世界の果て、そこは永遠と思われた草原の終わりの丘。目の前には数え切れない光の気包が見える。

「思うように歩けば君の望む世界に行く事ができる。僕とはここでお別れだね。」

「ありがとう。」

僕が手を振ると少年はにっこり笑って今来た道を帰っていく。

突然湧いた疑問。それを少年にぶつけてみた。

「君は神様なんかじゃないでしょ?」

 彼は顔だけ振り向き

「しーらない。」そう言うと走って行ってしまった。

なんであんな事言ったのだろう?でもあの反応じゃ満更間違ってもいないかもしれない。しかし僕にそれを確かめるすべなどない。まあいい、僕も行くか。

僕が道を行こうとすると目の前に一陣の風が吹く。そうだ。彼らにも挨拶しなきゃ。

「ねえまた会えるかな?」

風に語りかける。風は黙ったままだった。愚問だな。風はいつも僕の傍にいる。此処の様に会話はできないかもしれない。しかしいつでも僕は風を纏い風と共に歩いて来た。心配する必要なんてない。

「扇風機のスイッチさえ押してくれる人なら誰の前にでも顔を出すもんね。」

怒ったのか僕に向かい突風が吹きつける。

「ごめんごめん。」

冗談を謝ると地面に声をかける。

「君も。ベランダで家庭菜園でも始めようかな。」

僕の言葉を聞いた草達が体を揺らした。

「またね。」

挨拶を済ませ目の前の世界に別れを告げると僕は光の中へと進んでいった。



つづく

「光と影」のタイトルを変更し再度UPしました。
改めて「神様の居る場所」となります。

電子書籍化に際して多少手直ししてあります。

訂正前の記事は誤字脱字多くあったと思います。
すいません。

そして作品完成したのでパブーにUPしました。
よかったら読んでください^^

ブログの方では引き続き1日少しづつ載せていきます。

表紙です↓

九重裕人はいつでも優鬱-神様の居る場所表紙

 

「君の居た世界の事少し思い出してきた?」

「うん。少しだけ。」

彼には僕の頭の中が見透かされているようだ。でも不快に感じる事はない。むしろどこか安心する。

「さて、それじゃあなぜ君が何故此処にいるか、これから君は如何するべきか話そうか。」

「此処で生きていくか、元居た世界に戻るか決めなくてはいけない。そうじゃない?」

そんな気がしていた。

「おしいけど違う。君に選ぶ事はできないんだ。」

「そうなの?」

「うん。君はあっちの世界に帰らなくてはいけない。だからもう自殺を繰り返さないように君を説得するのが僕の役目。」

お話しするのが僕の仕事。彼の言った言葉はそういう意味だったのか。

「そっか。じゃあいつまでも起きていてもらうのも悪いし僕は帰るよ。」

「いいの?もっとゆっくりしていっていいんだよ?永遠は一瞬でしかないからね。」

「大丈夫。今の僕にはもと居た世界を捨てた理由すら思い出せないし。それになにもないのは少し暇かな。」

「なにもないから何も持っていなくても孤独を感じないのかもよ?」

「少なくとも神様は幸せを願ってくれているのでしょ?それだけあれば十分だよ。神様が作った世界。行ってみたいな。」

「そっか。じゃあ行こうか。」

そう言うと彼はこの世界の果てへと僕を導いた。

沈黙が流れる。

「え?」

彼が口にした内容に驚いたのは勿論だが、話に続きがない事に体操驚かされた。

「やっぱり驚いた。」

そう言って彼は笑った。

返す言葉を見つけられず僕が立ち尽くしていると少年は話を続けた。

「神様もさ、いろいろ忙しいんだよ。基本的には僕らが好むのはクリエイティブな仕事なんだ。世界を作っては見せ合いをして楽しんでいる。世界は作り始めてから1週間で完成させなくてはいけないって知っている?」

そんな事僕が知るはずもない。でも神様は世界を1週間で作ったなんて話なら聞いた事がある。

「聞いた事があるような。ないような。」

「まあなんとなく知っていればいいよ。世界ってガラス細工みたいな物で早く形を決めないと固まってしまうの。固まってしまうと手直しすら出来ない。だから寝る間も惜しんで作り続けるんだ。それにね・・・」

僕は黙って耳を傾ける。

「一度世界を作ってしまうとやめられなくなってしまう。罪悪感って言ったら分かりやすいかな?悲しみを拭えぬまま固まってしまった世界を眺めて神は悲しむんだ。そうしてね、今度こそ!って奮起して完璧な世界を目指してもう一度作り始めるの。それをずっと繰り返しているんだ。それはもう中毒みたいな感じに。」

得体のしれない話を聞いているはずなのに、彼の話を聞いていると不思議と落ち着く。それと同時に元居た世界の輪郭が少しずつ頭に浮かんでくる。

「僕はね神達が作った世界を見せ合う本当の理由は自信がないからなんじゃないかって思うんだ。これは素晴らしい世界だよね?此処で暮らす生き物はきっと幸せになってくれるよねって?言葉にして安心したいんじゃないかな?未だ1日の半分以上大地に光を届ける事が出来ない自分達を慰めているんだと思う。」

「もしかして君は神様の中でも特別すごい人なの?」

「そんなことないよ。」

彼は笑って言った。

「僕はその姿が滑稽で仕方なかったとか思想的批判なんてなにも持っていない。本当に毎日もっと寝ていたかっただけ。8時間しか寝てないのに怠け者扱いされるんだよ?」

「神様も眠くなるんだね。」

僕は笑って言った。

「勿論。もう僕には世界を作る事は出来ないんだ。だから此処に来る人とお話するのが僕の仕事なの。神様にとって此処での仕事は底辺なんだ。変な話でしょ?神様が仕事に優劣をつけているなんて。でも僕は此処が大層気に入っていてね。」

少年がそう言って空を仰ぐと風や緑が踊りだす。この少年の友達だったんだ。その時僕は理解した。


つづく

限りなく広がる緑の海を僕はどれくらいの時間歩いたのだろう。不安にならない事が不思議に思えるくらい同じ景色を見続けてきた気がする。それでも心は穏やかだった。

僕の行く道を風が着いて回る。そっと僕の背中を押しどこかへ導いているのかも知れない。だとしたらこの先に何かあるのだろうか?

いい加減歩くのにも飽きた頃、初めて視界に異物が飛び込んだ。緑の海にそれは倒れている。

輪郭を捉えようと目を凝らす。人間だ。僕と同じ生き物だ。それが分かると僕は無意識に駆け出していた。

「くぅ。くぅ。」

目の前に倒れているのは丁度僕と同じ年くらいの少年だ。倒れている、と言うよりは気持ちよく寝ているのだろう。無防備な寝息が聞こえてくる。

睡眠を邪魔するのも気が引けるがこの少年に声をかけるべきだ。そんな衝動に駆られた。それは意識を起こした時に味わった感覚。

「あの・・・」

呟いて肩を揺する。

「う~ん。」

それに答えるように少年は薄らと目を開けこちらを見た。

「あと10分。」

彼はとても自然にそう口にすると再び目を閉じる。

「ねえ。」

負けじと声をかける。10分起きるのを待ったらその後にもう10分という懇願が待っている事を僕は知っている。

「ねえ!ねえ!」

肩を揺らし続ける事数分、やっと起きる気になってくれたようだ。

「おはよお。」

彼は腰だけ起こすと片手を地面に着きながらもう一方の手で目を擦り、まるで昔からの知り合いに声をかけるように自然にそう告げた。

「おはよう。君は誰?此処が何処だか知っている?」

何の疑問も口にせず僕と対峙する彼は少なくとも僕よりは現状を理解しているだろう。そう思うと質問せずにはいられない。

「僕はね。神様。ここは天国・・・かな?」

相変わらず目を擦りながら彼はそう告げた。

「神様?」

あまりの突飛な解答に僕は声を上げる。

「そう神様。なんだか納得できちゃうでしょ?」

言われてみればそうだ。突飛だとは思うが懐疑心は微塵も浮かんでこない。この少年は神様なんだ。僕は簡単に納得してしまった。

納得すると次に天国と言う言葉が引っかかる。

「天国って事は僕死んだの?」

「そうだよ。それも自殺。」

またもやあっさり告げられた。

僕が自殺・・・とても信じられない。僕の心はとても穏やかだ。自ら死を選ぶだけの闇を僕が抱えていたなんて今の僕には信じられない。

「じゃあ神様は僕が天国に行くか地獄に行くか審査するために此処にいるの?」

「違うよ。」

「じゃあなんで?」

「僕もね。自殺しちゃったんだ。だからここにいる。」

神様が自殺?またしても突飛でヘンテコな話だ。しかしそもそも神様とはどんな存在なのかなんて事を僕は、いや人間は知りえないはずだ。変だと感じる事こそおかしな話なのかもしれない。

それにしても神様が自殺・・・なにか人間には想像もできないような苦悩があったのだろうか?僕はその理由が気になった。

「神様が自殺なんて、どんな理由があったの?」

少年は語りだす。

18時間の睡眠じゃ足りなかったの。」


つづく