●小学校高学年~二十歳まで
このお話は、昨日のブログ(●退院後、子供っぽくなった母)の続きです。
従って、昨日のブログ(http://ameblo.jp/hirosu/entry-12236003119.html)
を先にお読みください。
そしてから下をお読み下さい。
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[前回までのあらすじ]
一通り、彼女自身の相談を終えると、彼女はこう切り出しました。
「実は母の事で、ちょっと気になる事があるのですが・・・・・」
彼女のお母さんは、3年前に大病をして、長期入院なさっていたといいます。
幸い現在は良くなられて、3ヶ月に一回経過観察に病院に行っているだけだそうです。
それはそれで、とても良い事なのですが、彼女には1つ気になる事があると言うのです。
今まで、彼女のお母さんは、とても厳格な方で、家での作法や、
外でのマナーなどには特に厳しい人だったといいます。だから、外でのお母様は、
いつも子供達のお手本の様な貴婦人でした。そして強い人でもあったといいます。
お母様が泣いている所など、一度も見た事が無いといいます。
ところが、1年前頃から、そんな母が変わり始めたと言うのです。
彼女いわく、母がなんか子供っぽくなった印象があるそうです。
例えば、急に電車の中で泣いたりするのです。
今まで、母が泣いた所を見た事が無かった私にとっては、驚きでした。
なによりも、母が人前で人目をはばからずに泣くなんて考えられない事だったのです。
お母様が泣いている場面を少なくとも4回は目撃しているといいます。
でも、あとで、母にどうして泣いていたのか聞いても、
自分ではどうして泣いたのか分からないというのです。気が付いたら泣いていたそうです。
そして、外出すると、とても楽しいそうで、家に居る時よりも無邪気な感じになるです。
昔は、母と外出するのが嫌でしたが、今は楽しいと感じるし、
私よりも若いと感じる時さえあります。一度だけでしたが母が衝動買いをしたのです。
それも「ぬいぐるみ」を。今まで生きて来て、母がそんな子供っぽい物を
買ったのを見たのは初めてでした。私ははっきりと、母は変わったと感じるのです。
その事を友人に話すと、お母さん、大病をしたから変わったんだよ。と言われます。
確かに、一度死にそうになると人は変わるといいますが、
私には、何か他に理由がある様な気がしてなりません。
彼女の話をずっと聞いていて、1つだけ、とても気になる事がありました。
それは、お母様が子供っぽくなるのが、いつも、外出した時だけに現われるという事でした。
つまり、家に居る時は、いつもの厳格な母なのです。
それが外出する時だけ、変わるというのです。
何かいる。そんな感じがしました。
お母様が外出した時だけ変わるというのを聞いて、
私がまず最初に、疑ったのは、車でした。
なにしろ、家に居る時は普段の厳格なお母様なのです。
外出する時だけとなれば、車に何かあるのかな。と。
しかし、彼女の話では、車を利用する時も、
また車を利用しないで、歩いて駅まで行った時にも起きたというのです。
ああ、そうだったね。
電車の中で泣いたというクダリがあったよね。
次に思ったのは、外出する時だけ持って出る物でした。
私が彼女に聞いたのは、
「お母様は、毎回外出する時は、同じ靴とか、同じバックにコダワリますか?」
しかし、同じ靴にはコダワリはあったそうですが、
先月買ったばかりの靴の時も起きたし、バックを持っていない時にも起きたといいます。
振出し状態に戻ってしまいました。
こういう時は、起きる現象をもう一度整理して考える事です。
■外出する時だけ起きる。
■子供っぽくなる感じ。
■1年前頃から起きる。
主にこの3点です。
起きる現象から考えると、色々な可能性が出て来て、分からないので、
別の質問をしました。
「1年前~1年半前に、お母様に何か変わった事は起きませんでしたか?」
「変わった事ですか?」と彼女。
少し考えてくれたのですが、特に思いつかないといいます。
しかし、私の考えでは、
やはり、何か1年前~1年半前に、お母様を変える何かが起きていると思うのです。
それは、家族も気がつかない、極些細な事だったりもします。
でも、現場にも行けず、本人にも会えないのでは、彼女の記憶しか手がかりはありません。
ここが電話相談の限界かもしれません。
そんな半分あきらめの空気が流れ始めていた時、
私が彼女に聞いた、次の質問が、真相をあぶりだしたのです。
それは、極普通の質問でした。
「お母様は、1年半前は、外出しても何も起きなかったんですよね。」
という、いわば確認みたいな質問だったのですが、これが思わぬ答えを導いたのです。
すると彼女はこう言ったのです。
「母は、1年半前は、余り外出はしませんでした。」
「へぇー、そうなんだ。」
ここで、会話が切れるのは素人です。
「へぇー、そうなんだ。」で終われば、ただの話友達です。
プロの占い師やカウンセラーなら、おかしいと思った所は突っ込んで聞かないといけません。
「なんで?」の一言が、問題点や謎を解く事もあるのです。
当然、私は聞きました。
「なんでお母様は、1年半前は余り外出しなかったの?」
すると、彼女の返答は、問題の核心をつくものだったのです。
彼女のお母様は、病気になる前は、
とても綺麗でとても長い髪の毛だった方だったそうで、近所でも評判だったそうです。
それが病気の時の薬の影響で、一時期まる坊主になってしまったのです。
それは彼女にとって、病気と同じくらいショッキングな事だったそうです。
だから、病気が治っても、ほとんど外には出ない生活をしていのでした。
では、そんなお母様が、なぜ1年前頃から外出する様になったのか?
それは、彼女がお母様が家に閉じこもりの生活をしているのを危惧して、
髪の長い、最高級のウィッグ(かつら)をプレゼントしたからでした。
私は、その話を聞いた瞬間に、それだと思いました。
最高級のウィッグは人毛で出来ているのです。
それに念が籠っていたとしても不思議ではありません。
現在、ウィッグには3種類あり、
■人毛、■人工毛、■そして人毛と人工毛の両方で作られた物です。
当然人毛が一番高価なものとなります。
ちなみに、昔、こんな話が出回った事があり、聞かれた事がありました。
「かつらの髪の毛は、死体の髪の毛を取って作っているんでしょうか?」
しかし、私が知っている限り、そういう話は聞いた事がありません。
何しろ例え髪の毛といえど、勝手に切って取ったら死体損壊の罪になりますし、
遺族の許可も必要です。
なにより、ウィッグを作る側にも相当な品質のこだわりがあるからです。
さて、原因がほぼ推察出来たのですが、
私は彼女に、意外な提案をしました。
普通なら、すぐにウィッグの使用を中断してもらう所なのですが、
彼女の話を聞いていると、お母様が子供っぽくなったというのは、
そんなに悪い現状では無い気がしたのです。
以前はお母様と外を歩くの嫌だったのが、今は楽しいといいますし、
涙を流すのも、医学的には悪く無い事だと聞きます。
また、いつも厳格なお母様が、外では無邪気になれるなら、
ストレス発散になっている可能性もあります。
そこで、彼女には、このままでも特に問題が起きなければ、
今と変わらずでいいんじゃないですか。
ただ、問題が起きそうだと思った時は、
晴れた日に、そのウィッグを塩水で洗って、3時間ほど午前中の太陽の下で乾かし、
その後で、仏壇の前でお線香2本の煙で、燻しながら、
「どうかこのウィッグの念が弱まります様に」とお願いしてみてから使って下さい。
とアドバイスしました。
この様に、頂いた相談の中には、現状維持でいいと思いますよ。
と答える場合もあるのです。
これでこの相談は終わりました。
しかし、私個人として、1つだけ疑問がまだ残っていました。
それは、なぜお母様は、子供っぽくなったのだろう。
色々考えてみたのですが、答えは出ませんでした。
答えらしきものが、分かったのは、それから何年も経って、
私があるテレビ番組を見た時でした。
それは最高級のウィッグを作る時に、それを作る為に、
もっとも適した髪を手に入れるというドキュメンタリー番組でした。
番組によると、もっとも良質な髪の毛は、もちろん染めたり、カラーリング等をしていない、
自然に伸びて、自然のままの髪の毛が良いのだそうです。
つまり、色々と手入れをしている現代人の髪の毛は、最高級にはなりえないのです。
当然、死体の髪の毛も不可となります。
番組は、中国の奥地へ奥地へと向かいます。
やがて、都会には染まっていないある村に着くと、
そこには、「髪の毛、買うよ~」という髪の毛の買い付けを生業としているオジサンが、
自転車に乗って、色々な女性に声をかけています。
その髪の毛買付オジサンは、通りすがりの髪の長い女の人に声をかけ、
ダメだと分かると、なんと今度は小学校に向います。
そして、小学校が終わり、子供達がいっせいに出て来ると、その子供達の中で、
良さそうな長い髪の毛をしている子をスカウトするのです。
彼らいわく、最高級のウィッグ用の髪の毛は、
小学校高学年~二十歳までの女性の髪の毛なんだそうです。
まだ幼さの残る小学生の髪の毛が、もっとも良いとは意外でした。
子供は今までせっかく伸ばしてきた髪を切るのは嫌だと泣く子もいるとか。
でも、中国の田舎は、年収が15万円以下という家庭がほとんどで、
しかも、親の言う事は絶対です。
子供の意思を通り越して、オジサンは親と値段の交渉を始めます。
やがて、子供の髪の毛はばっさりかられてしまいました。
私はこの映像をみて、
もしかしたら、あのお母様のウィッグも、
この様な経過があったのかもしれないと思いました。
もちろん、今となっては真実がどうだったのかは分かりませんが・・・・・
END