ウソをついた霊能者。


私が今、思い出す限り、

1度だけ、アメリカの霊能者の方が、

相談者の方に、明らかなウソをついた事がありました。












それはある時、

霊能者の所に、

3歳の娘さんを抱きかかえて相談に来たお母さんがいました。


彼女は霊能者の前に座るとすぐに、

今までの自分の身の上が、いかに不幸だったのかを語り始めた。

彼女いわく、不幸の始まりは、

彼女が3歳の時に、両親が離婚してからだった。

それまで3食たべていたのが2食になり、

そして、4歳の時に、

母親に児童養護施設の前に置き去りにされたのだと言う。

その後、母親は一度たりとも彼女に会いに来なかった。

「私は母親にも父親にも捨てられたんです。」

何年か経った頃、

先生から母親が亡くなった事を聞いたそうですが、

自分を捨てた憎い母親の葬儀など行くものかと、断った。


大人になった彼女は、ボーイフレンドとの間に子供が出来るが、

妊娠を知った彼は、彼女の元から蒸発したという。

それ依頼、彼女は働きながら女手一つで娘さんを育てていたのだが、

先日、医者からガンを宣告されてしまったのだ。


もう、どうしていいか分からないんです。」と彼女。


素人目にも、今回の相談は難しそうだな。と感じました。

シングルマザーだけでも大変なのに、

頼れる親族は無く、

しかも、幼い子供を抱えて、自身はガンだと言うのです。


さっそく霊視が始まりましたが。

霊能者の方も、今回ばかりは難しい様で、

10分経っても、ただ黙って相談者の上の方を見るか、

目をつぶって考えるかだけでした。


10分も沈黙が続くなんて、今まで見た事もありません。

最悪、何も見えませんでした。

と依頼を断る事もあるかもしれないと思いました。



その時でした。

10分もの沈黙を破ったのは、

霊能者でも無く、相談者の母親でもありませんでした。













お母さんの側に座っていた子供が、

i'm hungry.」(ママぁ、お腹すいた。)と言ったのです。


それを聞いて、霊能者の方も話す決心がついたのでしょう。




霊能者の方は、口を開くと、

1つだけ、貴方が幸せになる方法があります。」と言ったのです。


さらに、霊能者の方は、こう続けました。


「貴方の両親が離婚した時、

 お母さんは、苦しくなるのを承知で貴方を引き取ったのですよ。

 そんな母親が、好き好んで貴方を捨てる訳無いでしょ。

 霊視してみると、当時、お母さんは再婚する為に、

 ある男性とお付き合いしていたんだけど、

 その彼が、貴方に暴力を振るおうとしていたりして、

 貴方を殺しかねなかったので、貴方を守る為に預けたのよ。

 結局彼から逃げられなくても、亡くなってしまったけど、

 貴方だけは守った。」


「そんなお母さんを、ずっと憎んでいるなんて良く無いわ。」




「どうすれば、いいんでしょうか?」


「今からでも遅く無いの。

 今まで憎んでいて、ごめんなさい。って、

 お母さんに謝ってあげて。

 そして、3ヵ月間、天国に行ける様に祈ってあげて。

 それから昔の先生に聞いて、

 お母さんのお墓を探し当てて、お花を供えてあげて欲しいの。

 仮に、見つけられなかったとしても、いいから。

 貴方が探してくれた。というそれだけでも、

 お母さん、喜ぶから。」




それから約1年後、彼女から手紙が来たという。

あれからすぐに、先生と連絡を取り、

大変だったが、お母さんのお墓を見つけて花を供えたという。

それから段々と運勢が良くなり、

ガンの手術も成功して、今は再婚に向けて男性と同棲しているという。





私はその報告を聞いて、

「ああ、それは良かったですね。

 やっぱり、母親は見捨てなかったんですね。」と言うと、


少し沈黙してから、霊能者の方が、

「実はね、本当は彼女が推測していた通りだったの。

 彼女の母親は、新しいボーイフレンドと付き合う為に、

 邪魔になった彼女を捨てたの。」


私はそれを聞いて、

Are you serious?」(マジで?)と叫んでしまいました。


「彼女の周りを霊視したけど、彼女を助けるものは何も無かったの。

 唯一、可能性があると思ったのは、

 逆に母親の罪悪感を利用する
事だったの。

 それには、どうしても母親との和解が必要だったのよ。」



「それにね。

 病気って不思議なんだけど、

 人を憎んでいると、なかなか良くならないの。



霊能者の方いわく、

生前、どんなに毒親であっても、

亡くなったなら、許してあげると良い
という。

そんな毒親は、生前の罪滅ぼしに助けてくれる事が多い。









「こんな母さんでも、許してくれるのね。

 ありがとう。 ありがとう。

 母さん、一生懸命貴方を助けるから。

 母さん、今まで出来なかった分も、頑張るから。


END