●深夜のビル清掃と、一番のお守り
よく仕事が見つかないとか、探しても雇ってくれる所が無いという相談を受けます。
でも、一度どんな仕事でもいいと割り切ってしまうと、
意外と仕事はあるもの。
その一つが、ビルの清掃です。
年齢不詳、初心者でも可。1日でもOK、日払いあり、
そして、時給1200円と好条件です。
なんでこんな事を、私が知っているかというと、
このビルの清掃、1つだけ難点があります。
それは、夜中の仕事である事です。
昼間もあるのですが、時給1200円は、大概22時~朝の5時なんです。
まあ、これで1日で、8400円稼げるわけですが、
誰も居ない大きなビルを、たった一人で清掃なんて事もあるかもしれません。
だから、怖がりな人には出来ない仕事ですね。
私が相談を受けたのは、ある男性従業員の方からの電話だったのですが、
彼はアルバイトではなく、正社員の方で、
むしろ、大きなビルの清掃や駅ビルの清掃などの時は、
多くのアルバイト従業員を統率指導する立場の方だそうです。
私も将来お金に困ったら、お世話になるかもと思い、
ついでに彼に色々聞いてみました。
「ビル清掃って、危なくないですか? 外のガラス拭いたり・・」
「いや、ガラスは拭かないです。
ガラスはガラス専門の業者さんがいて、ゴンドラなど使ってやります。」
「ビルに独りだけって、何か無くなった時、犯人にされたりしませんか?」
「いや、ビルと言っても、全体じゃなくて、
ビルの共有部分だけの掃除です。
だから、他のビルに入っているテナントさんの部屋には入る事は出来ません。
私達が掃除できるのは、各階の廊下、階段、トイレ、エレベーターだけです。」
「辛い事ってありますか?」
「いっぱいあります。」
「例えば?」
「例えば、ビル清掃だけならいいんですが、
中には、敷地内の庭の清掃も込みの場合があります。
その時には、落ち葉拾いや、雪かき、ゴミ拾いなんかがとても大変だったり、
曜日によっては、ゴミ回収の日に当たると、
ゴミ置き場を水で流しながらブラシで床を洗うのが、嫌でしたね。
あと、ビル掃除でも、冬は暖房無しで寒いし、逆に真夏は暑いし大変です。」
「では、何か良い所は何かありますか?」
「2週間で5キロ痩せます。」
「なるほど。」
やっぱ、清掃の仕事も、なんか大変そうだ。甘かないな。
正直そう思ったのを、今でも覚えています。
そんなビル清掃員の彼からの相談は、
やはり、深夜のビル清掃についてでした。
実は、1年前に彼の同僚が、ビル清掃中に亡くなっているというのです。
通常、ビル清掃の仕事自体はマニュアル通りにやっていれば、
危険な仕事では無いそうです。
しかし、長年やっていると、つい慣れで、有りえない事が起きてしまう事も。
亡くなった同僚の方は、いつも様に淡々と仕事をしていたそうです。
そんなある深夜。
彼は清掃用の洗剤をつくっていました。
酸性洗剤に水道水を足して、薄めて使うというごく簡単な作業です。
ところが、ここで彼は致命的なミスをしてしまったそうです。
酸性洗剤に水道水を足す所を、なんと塩素系の漂白剤を入れてしまったのです。
すると、みるまに塩素ガスが発生。
彼は呼吸困難になり、ビルに1人だけだったのも災いし、
朝亡くなっているのが発見されたそうです。
(家庭の主婦の皆さんも、漂白剤を使う時は気をつけて下さい。
その直前にそこで、洗剤をつかっていたら、危険です。
よく洗って、洗剤を流し切ってからに!)
そんな事件があった後も、一応そのビルは会社の契約に入っているので、
彼も度々掃除に行く時があるそうなんですが、
毎回行くたびに、なんか居るという感じで気持ちが悪いそうです。
一度なんか、誰かが「おーい」と呼んだ声が聞こえた事もあり、
それが同僚の声に似ていたといいます。
なんかお守りでも持っていた方がいいでしょうか?
そんな相談でした。
もし、貴方なら、どうお答えになりますか?
少し考えてみてから、先にお進みください。
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まぁ、実際のところ、そのビルに行ってみないと、
電話相談だけじゃ、元同僚が地縛霊としてそこに居るのか、居ないのか。
はっきりとは分からないよね。
でも、仕事中に健康な人が、何が何だか分からない内に死んでしまうって、
無念だし、最悪自分が死んだ事にも分からないでさ迷っている可能性もあるよね。
だから、地縛霊として今も居る可能性はあると思いますよ。と答えた。
ここまでが一般論ね。
ここで終わりなら、下手な恐怖漫画と同じで、
読み手を怖がらしておしまい。というエンディング。
ここからが、お金を貰っている占い師のアドバイス。
「ボクは、思うんだけどね。
もし、ボクが亡くなった元同僚だったら、
多分、
貴方が来て、嬉しいと思うなぁ。
おーい、と呼んだのも元同僚かもしれないけど、
でも、嬉しくて、気がついて欲しくて、つい呼んでしまったんじゃないかな。」
と前置き、
彼に、こんなアドバイスした。
「もし、今度そのビルの清掃をする時があったら、
まず彼が亡くなった場所に行き、
作業をする前に、そこに彼が好きだった缶ジュースでも置き、
目を閉じて、元同僚の名前を言って、合掌しながら一言、
どうか早く成仏して、生まれ変わって
また一緒に仕事しような。
って、言ってあげて下さい。」
きっとそれが、貴方にとって、
一番のお守りになりますよ。
END