一本は、一瞬で決まる。

踏み込み、打突し、通り抜ける。

そのすべては、ほんのわずかな時間の中にある。

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けれど、その一本は、

決して一瞬で生まれたものではない。

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そこには、積み重ねがある。

何度も振った素振り。

うまくいかなかった稽古。

迷いながら出した一歩。

そのすべてが、

静かに重なっている。

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一本は、技だけでは決まらない。

形だけを真似ても、届かない。

そこにあるのは、

その人の状態。

整っているか。

迷っていないか。

前に出ているか。

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気・剣・体がそろうということは、

技術だけの話ではない。

心も、そこに含まれている。

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迷いのある一本は、どこか止まる。

覚悟のある一本は、まっすぐに届く。

それは、見ている人にも伝わる。

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だからこそ、一本は正直だ。

ごまかしはきかない。

今の自分が、そのまま現れる。

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打てなかった一本にも、意味がある。

出ようとして出られなかった一歩。

ためらってしまった瞬間。

そこには、自分の課題がある。

それに気づくことも、また大切な一本。

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一本は、結果であると同時に、問いでもある。

なぜ打てたのか。

なぜ打てなかったのか。

その問いに向き合うことで、

また次の一歩が生まれる。

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そしてもう一つ。

一本は、相手とともに生まれる。

一人では成立しない。

相手がいて、

間合いがあり、

その中で機会が生まれる。

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だからこそ、一本には関係がある。

向き合った時間。

積み重ねたやりとり。

そのすべてが、その一瞬に込められている。

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勝ち負けだけでは測れないものが、そこにある。

納得できる一本。

悔しさの残る一本。

どちらも、自分の中に残っていく。

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剣道は、一本を追い続ける道だ。

けれどその一本は、

ただの結果ではない。

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それは、

これまでの自分と、

今の自分と、

これからの自分をつなぐもの。

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だから今日も、一本を打つ。

うまくいかなくてもいい。

ただ、今の自分で、

まっすぐに出る。

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その一本の中に、

すべてが込められているのだから。


via 村島弘之's Ownd
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