●優しい死神
このお話は、昨日のブログ(●人の死を予知する少女)の続きです。
従って、昨日のブログ(http://ameblo.jp/hirosu/entry-12272933248.html)
を先にお読みください。
そしてから下をお読み下さい。
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[前回までのあらすじ]
私がまだ東京に住んでいた頃、当時常連のお客様だった看護婦さんから、
「うちの病棟に不思議な女の子がいるんですよ。」という話を聞いた。
その女の子は、順子ちゃんといって、彼女が入院している小児病棟は6人部屋で、
一番入り口のドアに近い所に寝ている子だという。
その子がある日、彼女(看護婦さん)が夕食を持って来た時、突然、
「景子ちゃん死んじゃうよ。助けてあげて。」と言ったという。
景子ちゃんとは、彼女と同じ6人部屋に入院している子だった。
一番窓際に寝ている子で、その日は熱があって寝てはいましたが、
それは毎度の事で、特に悪いという感じはまったくありませんでした。
しかし、景子ちゃんが1時間経っても食事に手を付けないので、
看護婦さんが声をかけてると、気持ちが悪いという。
そこで、ドクターを呼んで診てもらうと、脈が弱っていた。
結局、景子ちゃんはその2時間後に亡くなったのである。
順子ちゃんが死の予言をしたのは、それだけでは無かったという。
他にも、勇くんという小学生が入院していた時も、勇くんが亡くなる2時間半前に、
順子ちゃんが「勇くん死んじゃうよ。助けてあげて。」と彼女に言ったという。
実は、勇くんは入院してからも何回も危篤状態になった事があったらしい。
でも、その何回もあった危篤状態の時には、順子ちゃんは、
勇くんが死ぬという事をほのめかした事は、一度も無かったのに、
まったく発作が出ていない時に「勇くん死んじゃうよ。助けてあげて。」と言ったのだ。
そして、順子ちゃんが言った2時間半後に亡くなったのである。
順子ちゃんは、この病棟にもう2年入院しているというのだが、
少なくともその間に、4人の死の予言を的中させていて、
彼女を含めて、看護婦の間では、不気味がられているのだという。
人の死が分かるという少女、順子ちゃん。
私は、その話を聞いて、その順子ちゃんに会いたくなりました。
彼女はどうして、人が死ぬのが予知出来るのだろうか?
彼女の目には、いったい何が映っているのだろうか?
普通の女の子が、どうして人の死を予言出来るのだろうか?
会いたい。会って、聞いてみたい。私は、看護婦さんから電話がある度に、
なんとか、その子と会えないかとお願いしましたが、
その子と無関係な人とは、会えないんですよ。とやんわり断られ続けていた。
ところが、それから半年位経った時、思わぬチャンスが到来したのである。
ある日、順子ちゃんが、看護婦さんに、「死んだら、どうなるの?」と
何気に聞いて来たという。そこで彼女が、
「知り合いに占い師の人がいるけど、聞いてみる?」と聞いてくれたのである。
すると、順子ちゃんが「うん。」と答えたというで、
こうなると、お金はとても取れないが、依頼人となる訳である。
そんな順子ちゃんが、もうすぐ誕生日なのだが、
時々ミニーマウスのヌイグルミが欲しいと言っていた時があったので、
良かったら、お見舞いにそれをプレゼントしてみてはどうかという。
あと、話せる時間は30分という事で、お見舞いに来てもいいという事になった。
こうして私は「人の死を予知出来る少女」順子ちゃんと会える事になったのである。
さっそく私がいつもの様に、
「では明日10時にお伺いします。」と言うと、
「13時20分にして下さい。」と言われた。
細かい。
そして、最寄駅に着いたら、まずはメール下さい。という事に。
病院に着いたのが、13時15分。
病院には入らず、入り口の外で待ち合わせだった。
しばらく待っていると、
「かやさんですか?」という声。
「はい。」と振り向くと、一人の女性が・・・
てっきり看護婦さんが来るとばかり思っていたら、
私服の女性だった。仕事が丁度終わった後だという。
さっそく順子ちゃんのいる病室へ。と思ったが、
小児病棟へは、家族しか入れないという。
そこで、ナースステーションの前の休憩場所で、待機する事に。
そこへ看護婦さんが順子ちゃんを連れて来てくれた。
「はじめまして。よろしくお願い致します。 かやです。」
「こんにちは。」と順子ちゃん。
思っていたよりも、普通の可愛い小学生の女の子である。
ちょっと普通と違うかな。と思ったのは、髪の毛が長い事くらいだろうか。
まずは、順子ちゃんが欲しがっていたというミニーマウスを手渡す。
それを見ると、喜んでもらい、
まずは掴みはOKといったところか。
すぐにでも、彼女は どうして、人が死ぬのが予知出来るのだろうか?
という事を聞きたかったのだが、そんなはやる気持ちを押えて、
まずは、順子ちゃんの疑問に答える事になった。
質問もあったりして15分が過ぎてしまった。
思っていたより30分って短ッ!! あと15分しかないやん。
ようやく私が順子ちゃんに質問できる時がやってきた。
「順子ちゃんは、どうして、人が死ぬのが分かるの?」
時間も無いので、単刀直入に本題に入った。
すると、順子ちゃんは、
「声が聞こえるの。」と言った。
「声?
どんな声が聞こえるの?」
「どんな声?」
「そう、例えば、景子ちゃんが亡くなった時は、
どんな声がしたのかな?」
「う~ん。
景子ちゃんを迎えに来ました。って聞こえたの。」
「景子ちゃんを迎えに来ました。
それだけ?」
「うん。」
「じゃあ、勇くんが亡くなった時は、どんな声が聞こえたのかな?」
「う~ん。
勇君を迎えに来ました。って聞こえた。」
「その時、怖かった?」
「怖くなかった。」
私の印象は、順子ちゃんがウソを言っている様には聞こえなかった。
多分、本当に聞こえたのだろう。
他にも色々聞いたのだが、まとめるとこうだった。
順子ちゃんは、霊を見た事は無いという。
これは意外だった。
彼女は、不思議な声だけを聴く事が出来る様だった。
深夜の病院では、誰も起きていないはずの病棟で、
ヒソヒソ人が話している声が聞こえるという。
昼間もそんな声が聞こえる時があるらしいが、昼間は、
実際に人が話しているのか、霊が話しているのか判断出来ないという。
ただ、夜中に聞こえてくるヒソヒソ話は、
はっきり何と言っているか聞き取れないらしいのだが、
誰か、順子ちゃんと同じ病室の子が亡くなる時だけ、はっきりと、
「景子ちゃんを迎えに来ました。」とか、
「勇君を迎えに来ました。」とドア付近から聞こえるのだという。
そして、そんな声が聞こえてから、
約2時間~3時間すると、名前を言われた人が実際に亡くなるというのだ。
また、他の病室の方が亡くなる時には、それが聞こえないという。
つまり、順子ちゃんが死を予言出来るのは、
彼女と同じ病室の子だけらしい。
私は、ここに来る前に、どんな死神が来るのかと、
ちょっとドキドキ感があったのだが、
順子ちゃんに聞く限り、
「景子ちゃんを迎えに来ました。」と言う声はとても優しく聞こえたという。
そして、そんな声を毎回聞く時、まったく怖い感じは受けなかったという。
もし、それが死神だとしても、
それは、きっと優しい死神さんだと思う。と最後に語ってくれた。
私は、それを聞いてなんか。
少しホットした様な、なんとも言えない気持ちになった。
帰り際に、看護婦さんにディズニーグッズを5つ手渡した。
てっきり病室に行けると思っていたので、
他の5人の子供へのプレゼントも買ってあったからだ。
順子ちゃんは、死神を見てはいなかった。
ただ、死神かもしれない声を聞いていた。
しかも、きっと優しい死神さんだと思う。という。
たしかに、普通怖いと思われている死神は、来たすぐに命を奪い連れ去ってしまう印象だが、
来てから、2・3時間の猶予があってから、ゆっくり天国に行くという時間の配慮も、
何か聞いてて、私も優しさを感じた。
もしかしたら、
彼女が感じた様に、実は、
皆が怖がっている死神は、
ホントは優しい死神さん。なのかもしれない。
END