●5人の子供を残して死んだ母の絵馬。
今から約5年前の話です。
大学生だという女性から電話相談をいただいた時の事。
突然彼女が電話口で泣き出したので、どうしたのかと聞いてみると、
2週間前に、母親をガンで亡くしたという。
その時の事を思いださせてしまい、泣いたのだった。
お母様は、末期がんで余命幾ばくないというのに、
5人の子供達と遭う時は、いつも笑顔で、
決して泣いたりしなかったという。
ある時、彼女は一人でお見舞いに行った時、お母さんに、聞いてみた。
「怖くないの?」
すると、お母さんは、彼女に、
「お母さんから神様にお願いしたの。
だから、全然怖く無いのよ。
それより、これからは貴方がお母さんの代わりになってあげてね。
泣かないで、いつも明るく生きるのよ。」
その言葉を聞いた彼女は、昔のある出来事を思い出したという。
その出来事とは、7年前にさかのぼります。
当時彼女はまだ小学生。
お母さんも元気に働いていました。
ところが、突然、三女のヒカリが小児肺炎で入院してしまったのです。
だいぶ後になって、お母さんから聞いた話ですが、
ヒカリは、死ぬか生きるかというほど深刻な状態な時があったという。
幼児の肺炎の死因は、全体の5位という程、恐ろしいのである。
その時、家族全員で病院にお見舞いに行ったそうだが、
看護婦さんから、面会謝絶だという事で、
お母さんさえも会えなかったという。
今から考えると、マイコプラズマ肺炎だったのかもしれないと彼女は言う。
マイコプラズマ肺炎の場合、ツバや咳などから周りの人に感染してしまうので、
お見舞いに来た人に移る可能性があり、面会謝絶になる事があるという。
仕方なく、病院を出たのだが、
そのまま何もしないで家に戻るのも、なんなので、
家族全員で、近くの神社にお参りに行った。
そして、絵馬を3つ買った。
本来なら絵馬を1人1つづつ買うの普通なのだが、
余りお金が無かった。
子供2人で1つ。そしてお母さんは1つ。合計3枚を買った。
それぞれ時間をかけて、願い事を書き、絵馬掛所(えまかけどころ)にかけた。
彼女はその時、お母さんが絵馬に、どんな事を書いたのか気になって、
「お母さんは、なんて書いたの?」と聞いたという。
すると、隣にいた弟が、
「人が書いたものを見ちゃダメなんだよ。」と言ったので、
結局、見れずにみんなで帰ったという。
しかし、家に帰っても、お母さんが何を書いたのか気になって気になって、
眠れなかったという彼女。
そこで、翌日、学校の帰りに、
一人で神社に行き、お母さんが書いた絵馬を探した。
大体の場所は覚えていたので、母さんの絵馬は直ぐに見つかった。
そして、裏返してみると、こんな事が書いてあったという。

「神様、どうかヒカリをお助けください。
私が身代わりになっても構いません。
そして、他の子供たちも健康に育ちます様に。
もし、子供達が病気になる運命なら、
どうか、
私を病気にしてください。」
私はその話を聞いて、
「貴方のお母さんは、立派な方だったんですね。」 と言って、
ある僧侶と彼女のお母さんは似ているという話をした。
それは、現在中国の一部となっているチベット自治区に、
チベット自治区
一人の立派な僧侶がいた。
しかし、ある時、治療困難な場所に末期がんが出来、余命宣告されてしまう。
それでもお見舞いに来た人を、逆に励ましたり、教えを説いたりして、
とても余命宣告されてる人には思えなかったという。
そんなある日、
お見舞いに来た人が、その僧侶に聞いた。
「死ぬのは、怖くないのですか?
病気になってしまって、悔しいという気持ちは無いのですか?」
すると、その僧侶は笑顔で、こう答えたと言う。
「この世界で、
誰かがこの病気を経験しなければならない。というのなら、
それは私で、いいのですよ。」
END