写真を送ってから2週間が経ったころ、Nさんから電話がかかってきた。
N「HIROさん・・・」
今までに聞いたことが無いような、すごく落ち込んだ声だった。
私は一瞬、頭を過ぎったのは、・・・旦那さんが激怒して、離婚を切り出してきた?・・・という事だった。
しかし、話を聞いてみると旦那さんの事ではなかった。
Nさんは自分の写真をとても気に入って、旦那さんだけでなく、友人や母親にも見せたようだった。
友人はいいね!と言ってくれたが、母親はまったく違う反応だった。
結論から言うと、撮影は無かったものとして欲しいという事だった。
交通費やホテル代、撮影にかかった費用は全てNさんが負担するので、撮影したポジを全て回収したいとの事だった。
Nさんの母親は昔、マスコミ関係の仕事をしていて、非常識なカメラマンが多いという事を感じており、私のようなアマチュアカメラマンがヌードを撮ってタダで終わらせるわけがないと思っているということだった。カメラマンが撮影費用の全てを負担して、素人のヌード写真を撮るという事は、その代償をどこかで得ている・・・つまり、自分の娘のヌード写真が裏で売買されるのでは?と心配されているようだ。そのため、すぐにでもポジを返して貰いなさい!と、きつく言われている様子だった。
私はNさんに心配しないように・・・と伝え、ポジは全て渡す約束した。お金の事もあるのでポジは手渡しすることにした。
・・・
ポジを手渡す約束の日はとても天気のいい日だった。
芦屋駅に着いた私をNさんは自転車に乗って待っていた。私たちは近くのケーキ屋さんの喫茶ルームに入り、少し話をした。
N「ごめんなさい・・・」
私「気にしなくていいですよ。ポジは全てお渡ししますから。」
私が撮影した写真で誰かが悲しむのは本当に辛い・・・。
N「費用はどれくらいですか?」
実際にかかった撮影費用は4~5万円程度だった。でも、全てを払わせるのは心許無い。
私「このお店のケーキをお土産に持って帰りたいので、私にプレゼントして下さい。それでいいですから・・・」
私は大きなケーキの箱を持って、電車に乗った。
・・・
家に着いて、私はカミさんにケーキを渡した。
カミさんは(どういう風の吹き回し?)と言いたげだったが、すぐに紅茶を入れてケーキを食べる事になった。
カミさんによるとそのケーキは結構有名なお店のものだった。
そのケーキはチョコレートケーキでは無かったが、私には少しほろ苦い味がした。
(終わり)