イラクのフセイン〉を《肩入れ》していました。
アメリカの国益や戦略的都合》から、
フセイン〉を《支援していました》。
しかし、1990年の
フセインのクウェート侵攻」には、
アメリカは《手のひらを返しました》。
アメリカの《都合に反した》からではないでしょうか?

――・――・――・――・――・――・―――

《エアシーバトル戦略》構想に見られるような
《沖縄本島の基地》《南西諸島の要塞化》を
はじめ、日本の《緩衝国家》化は、
日本列島の私たちにとって、
よいことは1つもなく、
〈軍産複合体〉くらいしか喜ばないような
馬鹿げたことばかりではないでしょうか?

自然環境は壊し、共同体も分裂させて破り
社会を荒廃させ、
本当に有事なれば、
戦争に巻き込まれてしまう》からです。

いずれにしても
南は《沖縄基地問題》から
北は《青森県の小川原湖への
米軍戦闘機の燃料タンク投棄》に到るまで
米軍基地への財政経費を
どれだけ「健全化」できるか含めて、
「基地の沖縄県外移設」も、
「日米地位協定の抜本的改定」も、
全国的な問題として
取り上げなおす時期にあるのではないでしょうか?


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映画『標的の島 風(かじ)かたか』予告編

沖縄から模索する日本の新しい安全保障
自衛隊を活かす会


八木 直人「エアシー・バトルの背景」(海幹校戦略研究 2011年5月)より
http://www.mod.go.jp/msdf/navcol/SSG/review/1-1/1-1-2.pdf
‟米国国防総省が2010年の
『4年毎の国防見直し(Quadrennial  Defense  Review)』において、
“A2/AD”について言及し、
これに対応する「エアシー・バトル(AirSea Battle)」構想を
提唱したことは、周知の事実である。
米国の敵が、
米軍の戦力投射能力を封殺する目的で行使するのが
“A2/AD”能力であり、
これに対応する米国の作戦構想
エアシー・バトル」であ
る。
(引用者中略)
「エアシー・バトル」という新たな作戦概念は、
中国とイランによって引き起こされる軍事的挑戦に直面して、
米国の戦力投射能力を評価し、維持することを
目的としている。”
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宮古島、石垣島が米中戦争の捨て石にされる!
『標的の島 風かたか』監督が語る
南西諸島自衛隊配備の本質


・・・・三上監督は最新作『標的の島 風かたか』で、
さらに切迫した問題を沖縄から日本全国へ提起する。

 それは現在、安倍政権が進めている
石垣島、宮古島、奄美大島、与那国島へ
大規模な自衛隊とミサイル基地の配備につい
てだ。
政府は南西諸島の防衛強化を謳うが、
その実態は、
アメリカが中国の軍事的脅威に対抗すべく打ち出した
統合エアシーバトル構想
にある。

 この「エアシーバトル構想」で
アメリカは、
日本列島を含む第一列島線によって
中国堰き止める計画
だ。

そのために日本は南西諸島に
自衛隊とミサイル配備を推し進めている。
つまり、アメリカと中国の争い
自衛隊南西諸島差し出され
新たな戦争の「防波堤にされようとしている
、というのだ。


──三上監督の第一作目『標的の村』では高江にスポットを当て、
まったく報道がなされていなかった高江の問題を
全国へ伝えましたが、
『標的の島』も「エアシーバトル構想」という、
まったく報道されていない問題が取り上げられています。
そもそも、石垣島や宮古島などで
自衛隊やミサイル配備が進められているというニュース自体が、
大きく報道されていない状態です。


 たとえば宮古島で予定されている800人規模の自衛隊基地には、
地対艦ミサイル基地に弾薬庫と射爆場、着上陸訓練所、
さらには司令部まで設置される計画です。
地対艦ミサイルというのは
近づいてくる軍艦を撃つためのミサイル。
これは宮古島だけではなく、
奄美大島、沖縄本島、石垣島にも配備する
と発表されています。
つまり、南西諸島を要塞化しようというわけです。


──しかも、この「南西諸島の要塞化」を、
政府は
「南西諸島を中国の脅威から守るため」
「尖閣防衛」などと言いますが、
映画では
その本質が
アメリカの極東戦略にあり、
沖縄を戦場にした新たな戦争のための準備
と指摘しています。
はっきり言って、とても衝撃を受けました。


 もともとこの話は
2012年くらいに(現参議院議員の)伊波洋一さんの講演を聞いて、
私もはじめて知りました。
「そんなことになってるの!?」とビックリしたんですけど、
さまざまな資料や論文などを調べて読んでみると、
とても具体的な計画でした。
ただ、宮古島に自衛隊を置いて
そこで戦争が行われると言っても、
その前の段階で
きっと沖縄県民が反対するに決まっている、
と思ったんですよ。
沖縄戦の体験があるのに、
まさか宮古島に
陸上自衛隊やミサイルとか置くなんて話が浮上したら、
辺野古移設どころじゃなく沖縄中が反対するだろう、
と私は思っていたんです。

 それで(監督2作目の)『戦場ぬ止み』をつくっていたら、
その編集中に宮古島に自衛隊基地をつくるという話を聞いて、
今度は宮古島と石垣島にそれぞれ600~800人の部隊を置く
というニュースが出て。
これは大変なことになる、
辺野古や高江の前に
こっちが先に戦争の導火線になるぞと、
今回の映画製作に入ったんです。

──映画のなかで「エアシーバトル構想」は、
アメリカ
日本列島を含む第一列島線を防波堤にするこ
中国を封じ込めようとする戦略だと説明されています。
中国を通さないために
南西諸島の島々にミサイル部隊を配置し、
いざというときはそこで戦争をする

米中の直接対決となると
核戦争のリスクが高まるため、
それ避けるため
南西諸島で「海洋制限戦争」を行おう
、と。
まさに南西諸島標的の島になるわけですね。

 しかも、中国のミサイル
宮古島や石垣島自衛隊基地飛んできたとしても

米軍は半日で撤退するということが
日米政府間で2005・06年の米軍再編合意によって
決められています

中国攻撃されても
米軍沖縄残って日本のため米軍が戦うこと
ないんです。

そんな肝心なとき
米軍が戦ってくれない
のなら、
何のため日本いるの

と思うかもしれませんが、
それが現実なんですよね。
ようするに、
これは「自衛隊が米軍に代わって戦争をする」という話なんです。

 実際、すでに米軍が自衛隊を指導するかたちで
離島の奪還作戦といった共同訓練が行われています

また、昨年11月30日に在日米海兵隊が、
日米合同で指揮所演習の戦闘予行を行ったと
Twitterに写真つきで投稿したのですが、
その写真は、
先島の大きな地図が広げられている上に
米軍の指揮官が立って、
戦争を想定して図上演習をしている。
米軍にしてみればただの離島の地図なのでしょうが、
そこは人びとが住んでいる島なんですよ。

 しかも、南西諸島で制限戦争が起こるとなれば、
それは偶発的にはじまるでしょう。
その上、中国は攻撃を行ってくる地対艦ミサイルがある島を狙う。
島が戦場になるということです。
偶発的に突然はじまる戦闘に対し、
陸つづきでもない島の住民は果たして避難などできるのでしょうか。
(以下略)

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【今こそ辺野古に代わる選択を―NDからの提言―】

お時間が無い方は、せめて
「東京新聞」論説兼編集委員の
ぜひ半田 滋氏による指摘やコメントだけでも、
どうかお聞き下さいませ

(58分~1時間6分)

抑止力のため」には、
〈辺野古新基地建設は必要〉論
〈沖縄に海兵隊が留まる必要がある〉論とが、
もはや
理屈としても説得力がなく、成り立たない》こと

指摘しています。


猿田佐世 〈普天間基地移転問題の解決は「代替地でなく運用変更で」(2017年07月11日)

なぜこのような軍事・防衛の視点に基づいた提言書を
作ることにしたのか。
(引用者中略)

ワシントンでロビイングを行うたびに
様々なことを実感するが、
そのうちの一つが、
「ワシントンで基地問題を訴える場合には、
軍事的観点から説明しなければならない」
というものである。
(引用者中略)


〈現状分析
:沖縄に駐留しなくとも
任務遂行が可能な在沖海兵隊〉


プロジェクトチームは、
まず、沖縄の海兵隊はどのような役割を担い、
どのような運用がなされているのか

また、現在予定されている米軍再編を経て、
どのような変化が予定されているのか

という現状分析を行った。

日米両政府の現在の計画においては、
海兵隊の主力(第4海兵連隊・第12海兵連隊)は
グアムやその他国外に移転すると予定されている。
その移転の後、
沖縄には、
第3海兵遠征軍(3MEF)などの司令部機能と
普天間の航空部隊を含む第31海兵遠征隊(31MEU)のみ
残留することになっている


現在、31MEUは、
米本土から6カ月の期間で交替配備され、
東南アジア諸国を巡回しながらの
人道支援・災害救援活動
(Humanitarian Assistance/Disaster Relief:HA/DR)のための共同訓練を主任務としている。
しかし、彼らは
沖縄からの移動手段を持たず、
遠く離れた長崎県佐世保の米軍基地に所在する米海軍の揚陸艦が
沖縄まで来て、それに乗り込み、
そこから東南アジア諸国に向かっている


31MEUは、
現在の運用では
沖縄に配備されている間も
実は東南アジアを巡回しており
沖縄には訓練と休養のために滞在するにすぎず
その滞在期間は平均して1年の3分の1に満たない


これ米軍再編を踏まえた沖縄の海兵隊の運用の現状である。

研究会は、この現状分析し、
31MEUの任務遂行に必要なのは、
佐世保からやってくる揚陸艦とスムーズに合流して
東南アジアなどの目的地に迅速に向かうことができる
「運用」の確保であるとの議論となった。
31MEUが、
米本土やハワイ、グアム、あるいはオーストラリアにいたとしても

適切な輸送手段さえあれば支障は生じない
したがって、
海兵隊の実際の運用からは
31MEUの駐留先沖縄でなくてよい
という結論が導き出された。

海兵隊の運用実態は、
日本ではあまりに知られていない。

「沖縄に基地を置き、紛争現場への迅速な展開を」
という意見がある。
しかし、31MEUは佐世保から来る揚陸艦を待って現場に向かっているのが現実である。

「抑止力の観点から、海兵隊は沖縄にいなければならない」
との意見もある。
しかし、
米軍再編の後も沖縄に残るとされる実戦部隊の31MEUは、
すでに一年の3分の1程度しか沖縄にいないのである。

そもそも、
沖縄に残る唯一の実戦部隊と予定される31MEU
約2000人にすぎない部隊
であり、
彼らのため辺野古に基地が建設されようとしている
という現実も
日本ではあまりに知られていない


〈条件整備
:いかにすれば辺野古基地建設中止は可能になるか〉

研究会では、
これらの不合理な事実を確認した上で、
31MEUの駐留先は沖縄外でよい、
すなわち、辺野古基地建設の中止を前提に、
それにより生じうる課題を一つ一つ他の方法で解決しようと試みた。

31MEUの沖縄外への移転により、
海兵隊の移動距離が長くなることを補うためには、
高速輸送船などを日本が提供するという方法もある。
この提供費用は、
大規模な新基地建設に比べれば
はるかに少ない金額である。
さらに、移転先で施設の整備が必要であれば、
現在日本政府が支出をしている施設整備費から支出することも考えられる。

また、この沖縄からの海兵隊移転を
「積極的変化」と位置づけなければ、
アメリカの政策決定権者に対しては説得力を持ちにくい。
この問題をクリアするために、提言は、
次のようにまとめている。
31MEUの平時任務である人道支援・災害救援活動(HA/DR)に関して、自衛隊もすでに多くの経験があり高度な能力を持っているので、東アジアのHA/DRについて米軍と共に自衛隊のその能力を活用することによって、この地域の安全保障環境の改善に寄与することが可能である、と。
疑問への回答:事態拡大への実効的な抑止の担保

軍事的な議論をギリギリと突き進めていくと、「海兵隊が沖縄から撤退すれば、中国に誤ったメッセージを与える」という意見に行きつくことが多い。

しかし、

日中間における領有権争いについてのアメリカの姿勢は

外交手段を優先する」というものである。

海兵隊の抑止機能を必要以上に強調することは、

中国のみならずこの地域の国々に

「アメリカが第三国の領土紛争に海兵隊を必ず投入する」

という誤ったメッセージを与え、

さらに緊張を高めるおそれがある、と提言はまとめる。

さらに、研究会の議論においては、

逆に、アメリカが必ず守ってくれるという“誤ったメッセージ”を日本に広めてしまうだろう

という意見すら出されていた。

研究会では、

日本が直接他国に攻撃されるといった場面についても議論した。

そのような事態に備える必要性があるならば、

大規模紛争で必要となる兵力は、

沖縄に残る31MEU (2000人規模)をはるかに上回る兵力である。

そもそも、本来、米海兵隊の抑止力とは、

島嶼をめぐる限定的な紛争に備えるものではなく、

むしろ事態が拡大して本格的な侵略に至るような事態に備えるためのものある。

提言はこの点を汲み、

重要なのは31MEUが沖縄に駐留し続けることではなく、

「大規模な増援部隊が戦闘に参加する用意があること」を示しておくこととしている。

装備の事前集積と輸送手段の改善など、

有事の際に来援する基盤を日本国内あるいはその周辺に維持し、

それによってアメリカの意志を示すことが重要である、

と紛争対応についての疑問に答えている。

〈提言〉
以上の分析を行った上で、本提言は下記の提案を行っている。

1. 現行の米軍再編計画を見直し、
  第31海兵遠征隊(31MEU)の拠点を沖縄以外に移転する。
2. 日米JOINT MEU for HA/DRを常設する。
3. 日米JOINT MEU for HA/DRの運用などを支援するため、
 日本が高速輸送船を提供する。
 米軍駐留経費の施設整備費を移転先で
 現行のまま日本政府が負担する。
4. HA/DRへの対応、
  その共同訓練などアジア各国の連絡調整センターを沖縄に置き、
アジア安全保障の中心地とする。

日本では、「辺野古問題の解決策」というと、
「どこに海兵隊を移設するか」との議論に終始してしまう。
その発想を切り替え、場所ではなく、
技術と運用の変更による現実的な解決を見出すよう提案している。


〈より現実的な選択を〉

16年、提言の草案を片手にワシントンを回った
プロジェクトチームのメンバー、屋良朝博からは、
多くのアメリカの専門家から
「具体的な対案が出てきたことを歓迎する」との声が上がった
と報告があった。

東京および沖縄では
すでに提言発表のシンポジウム
(東京17年5月23日、沖縄17年2月27日)を開催したが、
提言の発表後、
真っ先に取り上げたのは、
米軍の準機関紙である星条旗新聞(Stars and Stripes)であった。
続いて、
沖縄タイムス(2月28日)、琉球新報(2月28日および3月6日)が
沖縄開催のシンポジウムについて大きくページを割いて
掲載するとともに、社説で提言を高く評価した。
また、続いて本土でも、
東京新聞が社説(3月19日)で取り上げ、
特集記事(3月27日)を掲載した。
日本本土の、ある大手メディアの論説委員室に伺って
この提言を説明したところ、
軍事の視点に配慮したこのような具体的提言の作成に感謝する
との言葉もいただいた。

なお、この提言には、
辺野古基地建設に反対する立場の何人かの方々から、
「軍隊の正当化」
「高速輸送船の提供や日本の費用負担などがなくとも
単にローテーションの変更で普天間閉鎖、
それだけでよいのでは」といった意見もお寄せいただいている。

辺野古の基地建設を懸念する人々の想いやその背景は、
それぞれである。
私も、自分がこれほどまでに防衛政策を研究するようになる
とは思っていなかった。
本提言の執筆陣にも、個人的見解となれば、
それぞれ個別の考えもあるだろう


それら様々な意見や異なる背景をすべて包み込む形で
翁長知事を生み出した「オール沖縄」に意義があるように、
それら意見はどれも重要である。
それぞれ異なる意見や背景が存在する中においては、
まさに役割分担が重要であろう。
アメリカ向け、軍事・安保関係者向け、
という役割を本報告書が担えれば、
と私自身は考えている。

もちろん、この提言の基礎には
米軍基地に対する「沖縄の強い反対」がある。
沖縄のこれだけ強い反対を無視して基地建設を強行すれば、
米国が最重要とする嘉手納基地などに対しても、
沖縄の反対姿勢はさらに強まっていくだろう。

ただひたすら「辺野古が唯一の選択肢」
という文言を繰り返すのではなく、
一度、少しひいて、
別の選択肢を真剣に検討することで、
より良い結論を導く勇気を持てないものか。
海兵隊の運用を学べば学ぶほど、
現実の事態は柔軟で、
柔軟でないのは政策決定をしている政府の思考である
との思いが強くなる。

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【次のページにつづく】