●父親と死後の和解
これは私がアメリカ留学中に、霊能者から聞いた話です。
ある時、1人の女性が占いに来たそうです。
彼女はシェリーと言って、市内でOLをしている方でした。
彼女には、お兄さんとお姉さんがいて、お姉さんは既に結婚されていて、
現在郊外で、お母さんとお兄さんと彼女の3人で暮している方でした。
お父さんは5年前に病気で他界していました。
霊能者が霊視を始めると、
すぐに亡くなった父親が出て来たそうです。
そして、娘のシェリーに伝えて欲しい。と、
一匹の犬を抱きながら、こう言ったといいます。
「テリーは大丈夫だから。
テリーは元気にボクと一緒にいるから・・」と。
すると、その言葉を聞いたシェリーさんが涙を流したといいます。
実は、シェリーさんは長い間、父親の事が嫌いだったといいます。
それは父親が亡くなるまで続き、
とうとう和解する事無く、父親は他界したのでした。
末っ子として生れたシェリーさんは、
小さい頃はとても父親に可愛がられたといいます。
スーパーなどに行く時は、いつも父親の背中の上に乗って、
お父さん、お父さんと、家族の中で一番お父さんに甘えていたといいます。
当時お父さんは、飛行機のパイロットで家を空ける事が多かったのですが、
そんなお父さんが帰宅すると、車の音を聞きつけて、
一番先に玄関に駆け付けて抱きついたのは、いつもシェリーでした。
そんなお父さんも、シェリーの事が大好きで、
お土産もいつもシェリーの好きな物を買ってきてくれたといいます。
そんな生活が変わり始めたのは、シェリーが中学生になってからでした。
それまでは、いつもお父さん、お父さんだったシェリーが、
段々とお父さんを避ける様になったのです。
はっきりとした理由は無かったといいます。
ただ、自分だけに門限があったり、お兄さんやお姉さんの時には、
学校の行事に参加したのに、私の時は仕事の都合で来てくれなかったとか。
その頃には、父親が仕事から帰って来ると、出迎えるどころか、
居間でテレビを見ていても、父親の車の音を聞くと、
走って2階の自分の部屋に行ってしまうという感じでした。
ちなみに、こういう問題は、日本でもよくある事で、
時々、娘が急に私を避ける様になったというお父さんの悩みを聞く事があります。
そんな時、こういう話をする事があります。
自分の娘が、思春期辺りから父親を避ける様になるのは、
実は、人間に生れ持った遺伝子プログラムが働き始めて、一時的に、
近親相姦を避ける行動をとる為なんですよ。
だから、一生嫌いになるのではなく、ある時期になると、
またお父さん大好きという時期が戻ってくるのですよ。
しかし、シェリーの場合、父親との仲が戻る前に、
父親が病気になり亡くなってしまったので、最後の一瞬まで、仲直りする事無く、
お別れとなってしまいました。
だから、シェリーは最後まで父親の事を、
仕事人間で、私の事なんて、何も分かってないし、
何も気にかけてくれる人じゃ無かった。
そういう別れとなっていたのでした。
そんなシェリーの前に、現われた父親の霊は、
なんとシェリーの事では無く、
真っ先に犬の事を話し始めたのでした。
しかし、シェリーはそれを聞いて、涙を流したのです。
実は、シェリーには家族の誰にも話さなかったけど、
ずっと、大人になった今でも心の隅で、悩んでいたトラウマがあったのです。
それはシェリーがまだ8歳の頃の事です。
当時家では、一匹のボーダーコリー犬でテリーという名の犬を飼っていました。
家族みんなで可愛がっていて、シェリーもいつも一緒に遊んでいました。
そんなある日、テレビで犬がフリスビーをキャッチするという映像を見たシェリー。
丁度家にもフリスビーがあったので、テリーにも試してみたいと思いました。
最初はリビングで、フリスビーを投げてみると、
テリーは何日かの練習で出来る様になったといいます。
でも、そこは室内ですから、投げられてもせいぜい3m足らず。
テレビで見た様な迫力はありません。
シェリーはふと、居間から見える玄関前の芝生でやったら、どんなに凄いだろうと思いました。
試しにテリーを連れて、芝生の上でフリスビーを投げてみると、
テリーも室内よりも走りやすい様子で、生き生きとフリスビーをキャッチしました。
それに気を良くしたシェリーは、もっと距離を出そうと、
勢いよくフリスビーを投げました。
すると、投げたフリスビーが大きくカーブして、
道路の方に飛んでいったのです。
そして、そのフリスビーを追いかけてテリーも道路に・・・・
そこに運悪く車が来て、テリーは轢かれてしまったのでした。
テリーは頭部を轢かれていて即死だったそうです。
当然、家族みんなで可愛がっていたので、
お兄さんやお姉さんは、シェリーの軽率な行いに怒りました。
しかし、本当に参っていたのはシェリー本人だったのです。
まだ8歳の小さい心の中は、もう死んでしまいたい気持ちだったといいます。
私がテリーを殺した。 そう自分を責める日々だったそうです。
そんな8歳の時のトラウマが、大人になってもずっと忘れられず、引きずっていたのです。
そんなシェリーの前に、
自分の気持ちなどまったく分かっていないと思っていた父親が現れ、
そして、言ったのでした。
「シェリー、
テリーは大丈夫だから。
テリーは元気で、ボクと一緒にいるから大丈夫。
だから、もう忘れなさい。
そして、幸せになるんだよ。」
「ありがとう。お父さん。」
END
