●メニューの値段。
占いの仕事をしていると、
たまにお店を経営しているという方からの相談があります。
店舗経営をされている方の相談は、
大抵が繁盛していないので困っているというケースです。
当然ながら、繁盛している店のオーナーは占いに頼る必要はないからです。
ある時、神田にある定食屋さんの奥さんから相談を頂きました。
今から10年以上も前の事です。
だから、まだコロナという大きな問題が無かった時代でした。
お店は、夫婦でやっている小さいお店で、
相談はやはり、段々とお客の入りが悪くなっているという問題でした。
そこで、思い切って少し改装するにあたって、この案で良いか診て欲しいという依頼でした。
私が見た限り、良い案だと思いました。
ついでに家相も診ましたが、今回の改装で良くなっていました。
つまり、私が特に直す所はありませんでした。
ただ、占い師あるあるですが、
何も正す所が無いと、報酬を受け取りにくいという面もあります。
別に何も悪い所が無ければ、それに越したことは無いのですが、
後で「占い師に頼まない方が良かったね。」と、言われそうで嫌な感じなのです。
そこで、お店のメニューを見せてもらいました。
写真も綺麗に撮れていて、なかなか良く出来ています。
しかし、ただ1点だけ気になった所がありました。
お店がある神田には、多くの大学のキャンバスがあり、
古本屋も多い若い学生の街です。
それだけに、メニューの値段も学生向きにワンコインで食べられる様になっていました。
お店のメーニューは下の様なものでした
①■カレー 500円 ②■かつ定食 500円
③■魚定食 500円 ④■かつカレー 500円
⑤■生姜焼き定食 500円 ⑥■親子丼定食 500円


さて、上のメーニューを見て、
私は、どこが1点だけ問題があると思ったのか分かりますか?
少し考えてみてから、先をお読みください。
私が上のメーニューを見て、1点だけ問題があると思ったのは、
全てが500円という点でした。
学生から見たら、どれもワンコインで食べられ、嬉しいかぎりでしょう。
でも、逆に言えば、特色の無い店です。
どれも同じ値段だと、○○を食べに行こうという風になりにくいのです。
また、どれも500円となると、選ぶのに迷います。
どれが特かなとか、カロリーは?など
メニューを選ぶだけで時間がかかる場合もあるでしょう。
小さな時間のロスの積み重ねが、お店の回転率の悪さに影響します。
ちなみに、奥さんの提案で、お店の中に漫画本の棚が設置されていました。
お客さんが待っている間に、漫画を読める様にという優しさからです。

でも、私は漫画本の設置も止めた方が良いと提案しました。
なぜなら、中には読みながら食べる人もいるだろうし、
食べ終わっても漫画を読む人もいるでしょう。
それによって、席を離れずお店の回転率も悪くなります。
特に小さい店なら致命的になる事もあります。
神田は食べ物屋が多いと聞きます。
その中で、特色が無いとやはり、
段々と他の店に客を取られていき、お店を改装しても、
やがてまた、段々とお客の入りが悪くなっていく運命を感じてしまうのです。
そこで私は彼女に、こんな質問をしてみました。
「上のメニューの内、
貴方が一番売りたいものは、何ですか?」
しかし、彼女は「・・・・・」 。 黙ったままでした。
そこで、質問を変えました。
「じゃあ、貴方が一番、得意だなと思う料理はどれですか?
どれが一番美味しいって言われます?」
それでも彼女は、メニューを見たまま、なかなか返事をしないので、
逆に私から言ってみました。
「もしかして、カレーじゃないですか?」
「ああ、はい、そうですね。」と彼女。
実は、私がカレーだと言ったのは、当てずっぽではありません。
メニューを見た時、なぜかカレーだけ2種類あったので、
カレーにはこだわりがあるのではないかと感じたからです。
私は更に、彼女にこう言いました。
「そうであれば、
店に来た人に、
なるべく貴方一番の自慢のカレーを食べてもらいましょうよ。
貴方の一番の料理をなるべく多くの人にアピールした方がいいですよ。
今日来てくれた人が、また来てくれる保証はありませんから。」
「えっ、どうやって?」と彼女。
「簡単です。
カレーを安くして、他を高くするんです。」
具体的に私が彼女に提案したのは、
カレーを480円にして、
他のメニューを540円にする事でした。
実は、その値段もあてずっぽではありません。
心理学的に言うと、人は十円台の値段が「6・7・8・9」は安く感じ、
十円台の値段が「1・2・3・4」は高く感じるのである。
これは、うなぎ屋の上・中・下と似ている手法でもある。
その店で一番売りたいというメニューを聞き、それをまず中に設定する。
その後、それより高い上と、中より少し劣る下を設定する。
多くのお客は自然と、中を選ぶものである。
つまり、一番売りたいものが売れるという訳。
あれから10年。コロナ過とかもあって、
その後、あの店は生き残っているか、気になって調べて見た。
すると、
今も、あの店は店名を変えて頑張って生き残っていた。
カレー専門店として。
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