●猫は自分の死を予知できるのか。

 

 


昔から、猫は自分の死を予知すると、

 

 

どこかに出かけて行って見知らぬ所で死ぬと言われていますが、

 

 

本当にそうでしょうか?

 

 

野良猫の後をいつもついて行く訳にもいかないので、

 

 

実際の所、確かめるのは難しいかと思います。

 

 

 

はたして、

 

 

猫は自分の死を予知できるのでしょうか?

 

 

 


今日は、私なりの結論を書いてみたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その野良猫と出会ったのは、今から約1年前でした。

 

 

全身がねずみ色の猫なので、ちょっと暗がりに入ると、

 

 

陰とまぎれて探すのが難しい色でした。

 

 

首輪が無いし、色もねずみ色なので、すぐ野良だと思いました。

 

 

仮に、その野良猫の名前をザトー君と呼びましょう。

 

 

「黒系の色は人気が無いから、お前も野良なんだな。」

 

 

当時、スズメに餌をあげていたので、

 

 

どうやらスズメ目当てにうちの庭に来たのでしょう。

 

 

「お前もお腹が空いてるんだな。」

 

 

そこで、私が飼っている猫のミミの食事を分けてあげました。

 

 

分けてあげたと言っても、ミミの為に買ったのに食べてくれなかった種類です。

 

 

ミミは保護猫で、約3ヵ月くらいの時に家にやってきてウチの子になりました。

 

 

当初は、何が好きなのか分からなかったので色々な種類を買って与えた結果、

 

Shebaが好きな様で、すべてShebaを買う様になりましたが、

 

それも1年だけで、好みが変わったのかShebaの粒が大き過ぎるのか、

 

Shebaを食べなくなりました。

 

現在は、MonPetitの7種のブレンド(しらす入り)と(小魚入り)それと、

 

懐石Zeppinの本枯れ節添えと、Aixiaのかつお味だけを交互に食べています。

 

他の種類は食べません。たまに黒缶のかつおをあげます。

 

 

 

 

野良猫ザトーに食事をあげると、喜んで食べました。

 

 

すると、次の日もやって来て、木の下で私を待っています。

 

 

そうなると、なんか可愛くなって、

 

 

ザトー様に食器を買い、そこにペットフードを入れてあげるようになりました。

 

 

ただ夜中に雨が降ると、残したペットフードがふやけてしまい腐りやすくなってしまいます。

 

 

そこで、庭の屋根付きのテラスの上に置いてあげました。(お水も隣に)

 

 

 

 

それからは、ほぼ毎日来るようになり、

 

 

私が庭に来るまでは、庭で日向ぼっこして待つ様になり、

 

 

私が鳥達にエサをあげ終わるの待っていて、私が家に戻るとテラスに上がってきて食べるのが常でした。

 

 

多分、ザトーは今まで一度も人に飼われた事は無いのでしょう。

 

 

もうザトーに1ヶ月も食事をあげている私にさえ、姿を見ただけで威嚇してきますし、

 

 

近づくともっと威嚇してくるのが常でした。

 

 

近づけても1mです。1m以内に近づくと、威嚇しながらゆっくりと逃げます。

 

 

用心深いというよりは、プライドが高く常に威勢を張っているという感じでした。

 

 

 


やがて、その性格が災いを呼ぶ事になります。

 

 

 

 

 

私が一番ザトーの事を可愛いと思ったのは、

 

 

ある日、私が車で出かける時に、隣の室外機の上に寝転んで、

 

 

ずっと私の方を眺めていた時です。

 

 

柵があるとはいえ、私との距離はわずか40cmほどなのに威嚇もしません。

 

 

両目を開き笑顔で、ただ私を見送ってくれている気がしました。

 

 

写真を撮っておけば良かったと思います。

 

 

ザトーもすっかり私の家が好きになったのか、

 

 

夏の暑い日には、日陰のコンクリの上で寝転んで時を過ごしていました。

 

 

そんな姿も写真に撮っておけば良かったと思います。

 

 

 

 


そんなザトーに悲劇が訪れたのは、今から約半年前の夜中の2時でした。

 

 

 

庭で激しく猫同士が威嚇し合っている鳴き声がするのです。

 

 

当時、スズメを狙ってか、ウチの庭にはザトーの他にも2匹の野良猫が来ていました。

 

 

1匹は黒と白が交互になっている猫で、この猫とは、

 

 

昼間に距離20cm位で威嚇しあっているのを目撃した事がありますが、

 

 

黒白の猫が静かに退散するという結末を目撃した事がありました。

 

 

もう1匹の猫はザトーよりもやや大きなチャトラの猫でした。

 

 

この猫は相当お腹が空いているのか、

 

 

雨でふやけて置いといたエサも残さず食べている所を見た事がありました。

 

 

実は、スズメにエサをあげる様になる1年前に、庭にチャトラの猫がいた事があります。

 

 

同じ猫かどうかは分かりませんが、

 

 

それに気が付いたのは、ウチのミミがやけに興奮しているので、

 

 

ミミが見ている窓の外をみてみると、チャトラの猫がいたのです。

 

 

もしかしたら、ミミ目当てに来たのかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

やがて、威嚇し合う声から、激しく走り回りながら威嚇する声に変わりました。

 

 

喧嘩が始まったのです。

 

 

猫同士の縄張り争いです。

 

 

やや家から遠い所でも声が聞こえたので、1方が1方を追いかけて行ったのでしょう。

 

 

翌朝、庭に出てみると、雑草があちこちでなぎ倒されていて、

 

 

激しい喧嘩が庭で行われたのを物語っていました。

 

 

 

 

そして、その日の午後でした。

 

 

庭にザトーが現れたのですが、左目がつぶれていたのです。

 

 

昨夜の喧嘩で負傷したのは明らかでした。

 

 

ザトーには悪いけど、前よりも顔が怖く見えます。

 

 

眼帯でもしていれば違うのでしょうが、片目をつぶったままの顔で威嚇されると、

 

 

以前よりも迫力があり、怖く見えました。

 

 


体に怪我は無いようでしたが、片目だけつぶれている様でした。

 

 

その頃から、あのチャトラの猫を見ませんので、

 

 

ザトーは縄張り争いに勝ったのかもしれません。

 

 

でも、その代償は余りにも大きなものでした。

 

 

 

 

その時、私が一番心配したのは、

 

 

また今度こういう事があったら、今度はもう片方の目を失ってしまうという事でした。

 

 

野良猫がメクラになったら、生きていけません。

 

 

 

 

そこで、

 

 

私はザトーに食事をあげる前に、

 

 

じっとザトーを直視しながら、さとす様に言い聞かせました。

 

 

「もう喧嘩しちゃダメだよ。

 

 夜は危険だから、ウチに来ちゃダメだよ。」

 

 


それから2週間、毎日の様に何度も言い聞かせました。

 

 

ザトーは「くどいなぁ。」と思いながらも、静かに聞いていました。

 

 

 

 

 

 

それからは、ザトーは食べ終わると、日が沈む前にどこかに消えて行く様になりました。

 

 

毎日来ていたのも、1週間来なかったり、続けて5日来たりと、

 

 

かなり変則的に訪れる様になりました。

 

 

長い事見ないと、どこかで死んでいるのではないかと心配になったものです。

 

 

やがて冬が近くなってきて寒くなってきました。

 

 

冬が無事越せるように、ドライペットフードの他に、

 

 

缶詰のペットフードと、小魚を一匹と、ソーセージを輪切りにしてレンジでチンしたものを、

 

 

あげる様にしました。

 

 

ただ、ザトーは全部食べたのは最初の一回だけで、次からは、

 

 

ソーセージは残す様になり、ソーセージは他の猫が食べた様で、朝にはカラになっています。

 

 

ドライフードもCaratの腎臓の健康に配慮したものでビタミン強化のものにすると、

 

 

ザトーはそれが一番好きで、それが入ったボールだけをよく食べる様になりました。

 

 

最近は私も、野良同士が喧嘩しない様に工夫するようになりました。

 

 

常に置いておくペットフードは庭の前に置き、ひいきの野良猫には、

 

 

その庭とは反対側で、その猫が来た時だけそこであげる様にしました。

 

 

すると、ひいきの猫はエサも何も無い場所でずっと待っててくれるので喧嘩も無くなりました。

 

 

 

 

 

ザトーは無事冬を越せた様でした。

 

 

3日も見ないと心配でしたが、元気な姿を見ると威嚇されても嬉しいです。

 

 

 


ところが、今月の4月に入ってもザトーは庭に現れません。

 

 

もう1週間もどこに行ったきりになっているのでしょうか。

 

 

誰か、片目の猫でもいいという人が飼ってくれているのならいいのですが。

 

 

そんな心配をしていた4月5日でした。

 

 

 

 

 


ザトーが庭に現れたのです。

 

 

 

 

こんどは右目を失っていました。

 

 

きっと、必死の思いで、私の家にたどり着いたのでしょう。

 

 

「お前は、とうとう座頭市になってしまったんだね。」

 

 

長い間、何も食べていなかったのかもしれません。

 

 

歩く姿がもフラフラという感じでした。

 

 

すぐに食事を与えると、ヨロけながらも近づいて食べてくれました。

 

 

ただ少し深くなっている器は食べにくそうにしていたので、

 

 

すぐに100円shopに走り、お皿に近い器を買ってくると、

 

 

この方がずっと食べやすいという感じで食が進んでいる様でした。

 

 

でも、口の中が怪我している様で、何度も何度も噛んで飲み込んでいる感じでした。

 

 

そんな状態なので、ドライのペットフードは食べられない様でした。

 

 

 

 


それよりも、これからが問題です。

 

 

 

この子は、もうこの庭から出たら危ないし、生きていけない。

 

 

そこで、テラスの上に段ボールの家を作ってあげました。

 

 

と言っても簡単なものです。

 

 

やや横幅の大きな段ボール箱をスーパーから貰ってきて、それを横にして、

 

 

100円shopで買ってきたバスマットを底に敷いただけのものです。

 

 

すぐには入ってくれませんでしたが、

 

 

夕方が近づき、他の猫が来るかもしれない時間が近づくと、

 

 

ザトーは気に入ってくれた様で、段ボールの家に入ってくれました。

 

 

私は座頭に近づくと、こう言い聞かせました。

 

 

「ずっとここに居ていいんだよ。」

 

 

 

 

その日から、座頭はずっと庭から出ないで、ここで暮らす様になりました。

 

 

 

夜はずっと家に入り、朝の5時ころになり、スズメの鳴き声がすると、

 

 

庭に出ているというパターンが始まりした。

 

 

 

 

座頭をよく観察すると、まったく見えないというのでは無い様です。

 

 

新しくつぶれた右目はまったくダメでしたが、

 

 

半年前につぶれた左目がかすかに開いていて、私が置いたお皿の位置がかろうじて分かる程度です。

 

 

 

座頭は安心した様で、庭に居る時は、いつもの木陰に寝転んだり、

 

 

庭の右端にいたと思ったら、庭の左端にいって寝転んだりと、日光浴を楽しんでいる様でした。

 

 

水は大切だと思い、庭の5か所に水を入れたお皿を置くようにしました。

 

 

水を探しだして飲んでいる姿を見ると嬉しくなりました。

 

 

「えらいぞ、座頭。」

 

 

 

 

 


しかし、更なる試練が座頭を襲います。

 

 

ここに来た時にすでに口の中を怪我している様で、ドライフードは食べられませんでしたが、

 

 

その怪我が進んでいる様で、柔らかい小魚も食べられなくなりました。

 

 

そこでスーパーでシーチキンの水煮で、味付けしていない素材そのままというのを買ってきて、

 

 

更にそれを砕いて細かくてあげる様にしました。

 

 

頑張ってモグモグして食べていましたが、それも3日間だけで、

 

 

やがて、それも食べなくなりました。

 

 


もう噛む力が無くなってしまったのでしょうか。

 

 

でも食べないと。座頭は確実に死んでしまいます。

 


悩んだあげく、D2に行って液体状のチャオチュール(ピューレ状の食事)を買ってきました。

 

 

すると、嬉しい事にお皿に出したものを全て舐めて食べてくれのです。

 

 

チャオチュールって結構高いです。20本800円位ですが、

 

 

嫌いになったら困ると思い3種類買ってあげました。

 

 

座頭は舐めて食べられるならと、一日10本食べてくれました。

 

 

高くても、座頭が嬉しそうに皿をカラにしてくれると嬉しかった。

 

 

 


ところが、日に日に食べる本数が少なくっていくのです。

 

 

毎晩神様にお願いしました。

 

 

「どうか、座頭が食べれる様になりますように。」

 

 

しかし、座頭の食欲はどんどん減退していったのです。

 

 

6本になり、4本になり、1本になり、残りを残す様になってしまったのです。

 

 

 


もう私の力では、ダメだ。

 

 

 

私は千葉県の動物愛護センターに電話してしましました。

 

 

「うちの庭に、ほとんど目が見えない野良猫が迷い込んで来ました。


 普通の餌を買ってきて与えたのですが、歯であまり噛めないようで、よう食べません。


 多分どこか悪いのかもしれません。フラフラとしか歩けないようです。


 噛まれると怖いので、あまり近づいていません。


 どうしたらいいでしょうか?」

 

 


何でもいいからアドバイスをもらえないかと、電話してしまい迷惑をかけてしまいました。

 

 

電話に出た方は、ここでは野良猫を捕まえるという依頼になるので引き受けられないといいます。

 

 

もし、迷惑なら、その猫を庭から追い払ってください。と言われました。

 

 

私が捕まえて、そちらに連れて行ったら、どうなりますか?と聞くと、

 

 

それなら譲渡会で引き取り手を探してくれると言います。

 

 

ただ、譲渡会でも残ってしまったら、どうなるのか聞くと、殺処分だといいます。

 

 

両目をほぼ失ってる座頭を引き取ってくれる物好きな人など、きっといないでしょう。

 

 

座頭を捕獲しても殺処分だと思いました。

 

 

係りの人は、「他に聞きたい事はありますか?」と聞いてきましたので、

 

 

「もし、捕獲して去勢しないといけない場合は、無料でしてくれる所はありますか?」

 

 

と聞くと、係りの方は、「そういう場所があるというのは聞いた事はありますが、

 

 

こちらでは、一か所も知りませんので、教えられません。」と言われました。

 

 

 

 

 

やがて、座頭は半分も食べられなくなり、やっと水だけを飲むだけとなりました。

 

 

それでもフラフラしながらも、庭に出ると、じっと寝て過ごしていました。

 

 

このころも、私が近づくと威嚇はするのですが、こころなしか優しい威嚇の声になっている気がしました。

 


そして、夕方が近くなるとテラスの上に作った段ボールの家に戻ってきて、

 

 

中で寝てくれるのです。

 

 

 

 

 


ところが、4月の19日でした。

 

 

その日も夕方になる2時間も前に、段ボールの家に入っていました。

 

 

ただ、夕方もう一度鳥のエサをあげに庭に出た時、

 

 

段ボールの中にいたはずの座頭がいません。

 

 

どこに行ったのかと、庭のあちこちを探したのですが、いないのです。

 

 


私は、その瞬間、

 

 

座頭は、死に場所を探しに行ったのだ。」と思いました。

 

 


念の為に最後にテラスの下を草をかき分けて調べてみると、

 

 

テラスの下に潜り込んで、じっとしている姿を見つけました。

 

 

座頭が今までテラスの下に行った事など、私が知っている限り1度もありません。

 

 

見つけましたが、やはり死に場所を探しに行ったのだと、

 

 

座頭の意思を尊重して声はかけませんでした。

 

 

 

 


私も家に戻ると、覚悟しました。

 

 

その翌朝、2時頃でした。

 

 

無性に座頭の事が頭に浮かび悲しくなりました。

 

 

その瞬間、座頭が死んだ。と思いました。

 

 

 


翌朝、行ってみると、座頭は横に横たわっていて亡くなっていました。

 

 

私は座頭が、自分の死を予知して、

 

 

安全な段ボールの家にいたのに、あえて危険な外に出て、

 

 

しかも今まで一度も行った事が無いテラスの下を死に場所に選んだのだと思いました。

 

 

 

 

 

 

その時、私は初めて座頭を触りました。

 

 

まだ少し温かく感じました。

 

 

何度も何度も、撫でてあげました。

 

 


「座頭、お前はえらいよ。

 

 いい子だ、本当にいい子だ。

 

 座頭、お前は、ウチの子だ。

 

 最後は、野良じゃないぞ、野良じゃないぞ、

 

 

 お前はウチの子、ウチの子として亡くなったんだよ。

 
 今度生まれてくる時は、幸せになるんだよ。」

 

END