●真っ裸の伯爵夫人。


今から約1000年以上前のイギリス

コヴェントリーという町は、レオフリク伯爵による重税に苦るしんでいました。





その税の取り立ては厳しく、

税金を払わない民衆には、拷問してでも税を取りたてました。

税金は肥料は馬などにも掛けられ、払えないという農民がいれば、

その家に取り立てに行き、食料を奪ってまで強制的に取りたてました。

「食料だけは、お許しください。

 それが無いと、飢え死にしてしまいます。」

「うるさい! 逆らうと承知しないぞ!」

こうして兵士たちが強制的に税に代わる物も搾取していったのです。



困った農民や町民たちは、町の役人に助けを求めますが、

町の役人たちも、レオフリク伯爵が恐ろしくて誰も口答え出来ませんでした。





そんな暴君・レオフリク伯爵に対して、

たった一人だけ、異議を唱える者がいました。





それが、レオフリク伯爵の美しい妻、レディ・ゴダイヴァでした。

彼女は、キリスト教の信仰が深く、聖母マリアを心から愛する優しい女性でした。

普段から慈善活動にも熱心で、

慈善活動をしながら目にした領民たちの苦しい状況を知り、



「なんと可哀想な事でしょう。

 このままでは、多くの人が飢え死にしてしまう。

 私がなんとか出来ないかしら・・・」



彼女は、領民たちが苦しんでいるのを見ていられず、

たびたび夫に対して、キツイ税の取り方は止めてと嘆願しました。

それに対して、レオフリク伯爵は、

 



「多少の犠牲は、仕方ないのだ! 

女が口を出す事じゃない!黙ってろ!

 もうこの話は、二度と話すんじゃないぞ!!」と、きつく叱りました。

当時のイギリスは、男尊女卑の世界だったのです。



それでも夫人は、夫に何度も何度もお願いしました。




余りの夫人のしつこさにあきれ果てたレオフリク伯爵は、

妻に、こんな難題をふっかけたのです。



人にはな、出来ない事もあるのだ。

 お前が、そこまで言うなら、

 全身真っ裸になって、馬にまたがり、

 コヴェントリーの町の端から端までを、裸のまま歩いてみろ!


 町の市場をよぎり、端から端まで渡ったならば、

 お前の要求は叶えてやろう。

 どうだ、出来まい!


レオフリク伯爵は、妻ゴダイヴァは貞操観念が堅く、

慎み深い淑女
である事を知っていた。

そんな貴族の彼女が、多くの農民や町民が行きかう昼間に、

真っ裸になり、馬にまたがり町を歩くなど、

絶対に出来ない事だと信じていたのです。


しかし、レディ・ゴダイヴァは、

「分かりました。

 では、私にそれが出来れば、お許し頂けますね?」と念をおした。



いいだろう。

 お前が出来たら・・の話だ。
」と約束するレオフリク伯爵。



レディ・ゴダイヴァが召使に馬の用意をさせ実行しようとすると、

焦ったレオフリク伯爵は、夫人を止めて言った。

「今じゃない。

 一週間後の町の市場がもっとも賑わっている昼間にやれるならやってみろ!」



そう言うと、夫人がしり込みしてしまう様に、

伯爵夫人の裸を見たいという多くの見物人を集めようと、

部下に命じて、密かに町中にこの話を流しました。

すると、その噂を聞いた町では、


「おい、知っているか、

 明日の昼間、あの美しいゴダイヴァ伯爵夫人が、

 素っ裸で馬にまたがり、この道を通るんだってよ!!」


ほんとか!!! スゲー!!



やがて、ゴダイヴァ伯爵夫人が裸になり町を歩く日がやって来ました。

夫人は裸になり、馬にまたがりました。

二人の女性の召使が検証の為に共につき、裸の伯爵夫人は町に向かったのです。



やっぱり恥ずかしい。

レディ・ゴダイヴァの体は震えていました。

全身を隠そうにも、馬の手綱を離すと落ちてしまいます。

恥ずかしさにレディ・ゴダイヴァは、もう気絶しそうでした。


 


でも、領民のみんながこれで救われるなら・・・・と頑張っていたのです。






やがて、この角を曲がると、一番賑やかな町の市場という所まで来ました。

レディ・ゴダイヴァは、勇気を振り絞って進みました。



すると、

何と言う事でしょうか?







いつもは、沢山の人で賑わっているはずに市場に、


誰も人がいないではありませんか?


人がいないのです。




市場だけではありません、

気づけば、町のどこへ行っても、人がいないのです。

 










実は、この話を聞いた町の役人たちは、

ゴダイヴァ伯爵夫人の優しい気持ちに感動し、

私達にも何か出来る事はないか。と考え、

役人たちは、町中の人に頭を下げ、

「ゴダイヴァ伯爵夫人は、たった一人で私達の為に、

 キツイ税金を撤廃する為に、

 町を回ってくれるのだ、

 いいか!

 誰一人、彼女の姿を見てはいけない。

 ドアを閉め、窓にはカーテンを引いて顔を出してはいけない。

 ゴダイヴァ伯爵夫人の恩に報いるのだ!!



こうして、誰もいない町となっていたのである。



レディ・ゴダイヴァの目から、涙が流れた。

ありがとう。
 みんな。」



こうして、無事約束を果たしたレディ・ゴダイヴァの願いは通り、

キツイ税金は撤廃されたのでした。


ちなみに、余談ですが、

町民のうち、たった一人だけこっそりと、レディ・ゴダイヴァの裸を見た男がいました。

彼の名前は、ピーピング・トムと言いました。

その後、

 

のぞき魔の事をピーピングという英語の俗語として使われる様になったといいます。




後に、このコヴェントリーの町の出来事は、

イギリス全土で知れ渡る様になり、コヴェントリーの町を訪れる観光客などが増え、

領民から重い税金を取らなくても済む様になったといいます。



現在、コヴェントリーの町には、

領民を救ったレディ・ゴダイヴァの銅像が建てられ、

日本人を含め多くの観光客が訪れています。






最後に、

 

こんな話を・・・







レディ・ゴダイヴァの勇気ある行動と深い愛に感銘を受けた、



ベルギーのチョコレート会社の創始者は、自分のチョコレートブランドの名前を、

彼女の名にちなみ、「GODIVA」とし、

会社のロゴデザインをレディ・ゴダイヴァの肖像にしたのである。

 



その後、「GODIVA」は、(日本ではゴディバと呼ぶ)

ベルギー王室の御用達とされ、多くの人を魅了する

チョコレートの最高級ブランドとして、

今も世界中の人に愛されている。



レディ・ゴダイヴァのロゴデザインと共に・・・・



END

参考:町の写真はtravel.jpより https://4travel.jp/travelogue/11599373