●クリスマスの奇跡 28年前の恩返し
1948年、4月1日。
アメリカのミシシッピー州、Bruceという片田舎に、
一人の男の子が生まれます。
彼の名は、Larry Dean Stewart。
ところが、すぐに父親と母親の両方を失います。
一人になった子を、祖父母が引き取りました。
しかし、祖父母はかなり貧しかったのでした。
家は無く、農家の離れを使わせてもらっている状態。
当然、暖房も無く、風呂も無い。
お風呂の入りたい時は、暖炉の上に置いた水を入れた器を温めて、
それにタオルをつけて体を拭く事しか出来ませんでした。
祖父母と彼の3人が、月33ドル(3900円)で暮すという極貧生活。
ミシシッピーの冬は厳しい寒さで、死にそうになりました。
それでも何とか福祉で学校に行ける事に。
しかし、祖父母が亡くなると、大学も中退せざるをえなくなりました。
一人ぼっちになった彼は、仕事を探しますが、なかなか見つかりません。
世間は、大学中退、家族無し、保証人無しという彼には冷たかったのです。
やっと見つけた仕事も、しばらくすると、不況で倒産してしまいました。
やがて家を追い出され、彼はとうとうホームレスとなってしまったのです。
彼、23歳。 寒さの厳しい冬の事です。
彼がホームレスとなってから、8日が経っていました。
1971年の11月早朝の事でした。
お腹空いたなぁ。
やがて、車のガソリンも底をつきます。
しかし、ガソリンを買う事も出来ませんでした。
彼のポケットには、もう、一セントも残っていなかったのです。
これでボクも、お母さんの所に行くのかな。
神様、ボクはもうダメです。
寒いなぁ。お腹空いたなぁ。
彼はもう2日間も何も食べていなかったのでした。
そんな時でした。
車の窓を開けると、美味しそうな臭いが漂ってきました。
臭いが漂ってくる方を見ると、DIXIE DINERとあります。
何か食べたいなぁ。でもお金が無い。
せめて、せめて、ニオイだけでも。ニオイだけなら、いいよね。
そう思って、店の方に近づいて行きました。
すると、余りの空腹の為、つい店にフラフラと入ってしまいました。
そして、メニューを見ると、朝食を頼んでしまったのです。
3日ぶりの食事でした。
美味しかったぁ。
彼は皿を舐めるほど綺麗に食べ終わると、
ウェイトレスが請求書を持って来ました。9ドル25セント。
その瞬間、彼は我に帰りました。
自分は9ドルはおろか、1セントも持っていなかったのです。
ウェイトレスが睨んでいます。
彼はポケットの中を探してみますが、元々あるはずがありません。
そんな探しているフリも、5分も経つとウェイトレスは怪しみ始めました。
「こいつ、金持って無いんじゃなの?」
ウェイトレスは、すぐにここのオーナー兼コックに、知らせに行きました。
「あそこに座っているデブ! 無銭飲食するつもりよ!」
やがて、厨房からコックが彼の座っている席に近づいていきます。
彼は覚悟しました。
住所不定の無銭飲食で、刑務所行きだ。
傍から見たら、きっと彼の顔は真っ青で、少し震えていた事でしょう。
ところが、
ここで最初の奇跡が起きます。
コックは彼の前に立つと、しばらく彼を眺めていたかと思うと、
急に腰をかがめ、床から何かを拾ったのです。
そして、彼にこう言ったのでした。
「探しているのは、これですか?
20ドル札が、ここに落ちてましたよ。」
そう言って、そのコックは彼に20ドル札を渡したのす。
彼は戸惑いましたが、天の助けだと思い、その20ドルで会計を済ませると、
逃げる様にその場を走り去りました。
早くその場を出ないと、本当の落とし主が現れたらおしまいです。
誰も追いかけて来ないのを確かめると、胸を撫で下ろしました。
危機一髪の所で、助かったぁ。
しかし、震えが止まり、気持ちが落ち着いてくるにつれ、
彼は冷静にあの場面を思い出しました。
ボクより奥には、一人もお客は居なかった。
それに・・・・
それに、ボクが席につく時に、お金など落ちていなかった。
彼には自信がありました。
貧乏だった彼は、常に注意してお金が落ちていないか見ていたので、
ましてや20ドルなんて大金が落ちていれば、すぐに気がつくはずなのです。
そんな大金は、落ちてなかった。
そう気がついた時、初めてあの見ず知らずのコックが、
自分の為に、ウソをついて助けてくれたのだと確信したのでした。
かと言って、弁償するお金もありません。
彼は店の方に向って、深々と頭を下げて、お礼を言いました。
「必ず、
必ず私も、将来、貴方の様に他人を助けられる人になります。」
彼は心の中でそう誓うと、残りのお金で、ガソリンを入れました。
もう自分を雇ってくれる仕事場はこの町には無いと思い、
わずかなツテがあったカンザスシティに向うのでした。
彼はカンザスシティで何とか仕事を見つけると、
その地で知り合った女性と結婚します。
そして、義理の父親からお金を借りて警備関係の会社を興しました。
息子も生まれ、あとは儲けるだけでしたが、会社は思う様には伸びませんでした。
設立から5年が経った1977年12月、不渡りを出し倒産したのです。
彼はその日の食事代にも困るほど追い詰められました。
残った莫大な借金、これからどうやって妻と息子を食べさせらいいのか。
追い詰められた彼の心に、悪魔が囁きます。
「一発強盗でもして、パッと稼いでやれ」
彼は拳銃を手に入れると、それを懐に入れ、コンビニ強盗をしようと、
あるコンビニエンスストアに入って行きました。
そして、いよいよ強盗をしようと、拳銃を出そうとした時でした。
女の子が、わずかに彼より一足先にレジに行き、お菓子を買ったのです。
その時に女の子が出したのが、あの20ドル札でした。
彼の目の前に、20ドル札が現れた時、
彼には、丁度6年前のあの光景がよみがえって来たのです。
20ドル札で彼を救ってくれたあのコックに誓った言葉。
「ああ、オレはなんて事をしようとしてたんだ。」
あと少しで、オレは強盗する所だった。
寸前の所で、またもや一枚の20ドル札が、彼を救ったのでした。
その後、奥さんの実家の世話になり、借金を返し、
奥さんのお兄さんの紹介で、彼もセールスマンの仕事につく事になりました。
彼は妻の実家に借りた金を返す為に、一生懸命働きました。
ところが2年後、今度こそは順調に行くと思われた会社から、
不況を理由に、リストラされてしまいます。
「1週間後のクリスマスまでしか雇えないから。辞めてもらえないか。」
そんなぁ。
妻も子供もいるのに、どうしたらいいんだ。
1979年12月、クリスマスの日に、彼は再び無職となったのでした。
首になった彼は呆然として、街を歩いていました。
ポケットには50ドル札が1枚ありましたが、もう贅沢は出来ません。
何か安い昼食で済まそうと、辺りを見回すと、
ハンバーグ売りの屋台がありました。
余り繁盛していな様で、昼時なのに、お客がまったくいません。
売っている女性は、なんとなくヤツれて、疲れきっている感じがしました。
この寒空の中、薄着で顔色も悪い様に見えました。
彼は、屋台に近づくと、ハンバーグとソーダを注文しました。
すると、女性は、彼にホットドックとソーダを出して、
「はい。お釣りです。」と彼にお釣りを手渡したのでした。
ここでもし、短気な男性なら、
「このやろう、オレはホットドックなんて頼んでねえんだよ!」
と切れて女性につっかかるかもしれません。
しかし彼は、女性がお釣りだと渡した手が震えていてるのに気がつきます。
そして、お釣りの一番上には、またしてもあの20ドル札が・・・
「ああ、この女性はきっととても疲れているんだろう。そして、
きっと、私よりも困っているんだ。」そう直感で感じました。
すると、彼は、20ドル札をつかむと、
「これは貴方に、クリスマスプレゼントです。」
と言って渡したのでした。
すると、始めは断っていた彼女ですが、
初めて素敵な笑顔を見せて喜んでくれたのでした。
彼は彼女の笑顔を見ると、とても嬉しくなり、
自分が解雇されたばかりの身だという事を忘れていました。
そして、周りをみると、ゴミをあさっている乞食がいました。
その時、彼は決心したのでした。
ボクは解雇されてしまったけど、そんな僕よりも困っている人がいる。
そう思うと、自然とその足は銀行へ。
彼の口座には1000ドルが入っていました。
その内、600ドルを引きだし、全部20ドル札でくれるように頼みました。
その20ドル札を手にすると、
赤い帽子に赤いシャツ、そして白いオーバーホールを着て街にくりだしたのです。
そして、目にする乞食や困っていそうな人に、メリークリマスとだけ言って、
みんなに20ドル札を配り始めたのでした。
すると、ある人は、クリスマスにこれで美味しいものが食べれるよ。とか、
これで、今年のクリスマスは、子供にプレゼント買ってあげられるよ。と喜ばれたという。
彼は家に帰ると、妻に600ドルを落としてしまったと詫びました。
すると、妻は絶対怒るかと思っていたのですが、
「そう。落としてしまったのなら、仕方が無いわね。
それにしても、
大金を落としたというのに、
貴方は、なんて幸せそうな顔をしているのかしらね。」と、語ったという。
それからの彼は、仕事の方向性を変えたのでした。
今までは、なんとかしてお金持ちになってやろうと躍起になっていたのですが、
これからは、家族が困らなければ、あとは人の為になる事をしたいと思う様になったのです。
すると、不思議なもので、友人がこんな話をもってきたのでした。
遠く離れて生活している家族の為に、
なんとか長距離の電話が快適に出来る様にする事は出来ないだろうか。
お金にはならないかもしれないけど、やってみるかい?
それはいい。遠く離れ離れになっている家族の為になるのなら、儲からなくていいよ。
1980年。彼は友人と長距離電話の会社を設立します。
彼は仕事で儲かったお金の半分は妻に、半分は毎年クリスマスになると、
全部20ドル札にして配っていました。
そんな寄付が何年か続いた頃でした。
クリスマスに20ドル札を配っている男が居るという噂が、テレビ局に持ち込まれます。
テレビ局は、彼に名前を出さないし、家族にも秘密のままにするという条件で、
密着取材をして、彼の事を”シークレットサンタ”と名付けました。
クリスマスになると、シークレットサンタが出没するという噂が町中を駆け巡ります。
実は彼の奥さんは、もしかしたら、夫がシークレットサンタじゃないかと疑っていました。
というのは、クリスマスになると家の口座から大金が消えるからです。
そこで奥さんは、あるクリスマスの日に街に行って見たのです。
すると、そこには乞食に20ドル札を配っている夫の姿が・・・
奥さんは、夫に近づくと、背中に手をかけて、「あなた。」と声をかけました。
振り向くと、妻でした。
彼は「ごめん。・・・」と謝りした。
すると、妻は、
「なんで謝るの?
とても素敵な事じゃない。
これから、もっと家計を節約して、
沢山の人を助けられる様に、協力するわ。」と、言ってくれたのです。
すると、不思議な現象が起き始めました。
今までは、彼が手がける仕事は全てダメになるのですが、
この仕事は順調なのです。それだけではありません。
毎年クリスマスに配るお金の倍以上の利益が、必ず会社に入って来るのです。
倍以上の利益が入って来て、クリスマスだけでは配れなくなりました。
そこで、彼はクリスマス以外の時でも、台風で災害が起きたと聞けば、そこに行き、
地震や火災が起きたと聞けば、そこに行き被災者に配り始めたのです。
すると、また不思議な事が・・・
ケーブルテレビもやらないかという話が向こうから跳びこんできて、やってみると、
配ったお金の倍以上のお金が、またまた会社に入って来たのです。
これじゃ、配り切れない。
20ドル札じゃなくて、彼は100ドル札を配る事にしました。
すると、また配ったお金の倍以上のお金が、会社に入って来たのです。
プレゼントをすればするほど会社の業績は上がっていき、
気がついてみると、彼が設立した長距離電話とケーブルテレビの会社Lee's Summit
は全米でも有数の会社の内に入っており、その資産は億万長者になっていたのです。
彼は妻や息子の為に豪邸を買い、高級車を買って今までの苦労を労いました。
こうして、彼はホームレスから大富豪になったのでした。
その後も、911同時多発テロが起きればニューヨークにかけつけ、
ハリケーン・カトリーヌの被害で1836人が亡くなるというニュースを聞けば、
ルイジアナ州に飛んで、被災者や遺族に寄付したのです。
彼が素晴らしかったのは、自分の名を伏せ、自分が貧乏な時から寄付を始め、
お金が本当に困っている被災者に直接届く様にと、自分が直接会って配った事である。
その総額は日本円にして1億8000万円にも達したという。
しかし、2006年4月。今まで彼は、自分の素性を隠してきたが、
医者から食道がんを宣告され、既に肝臓までに広がっていて、
もう先が長くなく、早くて余命1ヵ月と分かった時点で、
今までシークレットサンタであった事を明かし、この事業を誰か引き継いで欲しいという
希望を訴えたのでした。
すると、それからたった2日の内に、彼の元に7000通もの手紙が届き、
貴方に助けれられたというお礼や励ましが半分、そして、
その大半が、自分も貴方の様なシークレットサンタになりたいという手紙だったという。
すると、彼は多くの人の祈りと励ましに支えられ、
余命をはるかに超え、その年のクリスマスまで生きたのである。
そして、その年のクリスマス。街には、彼の意志を継いだと思われる
無名のシークレットサンタ達が現れ、貧しい人達に多くの寄付が行なわれたという。
彼はベッドでそのニュースを聞くと、嬉しそうにして、
まるでその年のクリスマスに現れた
シークレットサンタの後継者達を見届けるかの様にして、
クリスマスの約2週間後に、天国に召されたのである。
最後に、
こんなこぼれ話を付け加えて終わりに致しましょう。
彼、ラリー・スチュワートは、シークレットサンタとして、
多くの人に、クリスマスプレゼントを配りながら、
たった1つだけ、気がかりな事がありました。
それは、彼が本当にお礼がしたかった、
あの無銭飲食しそうな時に、20ドル札をくれたコックにまだお礼がまだ出来ていなかった事です。
実は彼はカンザスシティで、シークレットサンタをしていた時にも、
何回かミシシッピー州のあのコックの働いていたレストランDIXIE DINERを、
尋ねて来ていたました。
しかし、すでに店は閉店していたのです。
レストランだった場所は、床屋になっていました。
そして、誰に聞いても、コックがどこに行ったのか知る者は居なかったのでした。
こうして、彼にとって、一番の恩人にお礼が出来ないという状況が何年も続いたのである。
しかし、あきらめきれなかった彼は、お金の余裕が出来た時、
思い切って、私立探偵を雇って、恩人のコックの行方を調査してもらった。
すると、
コックはミシシッピー州の片田舎、Tupeloという所に居る事が判明。
彼は、赤い帽子、赤いシャツ、白いオーバーホールのシークレットサンタの格好をし、
あの時の恩人であるコック、Ted Hornの家を訪ねたのである。
「あの時、貴方がいなければ、私は刑務所に行ったかもしれません。
なんとお礼を言っていいか分かりません。
今、私があるのは、貴方のお蔭なのです。」
そして彼は、あの時の20ドル(2400円)のお礼にと、
1万ドル(130万円)をTed Hornさんに手渡したのである。
それは、28年目の恩返しだった。
ちなみに、Ted Hornさんは、せっかくそんな大金をもらったのに、
貰った1万ドルを全て、家の近所に住み病気で困っている人と、
生活困窮者の為に使ったという。
これを読んでいる貴方を含め皆さんが、幸せになります様に・・
メリークリスマス。
https://www.youtube.com/watch?v=waW5S4h3KIQ
END
参考:上の物語を画像で見たい方は下記をクリック。
https://www.youtube.com/watch?v=aOI-0I6pr4I
https://www.youtube.com/watch?v=hrgMZOnwjTc
https://www.youtube.com/watch?v=WgDYfrJ9Fw8
Kansas City Star | KansasCity.com http://www.kansascity.com/news/local/article122729324.html
The Topeka Capital-Journal http://cjonline.com/stories/111606/bre_santa.shtml#.Wj48gXkUm5i








