●毎年夏になると誰か死ぬ家

 

 


これは今から12年以上前のある夏の出来事である。

 

 


当時私はまだ近場なら出張鑑定もしていたのだが、

 

 

ほとんどの依頼は電話相談で済ませていた。

 

 

 


そんな時、遠方からの電話依頼で、

 

 

「是非一度、家に来て診て欲しい。」という相談が飛び込んで来た。

 

 


場所を聞くと、栃木県の宇都宮市だと言う。

 

 

 

 

宇都宮と言えば餃子を思い浮かべる方が多いだろう。

 

 

何しろ、宇都宮市内だけでも餃子専門店が30店舗もあるというから凄い。

 

 

私も餃子は大好きだ。

 

 

 

 

宇都宮と言えば、栃木県の県庁所在地であるのだが、

 

 

時々、栃木県の県庁所在地は、栃木市だと間違って言う人がいる。

 

 

 

実は昔、栃木県の県庁は、宇都宮市ではなく、栃木市だったのである。

 

 

それが廃藩置県を期に、県庁が栃木市から宇都宮市に移転したのだ。

 

 

廃藩置県前は、栃木県はあったのだが、宇都宮県もあった。

 

 

それが明治6年に「栃木県」と「宇都宮県」が統合され、今日の栃木県となったのだ。

 

 

宇都宮県の名前が消えてしまったのだが、宇都宮の人達は、時の県令三島氏を中心に、

 

 

ならば、せめて県庁は宇都宮にという動きに出た。

 

 

県庁移転には巨額の移転費用がかかるのだが、

 

 

当時、宇都宮には、裁判所や因獄、県立の病院や都心への乗り合い馬車が開通するなど、

 

 

栃木市を上回る好条件があった上に、宇都宮はほぼ栃木県の中央にあったので、

 

 

ここを県庁にする事は、他の地域への交通の便が良い事も幸いして、

 

 

強引に宇都宮への県庁移転を勝ち取ったのである。

 

 

 

 

 

 

そんな宇都宮だが、私が住んで居る千葉から宇都宮は遠い。

 

 

私は出張の依頼を即座にお断りした。

 

 

それでも電話をかけてきた奥さんは、どうしても、ここに来て、

 

 

この呪われた家を診て欲しいと願っていた。

 

 

 


私が出張鑑定をお断りし始めたのは、せっかく時間をかけて行っても、

 

 

実は大した原因では無く、これならこんなに時間をかけて来なくても、

 

 

電話での相談で十分片づけられたのにと思われる案件が多かったからである。

 

 

 


しかし、この相談。

 

 

一筋縄ではいかない案件だったのである。

 

 

 

 

 

彼女は開口一番、今住んで居る家を「呪われた家」だと言った。

 

 

なにやら不気味な相談になりそうだな。と思いつつ、

 

 

まずは彼女の話を聞いてみる事にした。

 

 

 

 

今から約5年前に、彼女らの家族が今の中古の家を購入して住み始めたと言う。

 

 

当時購入した価格が、相場よりも少し安かったので気にはなったが、

 

 

特に事故物件と言う話も無かったので、購入を決めたという。

 

 

街からはやや離れた場所にあったが、自然環境は良かったので決めた所もあった。

 

 

ただ、全員賛成の中、彼女だけは何か気持ちが悪い土地だと感じていたという。 

 

 

引越しは祖父母と、彼女と夫、それに子供が二人の合計6人。

 

 

みんなで協力して掃除などを行った。

 

 

 

 

 

ただ、引っ越してから2ヵ月が経った頃、

 

 

近所の人の噂で「前に住んで居た人が、逃げる様に引っ越しして行った。」と聞いたという。

 

 

それを聞いて、嫌な予感がしたのだが、

 

 

その後、特に問題らしき事件は起きなかった。

 

 

 


しかし、その家に住み始めてから2年が過ぎようとしていたある夏の日の事だった。

 

 

祖父が急に原因不明の病気になり、寝たきりになってしまったのである。

 

 

先週までは元気に庭いじり等をしていたのに、わずか一週間で寝たきりになったのだ。

 

 

しかも、よく寝言で「熱い。熱い。」とうなされるのだという。

 

 

ただ熱を計ると、そんなに高く無いし、部屋もクーラーがかかっていて熱く無いのだ。

 

 

結局お祖父さんは、「熱い。熱い。」とうなされながら亡くなったという。

 

 

 

 

 


この家の災難は、これで終わりでは無かった。

 

 

むしろ、これが始まりだったのである。

 

 

 


翌年の夏、今度はお祖母さんが急に原因不明の病気になったのだ。

 

 

先週までは一人で買い物にも行く元気だったのに、それは突然だった。

 

 

そして、またお祖父さんの時の様に、寝言で「熱い。熱い。」とうなされる様に・・・

 

 

それはまるでお祖父さんの病気の再現だった。

 

 

結局お祖母さんも、寝たきりのまま、「熱い。熱い。」とうなされながら亡くなったという。

 

 

 

 

ここまでの話だけなら、

 

 

お年寄り2人が夏の暑い日に2年連続で亡くなったという話なので、

 

 

熱い。熱い。」とうなされる原因不明の病気だという事を除けば、

 

 

偶然とも言えない事も無い出来事だろう。

 

 

 

 

しかし、事は彼女にとって緊急かつ重大だった。

 

 

と言うのは、

 

 


今年の夏、今度は彼女の息子さんが急に倒れたのである。

 

 

病院に連れて行くと、原因がよく分からないという。

 

 

しかも、二日前から、寝言で「熱い。熱い。」と言い始めたと言うのだ。

 

 

お母さんは、その寝言を聞いて、「ぞぞっ」としたという。

 

 

今年は、息子が・・・・と思うと怖くなった。

 

 

それはお祖父さん、お祖母さんが亡くなったのと同じ現象だったからだ。

 

 

 

 

この家は、呪われている。」そう思ったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


私も話を聞いて、嫌な予感がした。

 

 

 

後半は、明日のブログに続く。