●浮気して私を捨てた母。
世の中には、母親の愛情を知らずに育つ子供は沢山います。
でも、その上に、
母親に捨てられたという思い出したくも無い思い出まである人は少ないでしょう。
ある日、
そんな生い立ちを経験したという女性が、霊能者の所に来た事があったそうです。
彼女の名前をエレナと言い、現在2人の子供とご主人の4人暮らしだと言います。
そんな彼女は1ヵ月程前、とても不思議な体験をしたと言うのです。
彼女(エレナ)は、自分の生い立ちから話し始めました。
彼女の両親は、まだ2人が大学生の時に知り合い、恋仲になり、
結婚する前に彼女を産んだそうです。
つまり、いわゆる出来ちゃった結婚だったそうです。
ところが、エレナがまだ1歳10ヶ月の時、
母親のアイリスは、なんと他の若い男と浮気して、
幼いエレナを捨てて、駆け落ちして出て行ったしまったというのです。
その時以降、エレナはとても辛い子供生活を送ったそうです。
父は2年後、新しい奥さんを迎え、エレナの継母となりました。
最初は優しかった継母も、自分の子供が出来るとエレナの事は二の次三の次になり、
次第に雑用や皿洗い、ゴミ処理の仕事は全部エレナの担当となったそうです。
当時、家には父の母親父親の他にお祖母さんも一緒に暮らしているという大家族でした。
エレナにとって、一番辛かったのは、雑用仕事や皿洗いでは無かったといいます。
何よりも辛かったのは、他の家族から、何かと言えば、
「浮気した女の子供」と陰口を言われた事だったといいます。
その上、彼女が8歳になるまで、学校にも行かせてもらえなかったといいます。
日本ではとても考えらえない事ですが、アメリカではたまに聞く話です。
日本には、戸籍があります。
この戸籍によって、子供が小学校入学時期が来ると、
多分自動的に、役所から小学校の案内とか指導の通達が来たりします。
しかし、アメリカには戸籍がありません。(戸籍があるのは日本と韓国と台湾だけなんですね。)
だから親が自発的に、子供の小学校の入学手続きをしに行かなければ、
その子は小学生にもなれずに、ただ時が過ぎていくだけなのです。
その代わり、頑張れば飛び級もあるという世界です。
そんなエレナもやっと8歳で学校に行かせてもらった時は、
嬉しくて、嬉しくて、人一倍頑張ったといいます。
家の雑用や皿洗いを終えた後に、疲れも知らずに目を擦って勉強しました。
エレナは、勉強する事も好きでしたが、何よりも早くこの家を出たかったのです。
そんなある日、祖母が雑用をしているエレナにこう言ったといいます。
「お前の、ふしだらな母親が病気で死んだそうだよ。
だから、身寄りの無いお前が、ここから出て行こうなんて思わない事だね。」
ただ、エレナには、なんでお祖母ちゃんがそんな事を言ったのか分かりませんでした。
なぜなら、エレナは自分を捨てた母親の所に行こうなど、一度も思っていなかったし、
むしろ、自分を捨てて家を出て行った母親の事を憎んでさえいたからです。
熱心に勉強した甲斐もあったのでしょう。
彼女は数年後には、飛び級で自分の歳とみあった学年に上り詰める事が出来たといいます。
家を出る為にアルバイトもしたのですが、
その半分を何かと理由をつけれらて両親に搾取されてしまい、貯金はなかなか溜まりませんでした。
そんな時、現在のご主人と職場で知り合ったのでした。
両親には内緒で、彼と2年付き合いました。
やがて、彼からのプロポーズもあり、両親に彼と結婚したい旨を話しました。
しかし、予想通りというか、両親祖父母全員から反対されました。
「早す過ぎる。」 「あんな男は、ろくでもない奴だ。」
と、彼の事を知りもしないのに悪く言われました。
その夜、不思議な夢を見たといいます。
夢の中に、見知らぬオジサンが出て来て、「彼と駆け落ちしなさい。」と言うのです。
彼女は1週間後、彼とも話し合って、
仕事に行くと家を出たその足で、彼と駆け落ちしたのでした。
その時、ふと、実の母親の事が頭をよぎったといいます。
「母も、こんな風に家を出たのだろうか。」
その後、
エレナは二人の子供を授かり、彼との幸せな暮らしを手に入れました。
2人目の女の子が1歳と10ヶ月になった時でした。
ふと、自分の子供を見ている時、
「私は丁度、この子と同じ歳に、母に捨てられたんだ。」という思いが蘇ってきました。
その時でした。
娘が「アイリシュ。 アイリシュ。」と口ずさんだのです。
それはエレナには「アイリス」という母の名前に聞こえました。
不思議な事です。
まだ2歳にもならない娘が知るはずもない母の名前を口ずさんだのです。
その時、エレナはこう思ったそうです。
「私には良く無い母だったけど、孫のこの子には違うかもしれない。
せめて母のお墓が分かれば、この子を見せに行ってあげたい。」
しかし、現実的に、それは不可能に近い事でした。
母の墓どころか、以前住んでいた場所さえも知らなかったからです。
エレナが知っているのは、母の名前(アイリス)だったのです。
義理のお祖母さんなら知っているのでしょうが、今さら戻って聞く訳にもいきません。
翌日、夫に相談してみました。
幼い娘が母の名前を言った事、お墓が分かれば見せに行きたい事など。
すると、夫は快く賛成してくれた上に、どんな手を使ったのか知りませんが、
父が通っていた大学を調べ上げてくれたのです。
父が通っていた大学=母が通っていた大学ですから、
その大学の図書館に行って、まずは35年前の卒業アルバムから、
母を探す事から始める様に言ってくれたのです。
さっそく翌週の朝から隣町にある大学の図書館に調べに行きました。
それは私にとって、やや複雑な心境でもありました。
今まで一切記憶にも無い私を産んだ母の顔が見れるという思いと、
自分を捨てて出て行った母の顔を見るという思いが交差しました。
当初は卒業アルバムの中のアイリスという白人の女性だけを探せばいいので、
そう難しい作業だとは思っていませんでしたが、
調べると35年前の卒業アルバムには、該当しそうな女性がいなかったのです。
そこで、その前後5年間の卒業アルバムを調べる事になりました。
すると、1年前に出た卒業アルバムに、母らしい感触のアイリスが目についたのです。
なんとなくですが、母の様な感じがしました。
ただ、見つかったと言っても母の写真と本名が分かっただけでした。
これから住所とお墓を探せるかどうかも分かりません。
もうじき図書館も閉まる時間が迫っていたので、私はその写真をコピーする事にしました。
しかし、コピーコーナーにあった機械の1台は午前中に故障したとの事で、
残りの1台は、誰かが使用していました。
そこで仕方なく、その方の後ろに並んで順番待ちをしていたのです。
しかし、その方は1冊の本を全ページコピーしている様で、まだまだ時間がかかりそうです。
やがて、私の後ろにも人が並びました。
それでも前の方は終わらず、結局図書館が閉まる時間となってしまったのです。
私は、職員の方に、「このページのこの写真だけでも撮りたいのですがダメですか?」
と尋ねましたが、ダメでした。
しかし、その時、不思議な事が起きたのです。
私がガッカリしていると、その時後ろの後ろに並んでいた人が私に声をかけてきたのです。
その女性は40~50歳位の女性で、優しそうな感じの方でした。
その女性は、こう言ったのです。
「懐かしいわぁ。その写真の人、貴方のお知り合い?」
「私の母です。」と言うと、
彼女は驚いた様に、私に握手を求めて来たのです。
なんと、彼女は母の親友だった人だと言うのです。
私達は、図書館を出ると、近くにあったレストランに入り色々な事を話しました。
それは不思議な事ですが、私は、初めて会ったばかりだという彼女に、
今までの生い立ちなど、母が浮気した上に、幼い私を捨てて出て行った事さえも。
気が付いたら何もかも話していたのです。
すると、それまで静かに私の話を聞いていた彼女が、
衝撃的な事を、話し始めたのでした。
「それは事実と違うわ。
貴方のお母さん、浮気なんかして無いし、
貴方を捨ててもいないのよ。」
彼女いわく、母は父と結婚後、すぐに父の実家で暮らす様になったそうです。
しかし、そこで持ち上がったのが宗教問題でした。
当時母はプロテスタントに入信していたのですが、父はキリスト教から別れた一派に入信していて、
義祖父母も全員同じ宗教だったそうです。
そこで母にも改宗する事を命令したそうですが、母が良い返事をしなかった事から
それからみんなで虐める様になったそうです。
やがて、父らは母を家から追い出したのでした。
つまり、父らは私に「母は浮気して私を捨てて出て行った。」とウソをついたのでした。
母は私を取り返そうと、裁判まで起こしたそうですが、
仕事が無かった上に、父や義祖父母からある事無い事言われ、負けてしまったといいます。
それでも母は、諦めず、私が学校に通って来た時に会おうと、
毎年近所の学校に毎日通って会いに来ようとしたそうです。
しかし、それを危惧した父や義祖父母は私を学校に行かせなかったのでした。
「母は私を捨てたんじゃ無かった。」
それを聞いただけで、涙が溢れてきました。
それにしても、何という偶然でしょうか?
聞くと彼女も、滅多に図書館には行かないといいます。
ただあの日は、どうしても図書館に行かないといけないと思ったそうで、
行くと、料理の本が目について、どうしてもそのレシピをコピーしたいと思い始めたといいます。
そして、私の後ろの後ろに並んでいたのです。
あの時、コピー機が1台故障していなければ、そして、
あの人が沢山コピーしていなければ、そしてなにより彼女が図書館に来ていなければ、
この出会いは無かったのです。
彼女は霊能者の方に、「こんな不思議な事があるんですね。」
「先生はどう思われますか? 本当に偶然なんでしょうか?」と聞きました。
すると、霊能者の方が、こんな事を言ったのです。
「貴方のお母さんの、父親が姿が見えるのよね。
彼が言うには、
娘(アイリス)が無実なのに、浮気したとか子供を捨てたなど、
酷い言われようになっているのが、我慢できない。
だから娘(アイリス)の名誉を守りたかった。せめて娘だけには分かって欲しかった。」と言っている。
つまり、霊能者いわく、全てはアイリスの父親が演出した事で、偶然じゃないと言うのです。
こういう名誉回復を重んじた霊現象を起こすのは、主に男性の霊だと霊能者は言う。
その後、母の葬式にも参列したという彼女から、母のお墓にも案内されて、
後日、娘をお墓に連れて行く事が出来たのです。
「あなたの孫を連れてきましたよ。
母さん!! 」
END