●娘の7つの宝石
時々、臓器提供の相談を受ける時があります。
臓器提供とは、重い病気や事故などにより臓器の機能が低下した人に、
親や植物状態の人の健康な臓器と取り替えて、
病気になった人々の機能を回復させ助ける医療行為です。
つまり、脳死とはいえ、生きている人間から臓器を取り出し、他の人を助ける訳です。
ここに色々な論議が、衝突する訳です。
信じている宗教や思想によって、色々意見はあると思います。
だから、私の意見も、いち個人の意見としてみて下さいね。
臓器提供の相談とは、例えばこんなものです。
「親戚の子が脳死して、心臓と肺を臓器提供したのですが、
天国に行った時や、生まれ変わる時に、それらが無くて不自由しませんか?」
まず、天国に行った時ですが、
天国は肉体を必要としない魂の世界ですから、
両足を失った人でも、天国に行くと、普通に歩いていたり、
肝臓がんで、肝臓が機能しなくなって亡くなった人も、
今はここ天国で元気にしているという様なメッセージを、霊能者は受け取るそうです。
つまり、現世で使っていた肉体に関係無く、天国では暮らしていると言うのです。
次に生まれ変わる時ですが、
通常は赤ちゃんから始まるので、現世で使っていた50歳の肺や心臓は、
必要無いのだそうです。
つまり、医学的に言っても、遺伝子内の肺や心臓を失う訳では無いし、
また新たにお母さんから授かるので、問題無いという訳です。
むしろ、霊能者の方いわく、亡くなった時に、
臓器提供によって、その提供者やその家族など多くの人から感謝されるので、
成仏しやすくなり、徳を積む事になり、その為、
以前持っていた臓器よりも、生まれ変わる時は、もっと良い臓器が与えられる。
と言う霊能者の方もいます。(宜保愛子さん)
だから、私個人の意見としては、臓器提供には賛成です。
ただし、脳死の判定が2人以上の医師によりしっかりした判断によるものである事。
それか親が子供や親族に腎臓や肝臓の一部を提供する場合に限ります。
当然ながら、下の様なケースは反対です。
昨年の6月、カナダのデービッド・キルガー元議員と
人権派弁護士のデービッド・マタス氏、
ジャーナリストのイーサン・ガットマン氏が中心となって、
中国の共産党が、病院や医師ら共謀して、
適法な臓器移植の件数を年間約1万件としている。と暴露した。
私もそれまでは、中国政府によって、
死刑になる罪人の臓器移植が行われているという事は聞いていました。
しかし、彼らの報告書によると、事態は遥かに深刻で、
臓器移植されるのは、人殺しなどの犯罪者ではなく、
多くは、善良な市民のものだと言うのである。
中国の共産党と意見の違う人達を、政治犯として捕まえて、
臓器移植の為に死刑にしていると言うのだ。
ウイグル族やチベット族、中国内のキリスト教徒、
そして、特に政府側が敵視する法輪功の信者たちを数千名逮捕・収容し、
過酷な拷問をした上で信者らの遺体から勝手に臓器を摘出し、闇で売買したという。
その証拠に、違法な臓器移植がバレない様に、
中国政府は、今も死刑執行した名前や総数の公表を拒んでいる。としている。
(CNNより)https://www.cnn.co.jp/world/35084781.html
中国政府にも言い分はあるだろうが、
いずれにしろ、1つだけハッキリ言える事は、
どんな理由にしろ、人を殺して、それをその人の親にも子供にも知らせないで、
こっそり殺してしまう行為は、100%間違っていると言える。
時々、臓器提供出来る人が、うらやましいと思う時があります。
実はね。
私も臓器提供したいと医師に申し出た事があるんですよ。
でも、お医者さんから、こんな事を言われちゃいました。
「白血病の方の臓器は使えないのよ。」って。
知らない間に、私、お役に立てないポンコツな体になっていたんですよね。
残念。![]()
最後に、
ある実話を紹介して、今日は終わりに致しましょうね。
ある時、二人姉妹の妹さんが、病院に運ばれた。
主治医から次女の状況が大変厳しくて脳死状態だと聞いた時、
普通なら、このまま脳死状態で生命維持装置で生き続けるか、
娘をもう苦しめたくないと、死を受け入れて埋葬するという道かの選択になるかと思います。
しかし、ここでそんな普通の道とは別の事態が起きたのです。
長女が、主治医の方に、こんな事を言ったのです。
「妹は、臓器提供意思表示カードを持っています。」、と。
娘がそんなカードを持っている事なんて知りませんでした。
しかし、主治医からは、実際にカードがここに無いとダメだという返事。
「持ってくる。」
長女はカードを取りに家に戻りました。
カードには、サインがきちんとしてありました。
それを見て、私達家族は話し合いました。
「どうしようか。
こんなにきちんと書いているんだから・・・・・
意思を叶えてあげようか。」
「いいよ。」
「叶えてあげましょう。」
私達は、それまで臓器移植について何も知らなかったんです。
娘の体はまだ温かく、可愛い顔をしていました。
でも、人工呼吸器によって呼吸をさせられているだけでした。
病院に提供の意思を伝えた後の夜中、初めてコーディネーターに会いました。
「提供意思に変わりありませんか。」
「ありません。」
このやり取りを何度重ねたことでしょう。
家族で確認しあい、気持ちを微動だにせず、しっかりとコーディネーターに返事をしました。
本人の意思を継ぐ・・・その思いだけで決意しましたが、
7人の方に臓器が提供できると聞き、娘という宝石箱から7つの宝石が散っていき、
7人の方々の中で輝き生きていく、それでいい、と思いました。
『関東の女性』が脳死で臓器を提供するという情報は、
またたくまに『東京の20歳代の女性』というように、
細かな内容でほとんどのメディアに流れていました。
肺の状況がとてもいい事、心臓は大阪の患者さんに渡りそうな事、
などをコーディネーターの方が、逐一教えてくれました。
提供が終わってもマスコミが多くて、すぐには娘を家に連れて帰れなかったので、
娘は、一時霊安室に移ることになりました。
狭い部屋でしたが、コーディネーターの方が花を持ってきてくれたり、
病院で働く百数十人もの人が、お線香をあげに来てくれたのです。
霊安室にいる多くの人が娘の行為に感銘してくれていましたし、
私達もその光景に心から感動しました。
「いい事したね。」 って、娘を誉めてあげました。
娘の7つの宝石が輝いている事をいつも心の中で思いながら、
私達もこれから頑張って生きていこうと思いました。
娘のお別れ式では、写真の周りにいっぱいの花を飾りました。
250人くらいの若い人達が集まって、
カーペンターズの曲が流れる中、パーティー形式で見送りました。
「娘は立派に生きているので、これは旅立ちなんです。」
皆さんにそう伝え、娘を乗せた車が出るときには拍手をしてもらいました。
「何もしなかったら、とても寂しい思いをしたかもしれないのに、
7つの宝石を先に取り出しておいてよかったなあ。」と思いました。
亡くなってからしばらくして、娘のボーイフレンドが名乗り出てくれました。
とてもいい青年だったんです。
彼は、娘にとネックレスをくれました。
娘の骨壷に入れてあげました。
この時のことを思い出すと、涙が溢れてしまいます。
娘が書いた臓器提供意思表示カードを改めて見た時に、ある事に気がつきました。
それは、
娘がカードに署名した日が、私の母(祖母)の3周忌にあたる日だったのです。
きっと、娘はその時、何か思うところがあったのでしょう。
娘は金融機関に勤めていて、常に窓口に意思表示カードを置いていたそうです。
ある時、テレビで、
肺を移植した人の映像が放映された事があります。
20年間、病に苦しんでいた40歳代の女性を、
どれだけ輝かせたかを、見ることができました。
その姿こそ、娘の宝石箱の輝きに値するものでした。
元気になった娘の肺をもった女性の姿に、私達は感銘しました。
そして同時に、勇気と希望をもらいました。
現在、亡き娘の意志を継いで、
意思表示カードは、私をはじめ親戚も全員持っています。
そんなある日、
心臓を移植した子供の親から、その子の手形をカードにしたものもいただきました。
これも私達の宝石です。
7人の方やそのご家族からコーディネーターを通じて情報やお手紙をいただくことが、
一番の楽しみです。
娘の功績を多くの人に喜んでもらっていることに感銘し、
そのたびに勇気づけられるのです
娘もきっと喜んでいるはずです。
娘が亡くなって1年経った時でした。
娘の宝石箱のひとつ、肺の移植を受けた方からお手紙を頂きました。
『大事にします。今はそれしか言葉がみつかりません。
生きるという何にも変えがたい尊い贈り物を、
私の命と共に歩いてくださる希望をいただきました。
大事にします。
大切にします。
ありがとうございました。』
一緒に、肺移植をした方のレントゲン写真を見せてもらいました。
それを見た時、
「娘は生きている」と強く感じました。
私達は、淋しくありません。
なぜなら、
7人の方々の中で、娘の7つの宝石が、
今も輝き続けているから………
END
娘さんが好きだったカーペンターズの曲
PS.もし、今日のお話に感動を覚えた方は、
きっとウィル・スミス主演の映画「7つの贈り物」を見ると感動しますよ。
私はこの映画を見ると、いつも最後の5分の所で必ず泣いてしまいます。
参考:日本臓器移植ネットワークHPの小冊子think transplant
https://www.jotnw.or.jp/index.html




