●幸せの鳥:鳩(ハト)。
皆さんは、ノアの箱舟をご存知でしょうか。
大洪水によって40日間、海の上をさ迷ったノアの箱舟でしたが、
ある日、ノアの元に一匹のハトが飛んできます。
そして、その鳩はオリーブの葉を口にくわえていました。
それまでは、見渡す限り海で、もう陸地は無いだろうと絶望していたのですが、
オリーブの葉っぱを見たノアは、まだ陸地があるんだと希望を抱き、
ハトが飛んで来た方向に船の舵をとりました。
そしてノアの箱舟は、無事に陸地に到達する事が出来たのでした。
それ以来、ハトは幸せを運んで来ると、信じられて、
オリーブの葉っぱを咥えたハトは、色々な図案やマークに使われています。
ちなみに、みなさんがよく見る国連のマークの外側の葉っぱも、オリーブで、
上の話から採用されたものです。
1967年、現在のモルドバ共和国(当時はまだソビエト連邦)に一人の女の子が産まれます。
名前は、エミリー。
彼女の家は、共産主義(ソビエト連邦)が禁じている宗教を信仰していた為に、
常にKGB(ソ連の秘密警察)にマークされていました。
秘密警察に監視されながらの生活は大変で、親子全員が食べていくのも困難でした。
彼女は小学生の時、子供がいない家族に養子に出されてしまいます。
それでもテレビなどでオペラを見ると、
将来は自分も音楽家になりたいとテレビの前でオペラを見よう見まねで歌いました。
高校ではバイオリンとピアノの弾き方を学びます。
ところが、1991年、彼女が住んでいた地域がソビエト連邦から独立する機運が高まります。
彼女は命の危険を感じて、政治的亡命というノアの箱舟に飛び乗り、新天地アメリカに渡ります。
着いた地は、ミズーリ州でした。
そこで彼女は老人ホームやレストランで働きながら、一生懸命に英語を学びました。
その後、ワシントン州(私が留学していた州)のバンクーバー市に移り住み、
今まで貯めたお金でバイオリンを買い、
教会で子供たちなどにピアノやバイオリンを教える先生になりました。
いつしか自分が音楽家になるよりも、子供達に教える職に就く事になりました。
彼女の授業は好評で、優しい彼女の性格から60人もの生徒がつきました。
そんな時でした。
彼女に最初の不幸が訪れます。
突然具合が悪くなり、検査すると肝臓とすい臓が悪い事が分かりました。
すると、今まで唯一連絡を取り合っていたロシア出身の友人に、
貴方の病気を治してくれる病院がこっちにあるから、ロサンゼルスに来なさいよ。と言われます。
エミリーはその病院で5ヶ月間治療すると、段々と体調は回復しました。
さあ、これからまた子供達に音楽を教えようと思った矢先でした。
金銭的に彼女を援助していた友人が突然亡くなったのです。
大変です。病院への支払いもまだ完済していないし、
このままでは、今月のアパート代も払えません。
直ぐに音楽の仕事を再開させましたが、世間はそんなに甘くありません。
そんな急に多くの生徒が集まるはずもありませんでした。
このままでは、食べるだけじゃなく、アパート代も払えなくなるのは明白でした。
その時です。
「そうだ、私にはバイオリンがあるんだ!」
そうひらめくと、彼女はバイオリン片手にストリートに飛び出します。
路上でバイオリンを弾いてお金を稼ぎ始めたのです。
バイオリンのお蔭で、なんとか生活できる様になりました。
少し余裕が出来た彼女は、元来動物好きだったので、
余ったお金を、野良猫やハトなどにも食べ物を分け与える様になりました。
一緒に頑張ろうね。
街では、ハトに餌をやりながらバイオリンを演奏している女の人がいるよ。
と噂されるようになります。
モールなどは、彼女が動物を助ける為にかったキャットフードや鳥の餌を買って、
「ハトに餌をやるストリートバイオリン弾き」として、知られる様になります。
ある時、彼女が路上でバイオリンを弾いていると、道の上に怪我したハトが横たわっていました。
それを見ると、動物好きな彼女はほっておくことが出来ません。
路上ライブを中断すると、ハトを助けるために一晩中介護して助けたといいます。
しかし、彼女に更なる不幸が襲い掛かります。
彼女が弾いていたバイオリンは100万円もする高価なものでした。
女ひとりで、路上で高価がバイオリンを持って弾いている。それも夜も。
ある日、彼女は大切なバイオリンを取られてしまいます。
唯一の財産だったバイオリンを取られてしまった彼女は、泣きました。
しかし、泣いている暇はありません。
お金を稼がないと、アパートを追い出されてしまいます。
「そうだ、私にはまだ、手がある。ピアノを弾く手があったんだ。」
そう思い直すと、ストリートでも弾ける電子バイオリンを借りて、
ストリートで電子バイオリンを弾き始めました。
ところが、路上ライブの場所にバスに乗って向かう途中でした。
心無い人に、後ろから突き飛ばされて、転んだ拍子に手首を骨折してしまったのです。
そして、とうとう家賃も払えなくなりました。
彼女は大家さんに泣きつきました。
「どうか、どうか、手が治るまで待っていただけませんか?」
すると、大家さんは、
「ダメだ、金が無いなら、今すぐ出てけよ!」
「そんな、こんな時期に家を失ったら、死んでしまいます。」
「ふん、勝手に死ねよ。」
こうして、彼女は住む家さえ失ってしまったのでした。
駐車場に段ボールを敷いて、その日は泣いて過ごしました。
エミリーは、すでに51歳になっていました。
「ああ、神様、もう私には何もありません。
バイオリンを盗まれ、
ピアノを弾く手も失いました。
そして、住む家さえ失ってしまいました。
もうダメです。」
残ったお金でパンを買うと、ハトの元に行き、ハトさんに言いました。
「ごめんね。
もう、これが最後かもしれないのよ。
よく味わって食べてね。」
すると、ハトが「ポッポー」と小さく鳴きました。
それを見たエミリーは、
「そうだ、まだ私には声があった。
歌を歌おう。」
そう思いたつと、その日から路上で歌う様になりました。
それから、「路上でハトに餌をあげながら歌うホームレスの女がいる。」と噂され様になります。
しかし、秋風が吹き始めると、
50過ぎのホームレス女にとっては、寒さがきつくなります。
雨や寒い時は、地下鉄のホームに逃げ込みました。
すると、地下鉄には、他にも行き場を失ったホームレスが何人か避難していました。
最終電車が行ってしまったホームには、お客はいません。
だから、そこで歌っても、お金を稼ぐ事は出来ません。
でも、彼女は歌いました。
暗く沈んでいるホームレスの人達が、少しでも私の声で癒されれば、嬉しい。
しかし、その行為が奇跡を呼びます。
ある日の事でした。
彼女が歌っていると、向こうから一人の警官が近寄って来ます。
ごっつい体の黒人の大男の警官です。
「ああ、また注意される。」彼女は逃げようとします。
しかし、近寄って来た警官は、彼女に意外な事を言います。
「写真撮ってもいいですか?」
彼女は断りましたが、何度も頼んでくる警官に、
あんまり断っていると、後で何をされるか分からないと思い、しぶしぶ承諾しました。
すると、翌日、彼女の映像がテレビに乗ったのです。
実は、エミリーさんが歌っている歌声があまりにも素敵だと思った警官が、心を打たれ、
彼女が歌う姿の動画をツイッターで公開したのでした。
すると、その映像が瞬く間に全米中に広まり、なんと100万人以上の人が見たのです。
やがて、この素晴らしいオペラを歌うのは誰だと、南カリフォルニアは大騒ぎになります。
テレビで取り上げられ、地元のイタリア商店街に招待されて歌える様になり、
彼女をホームレスから救おうというクラウドファンディングも立ち上がりました。
その額は今日11月22日現在で880万円にもなっています。
それだけではありません。
グラミー賞候補にもなったことがある音楽プロデューサー、ジョエル・ダイアモンド氏が
現在、彼女、エミリー・ザモールカさん(Emily Zamourka)と契約してCDを出すといいます。
今、彼女は沢山の人達に支援され、本当に歌手になろうとしています。
後日、恩人となった黒人警官と感激の再開を果たしました。
最後に、
多くの人が感動したツイッター、
黒人警官が、地下鉄で歌うホームレスの彼女を写した映像がこれです。
箱舟の画像はGod's War Planよりhttp://godswarplan.com/bible-history-beginning-of-the-world-eden-noah-babel-mesopotamia/08-04-ark
モルドバの地図は静岡市より https://www.city.tsuruoka.lg.jp/bunka/sports/sports-event/turuokahosutotaun.html
記事と写真はMail Onlineより https://www.dailymail.co.uk/news/article-7632595/Subway-opera-singer-received-NONE-GoFundMe-money.html










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