●一番偉い綺麗なママ
霊能者というと、高額な相談料と思われると思いますが、
アメリカで知り合った霊能者の女性は、
街を歩いている時に、気になった人を見かけると、
無料で診てあげる時もあるそうです。
例えば、こんな例を話してくれました。
ある日、彼女がデパートにケーキを買いに行った時でした。
その途中、靴売り場の前を通ったそうです。
すると、その靴売り場の周辺を、一人の男の子が、
左手に飛行機のオモチャを持って、遊んでいるんだそうです。
男の子は、とてもニコニコして、飛行機を手で飛ばしながら、
私に気がつくと、私の近くに寄ってきて、
「ボクのママ、とても綺麗なんだよ。」と突然言って来たそうです。
ややシルエットが薄いので、彼女はそれが霊の子だとすぐに気がついたそうです。
誰か買い物しているお客の子供かな。と思って辺りを見回しましたが、
それらしいお客も、綺麗な女性も見当たりません。
なおも男の子は、彼女に話しかけて来ます。
「ボク、ジョンっていうの。」
「ママは、ここで一番偉いんだ。」
どうやら、この子の母親は、このデパートの社長か、フロアディレクターでしょうか。
母親をここで一番偉い人だと言っています。
霊能者が、時たま判断をミスするのは、こういう時だそうです。
霊の言っている事を、そのまま直に伝えると、間違っていたりするのです。
しばらくすると、そのジョンという子が、
「ほら、あれがママだよ。」と指をさすので、
そちらの方を見てみると、
靴売り場で働く、やや小太りのオバサンが裏手から靴を何足か抱えて出てきました。
特に綺麗という感じでは無く、普通の小太りのオバサンです。
霊能者の方いわく、
よく、お母さんが、自分の子供が他の子よりも一番可愛く見えるって事がある様に、
こういう幼い子供も、自分のお母さんが一番綺麗だと思っている事がよくあるそうです。
また、パパも凄く偉い人だと思っている子も多いそうです。
「ママはね。いつもボクを大切に抱いてくれているんだよ。」
私も立ち止まったのが悪かったのですが、
話を聞いてくれると思って、男の子は盛んに話しかけてきます。
それにしても、ママがいつも抱いてくれている。とはどういう事でしょうか。
私が、分からずキョトンとしていると、
なおもその子は、「ここだよ。ここ。」と自分の胸を指差すそうです。
それでも、分からずにいると、
その子は、飛行機を左手で飛ばす格好をしながら、
「来て。ねえ、来て。」と私をママの方に導こうとします。
普段の私なら、「ごめんね。じゃあ行かないといけないので・・」
と言って、その場を立ち去るんですが、
その時は、その子が言った「ママがいつも抱いてくれている。」という言葉が気になり、
その子について行ってみました。
すると、その子は、ママの胸についているカメオのブローチを指差し、
「ほら、ここ。 ここだよ。」とブローチを触る仕草をします。
私に気がついた靴売り場の彼女が、「May I help you?」と、私に声をかけます。
仕方なく、正直に事情を話して見たそうです。
「間違ってたらゴメンなさい。
もしかして、小さいお子さんを亡くされていますか?
名前はジョンという。」
突然言われた彼女は、不思議そうな顔をして見返してきたと言います。
そこで、彼女は自分が霊能者で、霊が見えるという事。
この位の小さい男の子が、左手に飛行機のオモチャを持って、
ニコニコしながら、靴売り場で遊んでいる事。
ママは綺麗で、ここで一番偉い人だという事。
ママはボクをいつも大切に抱いてくれていると言っている事。
そして、なぜか、貴方の胸につけているカメオのブローチを私に指差す事。
などを、子供が話してくれた事を、彼女に話したそうです。
すると、その靴売り場で働いていた彼女は、
その場に崩れる様にしてしゃがみこんで泣いたそうです。
そして、こんな事情を話してくれました。
実は息子さんを半年前に、白血病で亡くされたそうです。
息子さんは飛行機が大好きで、オモチャの飛行機を買ってあげると
よくそれで遊んでいました。
息子は左利きだったので、それは確かに息子だと思います。
貴方には、見えるんですね。
そうですか。あの子は元気そうでしたか。良かった。
ただ違う点も。
彼女はこの靴売り場では一番の古参(古株)で、新人などを教える立場にあるけど、
このデパートの社長でも無ければ、フロアディレクターでも無いという。
ただ、ここで働いている5人の中では、リーダー的立場ではあるそうだ。
それでも、子供の目からすると一番偉く見えたのかもしれない。
その後、しばらく彼女と話していると、
彼女はこんな後悔を、話してくれた。
それは、ジョンは良くなったら、大好きな飛行機に乗って、
ディズニーワールドに行きたいと言っていたのですが、ついぞ叶わなかったという。
そんな彼女の後悔に対して、霊能者は、
「今からでも、遅くないのよ。
ジョンの写真を持って、飛行機に乗って、ディズニーワールドに行ってあげて。」
「きっと、喜ぶわよ。ジョン君。」
最後に、彼女が胸につけていたカメオのブローチを見せてもらった。
彼女いわく、会社の名札やIDを付け忘れた事はあるけど、
このブローチだけは、付け忘れた事は一度も無いという。
彼女は、快くブローチを見せてくれた。
そのブローチは、中が開くようになっていて、
開けると、
小さいな男の写真が、入っていた。
「私のジョンです。」と彼女。
霊能者いわく、
5歳以下で亡くなった子供は、お母さんが、自分の写真を持ち歩いていると、
とても喜んでいる姿をよく見るという。
そして、自慢するように、私にも見て見て、とジョンの様に言うのだという。
「ママはね。
ボクをいつも大切に、抱いてくれてるんだよ。」
END