●涙を舐める犬
ある時、亡くなったお父さんの相談を終えた後、
彼女が飼っている愛犬の事にも相談が及んだ。
彼女は、小型犬のニコという名前の愛犬を、室内で飼っていて、
小さい時からずっと、彼女が世話をしてきたという。
そんな時、最愛の父親が亡くなったのである。
彼女は、父親が亡くなってから、そのショックで立ち直れない時があり、
よくベッドの上で、父親の写真を見ながら泣いていたという。
ところがある日、
彼女がいつもの様にベッドで泣いていると、
ニコがベッドに登って来て、ペロッと私の涙を舐めたんです。
普段は決して、ベッドの上にあがって来ないのに、
この日は、何故か急にベッドの上に上がって来るなり、
私の頬に伝わる涙を舐めたのです。
それはまるで、「泣かないで。」と訴えている様でした。
その後も、度々涙を舐めてくれる様になり、
そして、しばらく私の隣で、じっと座って、
一緒に父親の写真を見てくれているんです。
「ニコは、私が父を亡くして、
悲しんでいるのが分かって慰めてくれたんでしょうか?」
と、そんな質問でした。
動物の行動の解釈には、人それぞれの見解はあると思います。
そこで、ここからは私が個人的に思っていたり、
霊能者の方から教わった事を書いてみたいと思います。
まず、犬や猫にも、頭が良い犬とそうでないものがいるという事です。
つまり、霊感がある犬猫や霊感が無い犬猫がいるという事です。
霊能者の方いわく、人間のオーラが分かる犬猫もいるそうです。
そればかりか、アメリカの霊能者がある子供の霊と会話をした時、その女の子が、
「家に戻った時にお母さんやお父さんは、私の事が見えないみたいだったけど、
犬のロッキーだけは、私の事が見えたのよ。」って話したという。
つまり、犬猫の中には、霊能者の様に霊が見えるというものもいるという。
そういう事を踏まえて、私は彼女にこう話しました。
賢い犬や猫は、人間が悲しんでいる時や、楽しい時が分かる様で、
悲しい時は、何とかしてあげたいと近寄って来てくれるんです。
普通なら、自分が部屋に入って来ると、ニコって言ってくれるのに、
今日はベッドの上でずっと泣いていると感じると、
何とかしてあげたいと、ベッドの上に登って近寄ったのでしょう。
そして、涙を舐めると、少し貴方の悲しみのオーラが、
和らいだのが分かったのかもしれません。
するとニコはこう思ったはずです。
「ああ、涙を舐めてあげると、悲しみが和らいでくれるんだ。」
「私が涙を舐めてあげると、ご主人が悲しんでる時間が少なくなるんだね。」と。
こうして、貴方が悲しんでいると、その悲しみを癒す為、
悲しみのオーラを和らぐ為に、ニコは貴方の涙を舐めていると考えられます。
貴方の悲しみが、父親を亡くしたという事だというまでは理解していないと思いますが、
貴方が悲しんでいるのは、分かっていて、
それを何として和らげたいと思っての行為だと思いますよ。
偉いですね。ニコちゃんは。
彼女は、「そうなんですね。」とやや感激した感じで、
相談は終了となった。
しかし、
実はこの話には、ちょっと続きがある。
その後、彼女は学校を卒業後、
埼玉県を離れて神奈川県にある会社に就職する事になった。
愛犬ニコの世話を母親と妹に任せて、彼女は実家を離れた。
毎年正月とお盆には、実家に帰っていて、
そのな時は、ニコも大喜びで彼女を出迎えたという。
それから4年経った夏頃から、ニコの体調が良く無くなり、
度々医者にかかるようになった。
私が実家から帰る時、いつもなら、玄関まで見送るニコが、
立ち上がる事が出来ず、シッポだけを沢山振って、
まるで「これで許してね。」という見送りだった。
それから来る母からの電話では、どんどん悪くなる二コの事ばかりで、
両目も白くなっていって、お母さんいわく、
「もう私達の事、見えないみたいよ。」というほどまでに悪化していった。
そして、食べ物も受け付けなくなり、獣医さんにもサジを投げられて、
お母さんからは、「もう今日か、明日が峠だって・・・」と言われたという。
「一度帰って来れないの?」と母に言われたのだが、
私は当時、徹夜でコンサートの準備に取り掛かっていて、あと4日は無理。
どうしても週末まで、帰られないと言い、
電話口から「ニコ、ゴメンね。 ニコ、ゴメンね。」って叫んだという。
やがて、獣医さんから峠だと言われていた日が過ぎた。
しかし、ニコは何も食べ無いのに、微かに息をして生きていたという。
母親が無理やり水をスポイドで喉にあげていてくれたおかげかもしれないが、
何も食べないのに、彼女が戻って来るまで4日間、まったく動かずただ生きていたという。
それはまるで、ニコは彼女の帰りを待っているかの様だったという。
それを聞いて、彼女は金曜の夜、実家に急いでかけつけた。
実家の玄関を開けると、「ニコッ!! ニコッ!!」と叫んだという。
すると、ニコがピクリと動いたという。
ニコは生きていたのだ。
4日も何も食べず、ただ彼女が帰って来るまで生きていたのである。
「ゴメンね。ニコ。遅くなってゴメンね。」と涙を流してニコを撫でた。
すると、ここで奇跡が起きたという。
目が見えないはずで、まったく動けないはずニコが、
微かに口を開けて、舌先を出しているのだ。
そして、後ろ足が僅かに動いて、立ち上がろうとしているんです。
その時、私には分かった。
私には、ニコが何を思っているのか分かったんです。
ニコは目が見えないけど、
私が泣いている事が分かったんです。
だから、悲しい私を慰めようと、立って私の涙を舐めようとしたんです。
「ありがとね。ニコ。」
「私、大丈夫だから。 ありがとね。ニコ。」
私はニコを、泣きながら抱きしめました。
「ありがとね。ニコ。」
ニコは、私を待っていたかの様に、その日に天国に行きました。
私はその話を聞いて、
映画「犬と私の10の約束」を思い出した。
10の約束の内の、最後の約束である。
「貴方と過ごした時間を忘れません。
わたしが死ぬ時、お願いしますから、そばにいてね。」
END