●悲鳴がする家

 

 


これはまだ私が東京に居た頃に出会った案件である。

 

 

 

 

 

 


ある日、電話で奇妙な相談が舞い込んできた。

 

 

彼女の実家に行くと、悲鳴が聞こえるというのである。

 

 

しかも、その悲鳴が聞こえる時に限って、

 

 

母親の具合が悪くなり入院するのだという。

 

 


実家で聞こえる悲鳴と、母の入院は何か関係があるのでしょうか?

 

 

 

 


そんな電話相談だった。

 

 

 


悲鳴と、お母様の入院が関係あるのか?

 

それは即答出来ない質問だった。

 

 


そこで、詳しく話を一から聞いてみる事にした。

 

 

 

 

事が起きたのは、練馬区にある彼女の実家だという。

 

 

現在、実家には、彼女のご両親が住んで居て、

 

 

彼女も結婚するまでは、その家で育った。

 

 

彼女はというと、現在は結婚して、二人のお子さんの母親だが、

 

 

その実家とは、歩いて約15分のご近所に住んで居るという。

 

 

 

そんな実家で、悲鳴が聞こえ始めたのは、去年の事だった。

 

 

ある日、母親が、めまいと頭痛を訴えてしゃがみこんでいるのを心配して、

 

 

父親が、すぐに病院に連れて行った。

 

 

 


すると、MRI検査で脳梗塞が見つかったのである。

 

 

母親は即日入院。

 

 

電話をもらった彼女も、すぐに病院に駆け付けた。

 

 

幸いお母様は、深刻な脳梗塞では無かったらしい。

 

 

しかし、年齢も年齢なので、その時は2週間ほど入院したという。

 

 


ただ、母親が入院してから1週間が経った時に、彼女が病院にお見舞いに行くと、

 

 

入院している母親から、こう頼まれたという。

 

 

それは、お父さんが1人でちゃんと食べているか行って見て欲しいというのである。

 

 

 

 

丁度ご主人が出張中だったので、

 

 

彼女は5歳の娘と6歳の息子を連れて、実家に泊まりに行った。

 

 

すると、案の定、

 

お父さんは、コンビニ弁当やカップラーメンを食べいたらしく、

 

 

ゴミ箱の中に、それらしい容器が1週間分位捨ててあったという。

 

 

また、洗濯物も溜まり放題で、病院から持ち帰った母の下着などもそのままだった。

 

 

掃除もした気配は無かったし、台所でも使った食器やコップがそのまま置いてあった。

 

 

お母さんが、心配してた通りだった。」

 

 


とりあえず、母の下着だけでもと洗濯機を回し、

 

 

夕食は野菜中心の献立にして、久々に4人で食事した。

 

 

 

 

ただ、そんな中、彼女は娘のある不思議な行動を目にしていた。

 

 

それは、

 

 

5歳の娘のメグミちゃんが、時々、両手で両耳をふさいでいるのである。

 

 

食後、彼女は娘に聞いてみた。

 

 

「なんで、耳をふさいでいたの?」

 

 


すると、メグミちゃんは、

 

 

「だって、悲鳴が聞こえるんだもん。」  と、言ったというのだ。

 

 

 

聞くと、この家に入って来た時から、悲鳴が聞こえ続けていたらしい。

 


ただ、6歳の息子に聞いても、そんなの聞こえないというし、

 

 

父に聞いても、悲鳴など聞こえないという。

 

 

勿論、私も聞こえませんでした。

 

 

しかし、娘がウソを言っている様には見えなかったという。

 

 

母が入院する前には、娘は多分20回はこの実家に来ているのだが、

 

 

これまで一度も悲鳴が聞こえるなどと言った事は無かった。

 

 

今回が初めてである。

 

 

 


その日は、実家に泊まり、

 

 

翌日、娘が起きて来た時に、もう一度聞いてみた。

 

 

すると、もう悲鳴は聞こえないという。

 

 

 

 

 

この時は、たった一日の事だったので、娘の気のせいだと思い、

 

 

すぐに忘れてしい、また家に帰って変わらぬ日常となった。

 

 

 

 


その後、母は無事退院し、翌々日、退院祝いを実家で行ったという。

 

 

その時にも娘と息子を連れて実家に行ったのだが、

 

 

特に娘が耳をふさぐ事も無く、何事も起きなかったという。

 

 

 

 


しかし、それから半年が経った時、再び母が入院した。

 

 

今度も別の場所の脳梗塞だった。即日入院。

 

 

 


そして1週間後、再び母に頼まれ、また実家に行く事に。

 

 

前の事が頭をよぎったので、一人で行こうかとも迷ったが、

 

 

結局、娘と息子を連れて実家に行った。

 

 

 


すると、実家の玄関を入った瞬間だった。

 

 

娘が手で耳をふさいだのだ。

 

 

 

 


聞くと、やはり悲鳴が聞こえるのだと言う。

 

 

言葉にならない「ヒィー」という様な悲鳴だけが聞こえるという。

 

 

他の3人には聞こえない悲鳴が、娘さんだけに聞こえるのだという。

 

 

そして、この時も、翌朝には聞こえなくなっていたという。

 

 

 

 


つまり、母が健康だった頃や、退院した時には悲鳴は聞こえず、

 

 

娘が悲鳴を聞いた2回の時に限って、母も入院したのである。

 

 

彼女は、その不気味な一致を心配して、相談してきたのだった。

 

 

 

 

 

私は、とりあえず、実家について聞いてみた。

 

 

彼女いわく、実家は父が新築で建てたもので中古物件では無いという。

 

 

また、この家で亡くなったのは、祖母だけだが病院で亡くなられたという。

 

 

 


ただ私も、とりあえず聞いてみただけで、

 

 

娘さんが聞いたという悲鳴が、家や土地に絡む問題では無いだろうという気はしていた。

 

 

 

なにしろ、お母様が病気になる前から娘さんは実家に20回も来ているのに、

 

 

その時には、一度も悲鳴など聞いていないのである。

 

 

 

 

 

はっきり言って、さっぱり分からなかった。

 

 

 

ただ、娘さんが聞いたという2回の悲鳴と、お母様の2回の脳梗塞。

 

 

これが偶然の一致では無いだろうという気はしていた。

 

 

 

 

しかし、それ以上の事は分からなかったし、

 

 

想像すらつかなかった。

 

 

それに今現在、悲鳴はまったく聞こえていないので、調べようが無い。

 

 

 

 

仕方なく、私は彼女に、

 

 

「練馬区なら、そんなに遠くないので、

 

 今度、娘さんが実家で悲鳴が聞こえると言った時、電話下さい。

 

 急用が無い限り、すぐに駆け付けますから。」  と約束して電話を切った。

 

 

 

 


この時点で、もし真相が分かる人は、凄い洞察力と知識の持ち主だろう。

 

 

何しろ、私は現地に出向かないと分からなかったものを、

 

 

この電話相談の時点で分かってしまうのだから。凄いとしかいいようが無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから半年が経った時だった。

 

 

再び彼女から電話があったのだ。

 

 

「今、娘と実家に居ますが、また娘が悲鳴が聞こえると言っています。」と。

 

 

 


「分かりました。これからそっちへ向かいます。」

 

 

私は、車に飛び乗ると、急いで彼女の実家へと向った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


やがて、この奇妙な出来事の真相が分かるのである。

 

後半は、明日のブログに続く。