●ウソをついた霊能者。
私が今、思い出す限り、
1度だけ、アメリカの霊能者の方が、
相談者の方に、明らかなウソをついた事がありました。
それはある時、
霊能者の所に、
3歳の娘さんを抱きかかえて相談に来たお母さんがいました。
彼女は霊能者の前に座るとすぐに、
今までの自分の身の上が、いかに不幸だったのかを語り始めた。
彼女いわく、不幸の始まりは、
彼女が3歳の時に、両親が離婚してからだった。
それまで3食たべていたのが2食になり、
そして、4歳の時に、
母親に児童養護施設の前に置き去りにされたのだと言う。
その後、母親は一度たりとも彼女に会いに来なかった。
「私は母親にも父親にも捨てられたんです。」
何年か経った頃、
先生から母親が亡くなった事を聞いたそうですが、
自分を捨てた憎い母親の葬儀など行くものかと、断った。
大人になった彼女は、ボーイフレンドとの間に子供が出来るが、
妊娠を知った彼は、彼女の元から蒸発したという。
それ依頼、彼女は働きながら女手一つで娘さんを育てていたのだが、
先日、医者からガンを宣告されてしまったのだ。
「もう、どうしていいか分からないんです。」と彼女。
素人目にも、今回の相談は難しそうだな。と感じました。
シングルマザーだけでも大変なのに、
頼れる親族は無く、
しかも、幼い子供を抱えて、自身はガンだと言うのです。
さっそく霊視が始まりましたが。
霊能者の方も、今回ばかりは難しい様で、
10分経っても、ただ黙って相談者の上の方を見るか、
目をつぶって考えるかだけでした。
10分も沈黙が続くなんて、今まで見た事もありません。
最悪、何も見えませんでした。
と依頼を断る事もあるかもしれないと思いました。
その時でした。
10分もの沈黙を破ったのは、
霊能者でも無く、相談者の母親でもありませんでした。
お母さんの側に座っていた子供が、
「i'm hungry.」(ママぁ、お腹すいた。)と言ったのです。
それを聞いて、霊能者の方も話す決心がついたのでしょう。
霊能者の方は、口を開くと、
「1つだけ、貴方が幸せになる方法があります。」と言ったのです。
さらに、霊能者の方は、こう続けました。
「貴方の両親が離婚した時、
お母さんは、苦しくなるのを承知で貴方を引き取ったのですよ。
そんな母親が、好き好んで貴方を捨てる訳無いでしょ。
霊視してみると、当時、お母さんは再婚する為に、
ある男性とお付き合いしていたんだけど、
その彼が、貴方に暴力を振るおうとしていたりして、
貴方を殺しかねなかったので、貴方を守る為に預けたのよ。
結局彼から逃げられなくても、亡くなってしまったけど、
貴方だけは守った。」
「そんなお母さんを、ずっと憎んでいるなんて良く無いわ。」
「どうすれば、いいんでしょうか?」
「今からでも遅く無いの。
今まで憎んでいて、ごめんなさい。って、
お母さんに謝ってあげて。
そして、3ヵ月間、天国に行ける様に祈ってあげて。
それから昔の先生に聞いて、
お母さんのお墓を探し当てて、お花を供えてあげて欲しいの。
仮に、見つけられなかったとしても、いいから。
貴方が探してくれた。というそれだけでも、
お母さん、喜ぶから。」
それから約1年後、彼女から手紙が来たという。
あれからすぐに、先生と連絡を取り、
大変だったが、お母さんのお墓を見つけて花を供えたという。
それから段々と運勢が良くなり、
ガンの手術も成功して、今は再婚に向けて男性と同棲しているという。
私はその報告を聞いて、
「ああ、それは良かったですね。
やっぱり、母親は見捨てなかったんですね。」と言うと、
少し沈黙してから、霊能者の方が、
「実はね、本当は彼女が推測していた通りだったの。
彼女の母親は、新しいボーイフレンドと付き合う為に、
邪魔になった彼女を捨てたの。」
私はそれを聞いて、
「Are you serious?」(マジで?)と叫んでしまいました。
「彼女の周りを霊視したけど、彼女を助けるものは何も無かったの。
唯一、可能性があると思ったのは、
逆に母親の罪悪感を利用する事だったの。
それには、どうしても母親との和解が必要だったのよ。」
「それにね。
病気って不思議なんだけど、
人を憎んでいると、なかなか良くならないの。」
霊能者の方いわく、
生前、どんなに毒親であっても、
亡くなったなら、許してあげると良いという。
そんな毒親は、生前の罪滅ぼしに助けてくれる事が多い。
「こんな母さんでも、許してくれるのね。
ありがとう。 ありがとう。
母さん、一生懸命貴方を助けるから。
母さん、今まで出来なかった分も、頑張るから。」
END