●パワーハラスメント
今日は何を書こうかとニュースを見て見ると、
つい5時間ほど前、
日本レスリング協会は、都内で臨時理事会を開催。
伊調馨(33)へのパワハラ問題で、栄和人氏が強化本部長を辞任すると発表した。
日本レスリング協会は、伊調馨らへ「深くお詫び申し上げます。」と謝罪した。
今まで、栄氏と協会はパワハラなど存在しないとウソをついていたのだが、
実際は、
●栄氏は田南部力コーチに伊調選手への指導をしないよう圧力をかけ。
●男子合宿練習への参加を禁止させ。
●警視庁レスリングクラブへの出入りも禁止していた。
などの数々のパワーハラスメントを行なっていた。
パワーハラスメントとは、
地位が上の人や、職務上の優位な立場を利用して、
部下や立場が下の人に対して、精神的・身体的苦痛を与える行為を言う。
ちなみに、パワハラを行なった者は、
名誉毀損(めいよきそん)、侮辱罪(ぶじょくざい)の刑事責任を問われる場合があり、
民法の不法行為や、労働契約違反も成立する事がある。
被害者だと感じたら、まずその時の日付時間と、やられた行為・いれば証人などを記録し、
それが溜まったら、行政機関などに持っていき相談すると良い。
私も仕事柄パワーハラスメントの被害を耳にする機会があるのだが、
そういう場合は、まずは記録と証拠を残す様にアドバイスしている。
一番良いのは、録音する事である。
今はポケットに入るICレコーダーが中古なら3000円位で買える時代なので、ぜひ1台買って置きたい。
相手に分からず録音する事が可能である。
そんな相談者の方から聞いたパワーハラスメント(パワハラ)の中で、
忘れられない不思議な出来事が1つある。
今日はその時の事をお話し致しましょう。
それは随分昔の話になりますが、
現在は結婚されて子供二人いらっしゃるという常連の電話相談者の方が、
まだOLだった時代の話です。
東京都中央区の日本橋の箱崎町に、
東京シティエアターミナルというバス発着ビルがあります。
http://www.tcat-hakozaki.co.jp/
ここから羽田空港や成田空港へ、直通のバスが出ていて、
海外や国内へ飛行機で行く場合、タクシーでここ東京シティーエアターミナルまで行けば、
あとは空港の搭乗受付前までバスに乗っているだけで連れてってくれる便利な場所である。
帰りもこのバスに乗れば、空港からここまで一気に来れて、ここから自宅へ電車かタクシーで帰れる。
彼女は、そんな東京シティエアターミナルの2階にある
御みやげ屋さんで主に働いていたという。
当時彼女は、大の巨人ファンで、彼女のお父さんも大の巨人ファンだった。
だから、家に帰ると、ビール片手にお父さんと、
テレビでの野球中継を見てワイワイ騒ぐのが楽しかったという。
そんなある日、事件が起きる。
彼女が働いていた東京シティエアターミナル(通称T-cat)に、
巨人軍の選手達が、飛行機を利用する為に東京シティエアターミナルから出る
リムジンバスに乗りにやってきたのである。
実は、ここ東京シティエアターミナルは、空港へ行くのに便利なので、
多くの芸能人や野球選手などのスポーツ選手達が利用する場所で、
そんなテレビでしか見れない人に会える隠れスポットなのである。
その為か、彼女が働いている御みやげ売り場には、色紙が多数売られているのだ。
通常、芸能人達はタクシーでここに乗りつけると、2階でバスのチケットを買い、
3階でバスに乗って行くので、彼女の店の前を素通りして、
芸能人を見つけても見られるのは5分程度だと言う。
しかし、今日来た巨人軍の選手達は、バスの時間待ちか、
誰かの遅刻待ちか理由は分からないが、東京シティエアターミナルで一時待機となったという。
だから普段はテレビでしか見れない巨人軍の選手達が、
なんと彼女の目の前でお土産を見たり、買ったりしてくれているのだ。
その姿を見ているだけで、彼女は夢心地だったと言う。
ところが、見ていると、他の部署で働いている人が、
巨人軍の選手に近づいて行って、なんと、サインを貰っているではないか!
その姿を見ていると、彼女も欲しくなった。
もしサインを貰えるなら、きっと私よりも父親が飛び上がって喜ぶに違いない。
実は当時、父は病気で伏せっていたので、もし憧れの巨人軍の選手のサインがもらえたら、
病気も治ってしまうぐらい元気になるのではないかと想像した。
そう思うと、居ても立ってもいられない。
実は、彼女の職場ではこういう場合、お客さんなどにサインを求めるのは、
控える様に暗黙のルールがあった。
しかし、他の部署の人も貰っているし、
なにより父親が喜ぶなら、最悪クビになってもいいと思ったという。
彼女は休憩時間に入ると、色紙を買い、サインをもらいに行った。
当時大人気だった原選手の周りには、黒山のひとだかりで近づけない。
しかし、辺りを見回すと、角投手が居たという。
サインをお願いすると、角投手は快く、父親の名前を書いてくれ、サインしてくれたと言う。
ただ、依然として、原選手の周りは黒山のひとだかり。
そこで、他の選手を探し回った。
すると、なんと喫茶店の中に、あの王監督がいるではないか!
テレビでしか見た事の無い神様。王監督が目の前に居る。
なにやらもう1人の方と対面で座っていて、テーブル兼ゲーム機になっている所に座って、
テレビゲームを楽しんでいたという。
さすがに王監督にはオーラが漂っていて、ゲームを邪魔してまでサインを頼む人はいなかった。
しかし、もし父親が最も尊敬している王監督のサインを貰ったと知ったら、
きっと父は死ぬほど喜ぶだろう。
それに、王監督からサインをもらうチャンスなど、きっとこれから先も絶対無い。
クビになってもいいから、父の為にサインを貰いたい。
そう思った彼女は、王監督がゲームしているのをじっと側にいて、
王監督がゲームが終わるまで、サインを貰わずひたすら待ったという。
そして一瞬、王監督のゲームが終わり、次のゲームの為の100円を出した所で、
声をかけた。
「すみません、サインをお願い出来ないでしょうか?」
断わられるかとドキドキした。
きっと王監督は、ゲームが終わるまで、私が声をかけずにじっと待っていたのを知っていたのでしょう。
求めに応じて、快くサインしてくれたのでした。
そして、ずうずうしくも色紙の上部に、病気の父へのサインをお願いしても、
快く父の名前を書いてくれたのです。
あの王監督にサインをしてもらったと思うと涙が出たといいます。
そして、幸運にも原選手にもサインを貰う事ができたのです。
ただ、原選手は個人名は書かない主義とおっしゃり、父の名前は無しとなりましたが、
それでも、きっと父は大喜びするはずです。
もうそれからは、早く帰って病気の父に見せてあげたいと思いました。
「王監督がね、お父さんへって、名前書いてくれたんだよぉ。
あの王監督のサインだよぉ!!」
と言った時の父の喜ぶ顔が、目に浮かびます。
ところが、次の休憩時間に、最悪の事態が起きたのです。
私は上司に呼び出されて、もらったサインを見せてみと言われたのです。
仕方なく見せると、彼は王監督のサインを見つけると目の色が変わるのが分かりました。
実はその上司も巨人ファンだという事は知っていましたが、
きっと立場上、サインを貰って回る事は出来なかったのでしょう。
私が貰ったサインを羨ましく思ったのです。
なんと彼は、私がもらった3枚のサインを没収したのです。
しかも、「これがバレたら、お前はクビだろうから、これで無しにしてやる!」
と言われたのです。
他にもサインをもらった社員の方はいたはずでしたが、他に没収された人はいません。
きっと、王監督からサインを貰った人は多く無かった様でしたので、
私が狙われたんだと、職場の友人に言われました。
今で言うパワーハラスメントです。
当時は、そういう言葉も無かったし、いち女子社員が上司に逆らえない時代でした。
本当に悔しくて、悲しくて、泣きました。
なにより、父に見せてあげられないのが残念で、残念で眠れませんでした。
結局、病気の父を喜ばす事も出来ず、
父は1年後に亡くなったのでした。
ところが、父の葬式の日に、不思議な事が起きたのです。
葬式は小さな会館で執り行ないました。
父の友人だった人、親戚などが駆け付けてくれた中、
意外な人物が、父の葬式に現われたのです。
それは私の会社の上司で、父へのサインを奪ったあの時の上司です。
しかし、普段見る上司とは少し別人で元気が無さそうでした。
そして私に近づいて来ると、紙袋を手渡して、
「なんかよく分からないけど、君に返さないといけないな。悪かったよ。」
と言うではないですか。
何かと思って手渡せれた紙袋の中を見ると、中に3枚の色紙が入っていたのです。
そうです。あの時取られた角投手と、原選手と王監督のサイン色紙です。
しかも、上司は香典として1万円も包んでくれ、薄ら涙も浮かべていたのです。
まるで狐につままれているみたいで、信じられませんでした。
私は彼女からその不思議な話を聞いて、
「きっと、お父様、亡くなってから知ったんだね。
そして、上司の魂に貴方にサインを返さないといけないと説得して動かしたんだよ。」
と言いました。
その後、彼女は3枚のサインを、大事にお父様の仏壇に飾ったと言います。
「父ちゃん、
王監督のサインだよう。
見せたかったなぁ。
父ちゃんの名前書いてくれたんだよ。」
END


