●呼び鈴が鳴ると、必ず吠えだす犬。
アニマルコミュニケーターでもある霊能者の方の所に、
こんな相談が舞い込んできた事があります。
「家の呼び鈴が鳴ると、誰が来ても必ず吠えだして、
帰っても、しばらく吠えているので困っています。」
依頼してきたのは、シアトルに住む主婦の方で、
彼女は3匹の犬を飼っているのだが、
その内のオスのヨークシャーテリアのサイモンだけが、
とにかく家の呼び鈴が押されると、それが誰でもあっても吠えるのだと言う。
それもその人が家に入って来なくても、帰った後でも、
必ず1、2分は、あちこち歩き回りながら吠え続けているのだそうだ。
友人が来た時はもちろん、
宅配や郵便屋さんが来ても吠え続ける。
家族がうるさいから吠えるなと言っても止めないし、
エサをあげても止めないで、その間とにかく吠え続けるという。
まだ小さい頃は、そんな子では無かったのに、
いつからか、呼び鈴が鳴ると、必ず吠えだす様になってしまったという。
もう一度、昔の様に、良い子にならないものかという依頼である。
こういう依頼の場合、出張鑑定する事が多いという。
なぜなら、実際家の呼び鈴を押して、どんな感じか、本当に誰でも吠えるのか、
そして、実際にその音をさせて吠えた所で、その犬に理由を聞くからである。
今回は私も出張鑑定に同行した。
霊の相談と違って、ペットの相談は、なんか楽しい。
私も昔はスピッツを飼っていた事もあり、犬は大好きだったし、だいいち、
動物と人間がコミュニケーションを取るなんて、なんて素敵な事だろう。
さっそく私たちは、依頼主の家に赴いた。
家の前面に綺麗な芝生が広がる、大きな平屋の一軒家だった。
日本にある一軒家は、2階建てが多いが、
アメリカの場合、竜巻やハリケーンが多いせいか、
平屋+地下室という構造の家が多い気がする。
つまり、地下室は家が竜巻で飛ばされた時の避難場所にもなる。
また土地が広いので、わざわざ狭い土地に2階建てを建てる必要もないし、
平屋の方が建設費用も安い。
そんな事を考えながら、呼び鈴を押すと、
さっそく家の中で、犬がやたら吠える声がする。
多分、依頼のあったヨークシャーテリアのサイモンだろう。
ヨークシャーテリアは、元々はイギリスの犬で、
家や店を荒らすネズミを捕まえる為に作り出された犬だという。
それゆえに、チワワについで小型犬なのに、勇敢な犬である。
そんなワンちゃんが、今回の依頼だ。
私たちは居間に通されると、さっそくサイモンと対面した。
奥さんが言った様に、サイモンはあちこち歩き回りながら、まだ吠え続けている。
全体的に黒色の毛が多いが、眉毛の所と口周りが白茶色で、
人間で言うとオジサンの様な出で立ちだが、とても可愛い。
私たちはすぐには霊視を始めなかった。
というのは、サイモンがまだ興奮状態では、意思の疎通も難しいのだと言う。
そこで、サイモンが吠えやむまで待って、気持ちが落ち着いた感じになってから、
霊能者による霊視が始まった。
霊視と言っても、今回の場合は、テレパシーと言った方がいいだろう。
霊能者の方は、ちょこんと絨毯の上に座っているサイモンをじっと見つめて、
全精神を集中させている。
テレパシーというと、私が昔、映画「猿の惑星」で地底人とテレパシーで話した様に、
お互いが見つめ合いながら、声も出さずに会話するというイメージだが、
動物と人間とのテレパシーは、若干違う様感じだ。
霊能者の方は、サイモンの方をじっと集中して見つめているのに、
サイモンの方はというと、そっぽを向いたままである。
それでもちゃんとテレパシーでの会話が交わされているのだという。
後から聞いたのだが、この時霊能者の方は、サイモンに、
「さっきはなんで、ずっと吠えていたの?」と聞いたという。
それに対して、サイモンの答えは意外なものだった。
霊能者の方が依頼主の奥さんに語ったのは、概ねこんな感じだった。
サイモンいわく、
ある日、家の呼び鈴が突然なると、沢山の人やモノが入ってきて、
ママをどこかに連れて行ったのだという。
そして、家の中は悲しみと慌ただしさに支配され、
一番下の子はずっと泣いているし、御主人もすぐにどこかに行ってしまったという。
そして結局その日は、サイモン達に夕飯も出なかったらしい。
霊能者の方が奥さんに、
「そんな心当たり、なにかありますか?」と聞くと、
奥さんが言うには、今から約3年前に、
夕飯の支度をしている時、脳梗塞で倒れた事があったそうだ。
幸い軽い脳梗塞で今は後遺症も全然無いそうだが、
その時は、救急車が来て大変な騒ぎだったという。
考えてみれば、その頃からサイモンは家のベルが鳴ると吠え続けていたのだった。
霊能者の方いわく、
サイモンは、ママがいなくなるのはやだし、
家族が悲しみの沈んだ姿をもう見たくないと、
今もその時の事が尾を引いていて、家のベルが鳴ると、
また何か悪い事が起きるんじゃないかと、
怖くて怖くて吠えてしまっていたのだろうという。
最後に霊能者の方は、奥さんにこんなアドバイスをして家をあとにした。
もし、可能なら、家の呼び鈴の音を、違う音に変えてみてはどうでしょうか?
そして、変えたら、最初の頃は、呼び鈴が鳴るたびにクッキーか何かをあげて下さい。
サイモンに、この音は怖くないんだよ。って覚えさせてあげてください。
その後、呼び鈴の音を変えると、
サイモンは吠えなくなったと言う。
この音がなっても、
ママはどこにも行かないのよ。 サイモン。
END