月見れば
ちぢにものこそ
かなしけれ
わが身ひとつの
秋にはあらねど
大江千里
◯一般的な解釈
月を見ていたら
あれこれと物事が悲しく思われるなあ。
私一人だけの秋ではないけれど。
・ちぢに→千々に
さまざまに、際限なくの意。
後半の「ひとつ」と照応。
自分という存在は一つであるけれども
心は千々に変化するもの。
・もの
自分を取り巻いているさまざまな物事。
◯山口志道の解釈
秋と言うものは
総て悲しきものにて
しかしとて
我一人が受ける秋ではないけれども
月を見れば
時々刻々と絶えず悲しいものだなあ。
・ちぢ
チはトキの略。
トキがチになるまで。
トキ
→toki
→最初のtとiだけを取る
→ti
→チ
チヂとは時々、時々刻々なり。
◯一般的な解釈と志道の解釈の違い
ちぢの解釈が若干違うかな。
それ以外はだいたい同じようですね
◎これから冬になろうとしている秋という季節は
どんどん日の沈む時間も早くなり
夜の時間が長くなっていきますね。
それに連れて人の心も次第に・・・
でも僕にとって秋は食欲の秋です
◯大江千里 おおえのちさと
九世紀後半から十世紀初頭の人。
漢学者大江音人の子。
文章博士。
官僚を育成する大学寮出身のインテリ歌人。
歌集に「句題和歌」がある。
この百人一首シリーズでは江戸時代の国学者、山口志道著「百首正解」を現代人にもわかるようまとめています。
山口志道は言霊や神代学に精通しており、ひふみ神示の岡本天明や合気道開祖の植芝盛平、大本の出口王仁三郎らに多大な影響を与えています。
鷹屋敷洋史
参考図書
・「百首正解」山口志道
・「原色小倉百人一首」文英堂
鈴木日出男 山口慎一 依田泰 共著
・「ちはやと覚える百人一首」講談社
漫画 末次由紀 著 あんの秀子
・「千年後の百人一首」リトルモア
清川あさみ+最果タヒ