●3本指のサイン
世の中には、恋人同士にしか分からないサインがある。
しかし、
もし、そのサインを言い当てたなら、
真実味が一気に増し、相談者が涙を流す。
アメリカに居る時、そんな場面に立ち合った事が一度だけあった。
今日は、その時の事を思い出して書いてみようと思います。
私が知っている霊能者は、とても忙しい時で1日10人診る事があるという。
それ以上は、彼女も家庭があるので、翌日以降にしてもらう。
何人でも並んでいるだけさばくという占い師とは、だいぶ違うものだ。
ある時、若い女性が亡くなった恋人の霊視をして欲しいとやって来ました。
後に彼女はこう言った。
今まで霊とか死後の世界には懐疑的な所がありました。
でも友人が診てもらって、とても感動したと言っていて、
貴方も診てもらいなさいよ。と勧められて、
かなり迷ったんですけど、一度位は騙されてもいいと思って来たんです。
さっそく霊視が始まった。
すると、5分もしない内に、亡くなった彼女の恋人の霊が現れた様で、
霊能者の方が、
「Tという頭文字が見えます。」
・・・・
「Tonyという名前の方をご存じですか?」
「はい。亡くなった彼氏です。」と彼女。
普通は、初対面なのに、亡くなった彼氏の名前を言い当てるだけでも凄い!
私は見てて、「さすが先生!」と思いましたが、
当の彼女は、まったくそれに驚く様子がありません。
後で聞くには、
「Tonyと言われた時、一瞬えっと思って、すごいと思ったけど、
考えてみれば、前日予約を入れた後に調べて、付き合っていた人位は分かったかなとか、
前に診てもらった友人に聞いたのかな。とか色々考えちゃいました。」と語った。
死後の世界に懐疑的な人は、色々疑ってなかなか受け入れられないものである。
その後も、トニーの霊が言った事を彼女に伝えた。
「忙しいのに、毎日お見舞いに来てくれて、どうもありがとう。」とか、
「こんな結果になってしまって、ごめんね。」とか。
「君と結婚したかったよ。」とか。
しかし、それらの言葉を聞いても、彼女は感動も驚きもしなかった。
ただ、淡々と霊能者が言った言葉を、ただ聞いていただけだったのだ。
確かに、よく考えてみると、上の3つ言葉は、
霊能者でなくても、言える事だ。
「お見舞いに来てありがとう」「ごめんね。」「結婚したかった」
どれも恋人なら、言いそうな言葉だ。
かと言って、霊能者はトニーが言う事をただ伝えるだけだから、
それ以上の事は、付け加えられない。
そうこうしている内に、霊視も終わりに近づいていったのです。
そして、最後にトニーが「ありがとう。」って言ったのを伝えて終了となりました。
霊能者は、トニーが伝えたかった事は全部伝えて終了となりましたが、
彼女は、特に感動とかもしなかった様でした。
ところが、最後に霊能者の方が、変な事を言ったのです。
「ちょっと意味が分からないんだけど、
3という数字に、何か思い当たる節はなーい?
3人で暮すとか、3年後とか何か約束してない?」
しかし、彼女はまったく思い当たる事は無いと言う。
霊能者いわく、トニーは笑顔で、3本の指だけを立てて、
こっちに見せているのだという。
こんな風に・・・・(霊能者の方が、トニーの手の真似をしてみせた)
すると、それを見た彼女が泣き崩れたのです。
今まで、何の反応も示さなかった彼女が、霊能者が真似した手を見て、
ただただ「トニー!」って言って、泣き崩れたのでした。
実は私も、その時「3本指のサイン」で、
どうして彼女がそこまで感動したのか分かりませんでした。
その後、落ち着いた彼女が事情を話してくれたのです。
それは今から1年前、トニーと彼女は婚約こそしていませんでしたが、
将来は結婚を約束しあった恋人同士でした。
ところがトニーが休日の時、突然倒れたのです。
くも膜下出血だったといいます。
その後生死の境を彷徨ったのですが、なんとか奇跡的に目覚めて、
入院生活となり、彼女は毎日お見舞いにいったといいます。
ただ、かなりの後遺症がトニーの体を蝕んでいたといいます。
片手はまったく動かず、何の言葉も発せられない失語症になったといいます。
それでも、リハビリをすれば将来は何とかなると信じて、
彼女は常にトニーを励まし続け、
二人の愛は変わらなかったそうです。
そんな時、彼女は片手を使えず、言葉も話せないトニーの為に、
片手だけで言葉を伝えられる様に、
片手で出来る手話を、二人で覚え始めようと提案したのです。
まずは、「ありがとう」という手話を覚えたと言います。
これで、看護婦さんに「ありがとう」って伝えるのよ。
お医者さんに「ありがとう」って伝えるのよ。
見舞いに来てくれた人にも「ありがとう」って。
手を口に当てて、前に離すのが、英語の「ありがとう」の手話だそうです。
まるで、投げキッスのしぐさの様ですね。
ちなみに、日本語の手話での「ありがとう」は下になります。
皆さんも、たった1つだけ、「ありがとう」の手話だけ知っておくだけでも、
きっといつか役に立つ時が来ますよ。
すると、トニーは、教えてもいない3本指を立てる手話を、
誰かから学んで、毎回私と別れる時に使う様になったのです。
私も嬉しくて、同じ様に、3本指を立てて返しました。
それは、
英語の手話で、「 I Love You 」の意味なんです。
「ごめんね。
ボクの事は忘れて、幸せになるんだよ。 愛してる。 」
END
上の写真はBabies and Sign Language より
http://www.babies-and-sign-language.com/sign-i-love-you.html
http://www.babies-and-sign-language.com/sign-thank-you.html
https://www.ntt-west.co.jp/kouken/communication/syuwa.html


