限りなく広がる緑の海を僕はどれくらいの時間歩いたのだろう。不安にならない事が不思議に思えるくらい同じ景色を見続けてきた気がする。それでも心は穏やかだった。
僕の行く道を風が着いて回る。そっと僕の背中を押しどこかへ導いているのかも知れない。だとしたらこの先に何かあるのだろうか?
いい加減歩くのにも飽きた頃、初めて視界に異物が飛び込んだ。緑の海にそれは倒れている。
輪郭を捉えようと目を凝らす。人間だ。僕と同じ生き物だ。それが分かると僕は無意識に駆け出していた。
「くぅ。くぅ。」
目の前に倒れているのは丁度僕と同じ年くらいの少年だ。倒れている、と言うよりは気持ちよく寝ているのだろう。無防備な寝息が聞こえてくる。
睡眠を邪魔するのも気が引けるがこの少年に声をかけるべきだ。そんな衝動に駆られた。それは意識を起こした時に味わった感覚。
「あの・・・」
呟いて肩を揺する。
「う~ん。」
それに答えるように少年は薄らと目を開けこちらを見た。
「あと10分。」
彼はとても自然にそう口にすると再び目を閉じる。
「ねえ。」
負けじと声をかける。10分起きるのを待ったらその後にもう10分という懇願が待っている事を僕は知っている。
「ねえ!ねえ!」
肩を揺らし続ける事数分、やっと起きる気になってくれたようだ。
「おはよお。」
彼は腰だけ起こすと片手を地面に着きながらもう一方の手で目を擦り、まるで昔からの知り合いに声をかけるように自然にそう告げた。
「おはよう。君は誰?此処が何処だか知っている?」
何の疑問も口にせず僕と対峙する彼は少なくとも僕よりは現状を理解しているだろう。そう思うと質問せずにはいられない。
「僕はね。神様。ここは天国・・・かな?」
相変わらず目を擦りながら彼はそう告げた。
「神様?」
あまりの突飛な解答に僕は声を上げる。
「そう神様。なんだか納得できちゃうでしょ?」
言われてみればそうだ。突飛だとは思うが懐疑心は微塵も浮かんでこない。この少年は神様なんだ。僕は簡単に納得してしまった。
納得すると次に天国と言う言葉が引っかかる。
「天国って事は僕死んだの?」
「そうだよ。それも自殺。」
またもやあっさり告げられた。
僕が自殺・・・とても信じられない。僕の心はとても穏やかだ。自ら死を選ぶだけの闇を僕が抱えていたなんて今の僕には信じられない。
「じゃあ神様は僕が天国に行くか地獄に行くか審査するために此処にいるの?」
「違うよ。」
「じゃあなんで?」
「僕もね。自殺しちゃったんだ。だからここにいる。」
神様が自殺?またしても突飛でヘンテコな話だ。しかしそもそも神様とはどんな存在なのかなんて事を僕は、いや人間は知りえないはずだ。変だと感じる事こそおかしな話なのかもしれない。
それにしても神様が自殺・・・なにか人間には想像もできないような苦悩があったのだろうか?僕はその理由が気になった。
「神様が自殺なんて、どんな理由があったの?」
少年は語りだす。
「1日8時間の睡眠じゃ足りなかったの。」
つづく