●父のカフスボタン
霊能者とて、いつでも万能な力を発揮出来るとは限らない。
体の具合が悪い時や、病気の時は力が発揮出来ない時もある。
しかし、体の具合が良い時でも、力が発揮出来ない時があると言う。
それはどの様な時か?
そして、霊能者はそんな時、どうやってその場を乗り切るのか?
今日は、そんな話をしてみたいと思います。
私がアメリカに居た時の話です。
ある時、霊能者の所に一組のご夫婦が相談にみえました。
ご夫婦には娘さんがいたのだが、2年前に事故で亡くしていて、
いまだにお母さんは、悲しみが癒えないという。
さっそく霊視が始まりました。
しかし、3分経っても、5分経っても娘さんの霊は現れません。
と言うより、現れる雰囲気はあるのですが、
この部屋に入って来れない様な、微妙な空気感で、
それはまるでテレビをつけたのに、ザーザーと嵐の画面で見えないが、
時々場面が垣間見えるという状態に似ているという。
それでも10分間そんな感じて頑張って霊視をしてみたのだそうだが、
一向に改善される感じはしなかったという。
このままでは、何もご夫婦に伝えられないままセッションは終了となってしまう。
さすがの霊能者の方も、その時は困ったという。
結果から言うと、
その後なんとかして娘さんの声をお母さんに届ける事が出来、
お母さまは、霊能者に感謝して帰っていったという。
この話を、私の友人の通訳を介して聞いた時、
私の興味は、お母さんの話よりも、
霊能者の方が、どうやってその場を切り抜けたのかに興味が行った。
そこで通訳を通して、霊能者の方に、
出来れば、10分も何も出来なかったのに、
どうやって、その状況を切り抜けたのか教えてもらえないか聞いてみたのである。
すると、霊能者が教えてくれた話は、
私の予想を超えたものだったのです。
当時、霊能者がいくら頑張って霊視しようとしても、
現われる雰囲気はあるのに、この部屋に入って来れない空気感があったと言います。
その時、霊能者の方は、どうしていつもの様に力が発揮出来ないのか?と考えたそうです。
体調は悪く無いし・・・・
おかしい。
その時、ふと、
相談している小部屋の中の空気が悪い事に気がついたそうです。
そう考えると、なんとなく息苦しいし、
なんとなく嫌な気の波動が漂っている感じがしたといいます。
そしてよく見ると、
奥さんの隣に座っているご主人から出ている感じたしたといいます。
それはどうやらご主人の強いオーラから発していると感じたそうです。
後から分かった事ですが、
実は、ご主人は霊とか死後とかを、まったく信じない人で、
むしろ、そんな物は存在しないし、インチキに決まっていると思っている人でした。
そんな時に、奥さんがお金を払って霊能者に診てもらうと言い出したので、
オレがついて行って、ウソを暴いて、料金を返してもらってやると心に秘めて、
一緒に付き添って来たのでした。
霊能者いわく、
そういう場合、ご主人から疑いの強い攻撃的な気の波長が出て、
小さな部屋だと、そのマイナスの気の波長が部屋中に蔓延して、
霊が入ってこれ辛くなったり、霊能者が霊とコンタクトしずらくなるのだという。
これはご主人に限らない。
占いに一緒に来た友達や恋人が、そういう否定論者だと、
スピリチュアル系の占い(タロット・霊視など)の場合、うまく答えが導かれない時がある。
また統計系の占い(占星術や手相・風水)でも、やはりやりずらいという話を聞く。
さて、やりずらかった理由は分かりました。
では、霊能者はどうやって、この窮地を切り抜けたのだろうか?
一番簡単なのは、ご主人を外に出して、奥さんだけにする事だが、
インチキだと息巻いて乗り込んできたご主人に「外に出て下さい」と言ったら、
きっと「それ見た事か!」と金を返せと言い出したり、暴れ出したりするかもしれない。
その時、霊能者の方がとったのは、穏やかな方法だった。
まず、奥さんから娘さんの写真を借りると、
ご夫婦をそのまま部屋に残し、自分だけ一時部屋の外に出たのである。
部屋の外で娘さんの霊と交信し、娘さんからお父さんの事を聞き出すという行動に出た。
そして、しばらくして、ご夫婦が居る部屋に戻ると、
霊能者の方は、お母さんではなく、まずお父さんと話をし始めたと言う。
「ご主人、
今、娘さんの霊がこの家に来ていて、
ご主人に是非伝えたい事があると言っています。」
そう言うと、ご主人は「来た来た。」思って、
いつ反撃してやろうかと、身を乗り出した。
「私には、どういう意味か分からないのですが、
貴方の娘さんが言うのです。
お父さんに伝えて下さいって。
カフスボタンをありがとう。って。」
すると、あれだけインチキを暴いてやろうと息巻いていたご主人が、
急に左手を口に当てると、涙を流し始めたのです。
その瞬間、部屋中の空気が一瞬にして変わったという。
実は、愛する娘が亡くなって、墓地に埋葬した時、
お父さんは、とっさに自分の左腕にあったカフスボタンを取って、
こっそり墓地の中に入れたのである。
それは妻も知らない事だった。
今まで大切に使っていたカフスボタンを、
愛する娘に片方持っていてもらいたかったのだという。
そんな、誰も知らないはずの事を、
娘が、 娘が知っていたのだ。
「父さんの大事なカフスボタンだったんだよね。
ありがとね。
愛してるよ。父さん。 」
END
