旅行2日目の朝、宿泊した南三陸町の歌津にある民宿は、7年前にも利用して、その当時印象も良かったことが記憶に残っていました。当時の宿泊利用者は工事関係者が多く朝食時間になると作業服を着た方が仕事絡みの話をされていて、おおよそ観光気分からかけ離れたものでした。

セメント関係の話が聞こえてきた事がよく残っており、とにかくセメントの原料、骨材の供給が追いついていなくて各方面から急ぎ調達しているという趣旨でした。無理もありません、約250キロ以上にわたる海岸線が津波により破壊的なダメージを負い、人的被害が出た区域は概ね従来より嵩上げした防潮堤で覆い尽くそうという巨大防災工事が短期間で発動されたのですから、量的なものは想像つきませんが新幹線や空港一つ作る以上の資材が投入されたのではないでしょうか。もちろんそこに従事する人員も投入されたでしょうから、福島第一原発の事故処理事業まで含めると莫大なんだろうとしか言葉が出てきません。

 

そんなことを思い出しながら、すっかり日常を取り戻した感がある宿でお腹がいっぱいになる程の朝食をいただき、フロントにチェックアウトに出向くと、この宿を仕切っている女将さんが対応されたので7年前と同じく、少し立ち話をして近況を聞いてみた。こういうコミュニケーションも旅の楽しみなのです。

工事特需も終わり、観光誘致をしているものの、インバウンドの効果はまだまだだという話でした。

歌津地区はやや半島のような迫り出した地形の突端にあることから、観光バスなど大型車両が進入しにくいこともあり、ツアー客は寄りにくいこともあるのかもしれないなと感じました。

何か施設の工事をしてたので、何かと訊ねると「ドッグラン」施設を造成しているとのこと、ペット同伴を認めているようで、そこに活路を見出そうとしているようでした。

 

宿を発ち、前日に続き志津川エリアに戻って、「南三陸311メモリアル」という震災伝承館に入場し、そこで毎日上映されているラーニングシアターを鑑賞することにしました。全体で1人あたり1,000円で鑑賞でき、定員があるので事前にネット予約もできるシステムになっていました。

 

建物の写真を撮り損ねていたのですが、建物自体は建築家隈研吾氏の設計事務所が手掛けたもので、津波の荒波に挑む船をイメージしたデザインの建築物で、言われてみれば確かにその通りだというものでしたが前日は一体なんだろうとなかなかポンと答えが出てきませんでした。

木材もが多く使用されて神社仏閣の建築物も彷彿させる印象さえ与えます。

入場してみると内部は意外とコンパクトで一般的な公共施設にあるようなホール、研修室が整然とあるもののどこか物足りなさがある生涯学習施設とは趣が違い、施設のメインがやはりシアターでのラーニング体験にあり、そこに一点集中している内観となっていました。

(写真はラーニングシアターのガイド及び教本パンフ)

 

ラーニングシアターは定員50名程度で、ここで約1時間近くの津波被災と避難を経験した地元住民によるエピソードの紹介とそこに関わる防災面における様々な問題提起を参加者同士での意見交換を交えながら進めていく研修体験型のツアーになっていました。

自分が参加したのは、「命を守るための避難のあり方」についてをテーマにしたものでした。

ここでは地元の小中学校の生徒の避難について当時避難計画ではどのように検討されて、実際被災した時どのような行動が実行されたのか、学校関係者の口述映像による振り返りが流されて、実体験者でなくては語れない臨場感に満ちた証言が紹介されて、かなり考えさせられる内容のものでした。

避難計画や訓練を施されたとしても、その内容が実際災害に遭遇した際にとっさの判断で100%生命の安全を保障される

ものではないことを自覚し、危険が予想を超えて迫ることも常に頭に片隅に置いておかねばならないことを実感する内容のものでした。当時消防が避難訓練で「この方法で大丈夫」と言ったことで満足していたら生徒の生命を守れなかった事実からもこう言った検証結果をしっかり伝承する事が現代の自然災害体験はあらゆる記録媒体に残るのですからフル活用すべきと実感させてくれる学習体験になりました。ぜひ修学旅行旅行などで訪問する際に、必ず寄ってもらいたい施設だと感じます。

 

(資料の見開き、意見交換し気づいた点を記入する欄も準備されています)